直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)のエリキュース®(アピキサバン)について薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
また、本記事中のIFの記載は『エリキュース®IF, 2020年1月改訂(第10版)』のことを示しています。
Contents
エリキュース®(アピキサバン)薬物動態情報
用法用量
《非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制》
エリキュース® 1回5mg 1日2回経口投与
以下の2つ以上に該当する場合は1回2.5mg
・80 歳以上
・体重 60kg 以下
・血清クレアチニン 1.5mg/dL 以上
《静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制》
7日間:エリキュース® 1回10mg 1日2回経口投与
7日以降:エリキュース® 1回5mg 1日2回経口投与
バイオアベイラビリティ
- 約50%
(IF:P.66より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- B/P=0.92
血液中濃度に対する血漿中濃度の比は1.09
(審査報告書, 2012年11月15日, P.30より)
上の文章を式にするとB:P=1:1.09となるので、
計算するとB/P=1/1.09=0.92となります。
分布容積(Vd)
- 約21L
(IF:P.66より)
Vd(b)=Vd/(B/P)=21/0.92=22.8L
- Vd(b)=22.8L
Vd(b)=20~50より分布中間型の薬剤といえます。
全身クリアランス
- 3.3L/h
全身クリアランス(CL)は約 3.3L/h(55mL/min)であり、腎クリアランス(CLR)は CLT の 27%に相当する。
(IF:P.65より)
腎クリアランス(CLR)=3.3L/h×0.27≒0.9L/h
肝クリアランス(CLH)=3.3L/h-0.9=2.4L/h
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 27%
未変化体の尿中排泄は、全身クリアランスの約 27%
(IF:P.69より)
Ae≦30より肝代謝型の薬剤といえます。
抽出比
EH=CLH/(B/P)/QH=2.4/0.92/1600=0.0016
- EH=0.0016
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
肝代謝型の薬剤なので腎臓の影響は少ないですが、
ER=CLR/(B/P)/QR=0.9/0.92/1200=0.0008
- ER=0.0008
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 約87%
(IF:P.68より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.87=0.13
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 6~8 時間
(IF:P.59より)
その他
- P-糖蛋白(P-gp)基質
- 乳癌耐性蛋白(BCRP)基質
エリキュース®(アピキサバン)薬物動態情報まとめ
- Ae=27→肝代謝型(Ae≦30)
- EH=0.0016→消失能依存型(EH<0.3)
- ER=0.0008→消失能依存型(ER<0.3)
- Vd(b)=22.8→分布中間型(Vd(b)=20~50)
- fuP=0.13→タンパク結合依存型(fuP<0.2)
- バイオアベイラビリティ:50%
- 半減期:6~8時間
- P-糖蛋白阻害作用を持つ薬剤との併用に注意