プラビックス®(クロピドグレル)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
クロピドグレルは、P2Y12受容体を阻害する抗血小板薬であり第2世代チエノピリジン系薬剤といわれています。
第1世代チエノピリジン系薬剤のチクロピジンよりもクロピドグレルのほうが安全性が高いですが、CYP2C19の遺伝子多型により薬効にばらつきが出る可能性がある点に注意が必要です。
では、クロピドグレルの薬物動態情報について一緒に見ていきましょう。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『プラビックス®IF, 2020年12月(第23版)』のことです。
Contents
プラビックス®(クロピドグレル)薬物動態情報
用法用量
〈経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患〉
初回のみ プラビックス® 1回300mg(ローディング)
プラビックス® 1回75mg 1日1回経口投与
PCI 施行前にクロピドグレル維持用量を少なくとも4 日間投与されている患者においては、ローディング投与は必要ありません。
バイオアベイラビリティ
不明
<参考>[ラット]
未変化体として約1~3%
(IF:P.55より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
該当資料なし
分布容積(Vd)
該当資料なし
(IF:P.54より)
全身クリアランス
該当資料なし
(IF:P.54より)
尿中未変化体排泄率(Ae)
ほとんど排泄されない
健康成人に14C-クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg)を単回経口投与した場合、投与5日後までの放射能の累積排泄率は投与放射能の約92%に達し、尿中には約41%、糞中には約51%が排泄された
(IF:P.59より)
クロピドグレルを経口投与した時に未変化体が血漿中にほとんど検出されなかったことから、初回通過効果は大きいと考えられる
(IF:P.59より)
上記記載の尿中排泄率41%は代謝物であると考えられます。
クロピドグレルは肝臓で代謝される肝代謝型の薬剤です。
抽出比
該当資料なし
タンパク結合率
- 96~99%
ヒト血漿蛋白結合率は96~99%であり、ヒト血清アルブミンに対しては約85%であった(IF:P.56より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.96=0.04
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 6.9時間 (SR26334のデータ)
(IF:P.45より)
その他
- 不可逆的に血小板に作用
- 活性代謝物H4は、不安定な化合物であり初回承認時の薬物動態試験は非活性代謝物であるSR26334(主代謝物)で実施された
- 血漿中においては、未変化体の濃度は極めて低くSR26334 が主に存在する
- CYP2C19 遺伝子多型により薬物動態に影響を与える
- CYP2C19活性代謝が低いPM(poor metabolizer)ではクロピドグレルを活性代謝物に変換できないため、効力が低下する
- CYP2C19阻害作用を持つ薬剤(ex.オメプラゾール)との併用はクロピドグレル活性代謝物の血中濃度が低下するため注意が必要
- クロピドグレル75mgの血小板凝集抑制率39.8%、チクロピジン200mgの血小板凝集抑制率34.9%(IF:P.31)
- 血小板凝集抑制率:33~64%(PMID: 32092903)
- 作用発現時間:ローディング後 4~5時間(PMID: 32092903)
- 作用消失時間:5~7日(PMID: 32092903)
プラビックス®(クロピドグレル)薬物動態情報まとめ
- 肝代謝型
- プロドラッグ
- Vd(b)、ER、EH、バイオアベイラビリティ:データなし
- fuP=0.04→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- 半減期:6.9時間
- CYP2C19阻害作用を持つ薬剤との併用はクロピドグレル活性代謝物の血中濃度が低下する
- 不可逆的に血小板に作用
- 血小板凝集抑制率:33~64%
- 作用発現時間:4~5時間(ローディング後)
- 作用消失時間:5~7日