Vaughan Williams分類Ⅲ群に分類される抗不整脈薬アンカロン®(アミオダロン)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
アンカロン®(アミオダロン)はVaughan Williams分類ではIII群のKチャネル遮断に分類されますが、他にもNaチャネル、Caチャネル、β受容体に対する抑制作用もあり、マルチチャネルブロッカーと言われ、厳密にはIII群だけにあてはめることができない薬剤です。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIF錠は『アンカロン®錠IF, 2022年1月(第13版)』、IF注は『アンカロン®注IF, 2022年1月(第9版)』のことです。
Contents
アンカロン®(アミオダロン)薬物動態情報
適応
アンカロン®錠
- 心室細動
- 心室性頻拍
- 心不全(低心機能)又は肥大型心筋症に伴う心房細動
アンカロン®注
- 心室細動
- 血行動態不安定な心室頻拍
- 電気的除細動抵抗性の心室細動あるいは無脈性心室頻拍による心停止
用法用量
アンカロン®錠
- 導入期:1日400mg を1日1~2回に分けて経口投与(1~2週間)
- 維持期:1日200mg を1日1~2回に分けて経口投与
アンカロン®注
- 初期急速投与:125mg(2.5mL)を5%ブドウ糖液100mLに溶解し、600mL/hr(10mL/min)の速度で10 分間投与
- 負荷投与:750mg(15mL)を5%ブドウ糖液500mLに溶解し、33mL/hrの速度で6時間投与
- 維持投与:750mg(15mL)を5%ブドウ糖液500mLに溶解し、17mL/hrの速度で投与
バイオアベイラビリティ
- 31~65%(個体差が大きい)
(IF錠:P.16より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- 該当資料なし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 106±38L/kg(急速静脈注射時)
(IF錠:P.17より)
体重60kgの場合、Vd=106×60=6360L
脂肪、肝、肺及びリンパ節への移行性は高い。特に脂肪からの消失は緩慢で、反復投与により高濃度蓄積する。(IF錠:P.18より)
組織に移行し蓄積される薬剤であり、細胞内分布型(Vd(b)≧50)の薬剤といえます。
全身クリアランス(CL)
- 143~157mL/min(急速静脈注射時)
(IF錠:P.17より)
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 該当資料なし
(参考)尿試料中にはアミオダロン未変化体は検出されなかった。(ラット)
(IF注:P.34より)
肝代謝型の薬剤です。
肝クリアランス(CLH)≒全身クリアランス(CL)と考えられます。
抽出比
- 肝抽出比
EH≦CLH(ml/min)/(B/P)/QH(ml)=157/0.5/1600
EH≦0.196
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 96%
(IF注:P.30より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.96=0.04
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 19~53日
(IF錠:P.22より)
その他
- CYP3A4で代謝される
- 活性代謝物:モノ-N -デスエチルアミオダロン(DEA)
- DEA は、アミオダロン塩酸塩と同様の薬理プロファイルを持ち、ほぼ同等の電気生理学的作用及び抗不整脈作用を有することが動物試験において確かめられている。アミオダロン塩酸塩を長期経口投与したときの抗不整脈作用は、アミオダロン本体とDEA によるものと考えられている。
- 臨床試験において、アミオダロン塩酸塩を静脈内投与した時のDEA のCmax は、アミオダロン塩酸塩の約1/26~1/397であった。これらのことから、DEA はアミオダロン塩酸塩を静脈内投与した時の抗不整脈作用には、ほとんど関与していないと考えられる。
- DEAはCYP1A2、CYP2C9、CYP2D6、CYP3A4の阻害作用をもつ
- P糖蛋白阻害をもつ
- 治療上有効な血中濃度:該当資料なし(IF注:P.25より)
- 透析除去率:ほとんど除去されない(IF注:P.34より)
- 化学構造中にヨード基をもつ
【特に気を付ける副作用】
- 肝機能障害:ALT、AST、γ-GTPなど投与前のベースラインを確認しておく
- 甲状腺機能低下症:TSH、FT-4など投与前のベースラインを確認しておく
- 間質性肺炎:KL-6、胸部X線撮影など投与前のベースラインを確認しておく
- QT延長:QT時間の投与前のベースラインを確認しておく
アンカロン®(アミオダロン)薬物動態情報まとめ
アンカロン®(アミオダロン)の特徴
- Vaughan Williams分類:Ⅲ群
- 肝代謝型
- EH≦0.196→消失能依存型(ER<0.3)
- 細胞内分布型(Vd(b)≧50)
- fuP=0.04→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- バイオアベイラビリティ:31~65%
- 半減期:19~53日
- CYP3A4で代謝される
- P-糖蛋白の基質薬剤との併用に注意
- 治療上有効な血中濃度:該当資料なし
- 透析除去率:ほとんど除去されない
- 特に気を付ける副作用:肝機能障害、甲状腺機能低下症、間質性肺炎、QT延長