β1受容体遮断薬は高血圧や心不全、心房細動などの疾患で使用される薬剤です。
β1受容体遮断薬は脈に影響を与えるので、副作用として不整脈が出てしまうことがあります。
どのような不整脈が起こる可能性があるか。
結論から言うと、洞不全症候群や房室ブロックといった不整脈を引き起こしてしまうことがあります。
では、見ていきましょう。
β1遮断薬で注意する不整脈
洞不全症候群:心臓を収縮するという命令を出している『洞結節』に異常が生じて、命令を出す回数が極端に少なくなったり、命令が出なくなってしまった状態
房室ブロック:心房から心室へ心臓を収縮する命令を伝達している『房室結節』に支障が生じて、命令がうまく伝わらなくなった状態
洞不全症候群、房室ブロックについてはコチラもご参照ください。
β1遮断薬とは?
β1遮断薬は本態性高血圧、狭心症、心室期外製収縮、虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全、頻脈性心房細動などに対して使用される薬です。(β1遮断薬の中でも薬剤によって適応が異なってきます。例えば、慢性心不全に適応があるβ1遮断薬ですが、現在、日本で適応があるβ1遮断薬はカルベジロールとビソプロロールの2種類のみになります。ここではカルベジロールとビソプロロールのみ取り上げます。)
β1遮断薬の作用の1つに心拍数を低下させる作用があるので、もともとの心拍数が正常範囲の下限付近の状態の方(正常60~100/分)に追加になった場合、徐脈(心拍数が1分間に50回未満)となってしまう可能性があります。
高度の徐脈{房室ブロック(Ⅱ度、Ⅲ度)、洞不全症候群、洞房ブロック等の不整脈}では禁忌(投与しないこと)となっています。
つまり、この状態のときは薬を投与してはいけないということです。
しかし、不整脈が見つかるまでは必要だったので飲んでいました。
中止ができればよいですが、心不全に対して使用している場合等、中止が難しい場合がありますので、そういった場合はペースメーカー治療が選択肢にあがってくると思います。
薬の特徴
- 肝代謝型
- 心不全の用法:1日2回
- 半減期:3.25時間(1日2回 1回10mg健康成人のデータ)
- 中間型(どちらかというと腎排泄型寄り)
- 心不全の用法:1日1回
- 半減期:8.59時間(1日1回 1回5mg健康成人のデータ)
心拍数の減少効果はビソプロロールの方が強いため、心拍数が早い人に対してはビソプロロールが選択されることが多いと思います。
逆に言うと、もともとの心拍数が60とか正常域の下限付近の方は心拍数を下げにくいカルベジロールを選択したりします。
また、ビソプロロールは、数年前にテープ剤が発売されているので、嚥下機能が落ちている方等に対して、投与方法の選択肢もありますね。
β1遮断薬が必要な場合は、患者の背景によって適切な薬剤が選択されます。
まとめ
◎日本では心不全に適応があるβ1遮断薬はカルベジロールとビソプロロールのみ
◎β1遮断薬には心拍数を低下させる作用がある
◎β1遮断薬では洞不全症候群や房室ブロックに注意
________
このブログが書籍になりました。『心電図最後の教科書【NEXT STEP】~薬剤性不整脈編~』