直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)のイグザレルト®(リバーロキサバン)について薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
また、本記事中のIFの記載は『イグザレルト®IF, 2021年11月改訂(第18版)』のことを示しています。
Contents
イグザレルト®(リバーロキサバン)薬物動態情報
用法用量
《非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制》
イグザレルト® 1回15mg 1日1回食後経口投与
クレアチニンクリアランス15~49mL/minの患者は1回10mg
禁忌:腎不全(クレアチニンクリアランス15mL/min未満)の患者
《静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制》
初期3 週間:イグザレルト® 1回15mg 1日2回食後経口投与
3週間後以降:イグザレルト® 1回15mg 1日1回食後経口投与
禁忌:腎不全(クレアチニンクリアランス15mL/min未満)の患者
バイオアベイラビリティ
- 66~100%
(IF:P.99より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
血漿/血液中濃度比 1.40
(イグザレルト®審査報告書, 2011年12月9日, P.38)
上記は血漿/血液とP/Bとなっています。
そのため、分母と分子をひっくり返す必要があります。
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)=1/1.4=0.71
- B/P=0.71
B/PはIFには見つけられませんでした。今回のように必要に応じて審査報告書まで確認すると記載されていることもあります。
分布容積(Vd)
- 43.8(L)
(IF:P.99より)
Vd(b)=Vd/(B/P)=43.8/0.71=61.7
Vd(b)≧50より細胞内分布型の薬剤といえます。
全身クリアランス
- 4.73(L/hr)
(IF:P.99より)
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 約36%
(IF:P.102より)
Ae=30~70より中間型の薬剤といえます。
- 腎クリアランス
CLR=4.73×0.36=1.70(L/hr) - 肝クリアランス
CLH=4.73-1.70=3.03(L/hr)
抽出比
- ER=CLR/(B/P)/QR=1.70/0.71/1200=0.002
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。 - EH=CLH/(B/P)/QH=3.03/0.71/1600=0.0027
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
血漿タンパク結合率
- 約 92~95%(in vitro)
(IF:P.100より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.95=0.05
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
『イグザレルト®審査報告書, 2011年12月9日, P.38』には「たん白非結合型分率5.07%」と記載がありました。
つまり0.0507となります。
このようにIFと審査報告書で表記方法が変わっていることもあります。
半減期
- 5~13 時間
(IF:P.85より)
その他
- P-糖タンパク(P-gp)基質
- 乳癌耐性タンパク(BCRP)基質
- 代謝:CYP3A4/3A5、CYP2J2
CYP3A4/3A5 及びCYP2J2 の寄与率はそれぞれ約18%及び約14%(IF:P101より)
リバーロキサバンとP-糖蛋白阻害作用およびCYP3A4阻害作用を持つ薬剤と併用するとリバーロキサバンのクリアランスが低下し血中濃度が上昇するため注意が必要です。
特にCYP3A4(±P-糖蛋白)の強力な阻害作用をもつ、HIVプロテアーゼ阻害剤、コビシスタットを含有する製剤、アゾール系抗真菌剤(一部除く)と併用禁忌となっています。
イグザレルト®(リバーロキサバン)薬物動態情報まとめ
- Ae=36%→腎・肝中間型(Ae=30~70)
- ER=0.002→消失能依存型(ER<0.3)
- EH=0.0027→消失能依存型(EH<0.3)
- Vd(b)=61.7→細胞内分布型(Vd(b)≧50)
- fuP=0.05→タンパク結合依存型(fuP<0.2)
- 半減期:5~13時間
- P-糖蛋白阻害作用およびCYP3A4阻害作用を持つ薬剤との併用に注意