心不全時の薬物動態をイメージして薬物療法に活用しよう!
スポンサーリンク

心不全時の薬物動態についてイメージしたことはありますか?

つまり心不全により、薬物の吸収・分布・代謝・排泄にどのような影響があるのか、
薬は体内でどうなっているのかということです。

では心不全時の薬物動態についてイメージしていきましょう。
(薬物動態の部分の記載が分かりにくかったら、まとめとそれをどう活用(標準治療・フロセミド・ジゴシン)するのかの部分だけでも読んでみてください。)

この記事のまとめ
  • 吸収率が低下、遊離形薬物濃度の低下⇒血中濃度低下の可能性

  • 肝・腎クリアランスの低下、遊離形薬物濃度の上昇⇒血中濃度上昇の可能性

  • 心不全時の体内動態への影響
    吸収:腸管浮腫⇒吸収の低下
    分布:投与直後、分布容積が大きい薬剤は心臓や脳に相対的に分布
    代謝:肝機能低下⇒肝代謝型薬剤の血中濃度上昇
    排泄:腎機能低下⇒腎排泄型薬剤の血中濃度上昇

 

スポンサーリンク

心不全時の病態

まず、心不全の病態についておさらいです。

心不全とは、『何らかの原因により、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態』をいいます。

つまり『酸素の必要量>酸素の供給量』の状態です。

たとえば、狭心症・心筋梗塞、心臓弁膜症、先天異常、心筋炎、不整脈、甲状腺疾患、高血圧、腎不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、貧血、加齢などが心不全を惹き起こす原因として考えられます。

上記のような原因の結果、心不全においては左室不全、心拍出量の減少、肺浮腫などが認められます。

心拍出量の減少は心臓から全身へ送る血液量が減っているということですから、全身への血流速度が低下しているということになります。つまり消化管血流量、肝血流量、腎血流量など薬物消失臓器への血流速度の低下をもたらします。

また各組織への血流速度の減少はその代償機構を賦活させ、細動脈収縮(末梢血管抵抗の増大)、ナトリウムと水の貯留をもたらします。(前に送りだせない血液は後ろにたまるイメージ)さらに体静脈うっ血では末梢浮腫を生じさせ、肺浮腫ではガス交換をさまたげ低酸素血症を引き起こします。

心不全により心拍出量が減少すると、肝臓では肝血流量の低下、低酸素血症は肝機能の低下、低アルブミン血症をもたらし、また、腎臓では腎血流量の低下、低酸素血症は糸球体濾過速度の低下、腎機能の低下をもたらします。

これを薬物動態の吸収・分布・代謝・排泄に分けて考えてみます。

心不全時の薬物動態

吸収

腸管への血流速度の減少は代償機構により腸管浮腫を生じます。この心不全に伴う腸管浮腫により、経口投与では薬物の吸収率が低下することがあります。

同様に皮膚で末梢浮腫が生じている場合では皮下投与の吸収が低下する可能性や、末梢血流量が低下しているため投与部位の筋肉によっては筋注後の吸収が低下・遅延する可能性もあります。一番確実な投与方法は静脈投与であり、必要時には静脈投与を考慮する必要があるということです。

分布

心不全により心拍出量(循環血液量)が減少し、末梢血管抵抗が増大することで、薬物の組織への到達が遅れたり、分布が変化したりする可能性があります。

また末梢血管抵抗が増大しているので、投与直後は心臓と脳以外への血流速度が低下しているということになります。つまり分布容積が大きい薬剤の投与直後では心臓や脳に相対的に分布が高くなる可能性があるということです。

代謝

心不全患者では肝機能が低下していることがあります。

肝機能に影響を与える要因として、肝クリアランスの低下が考えられます。さらに細分化すると①肝血流速度の低下、②血漿アルブミン濃度の低下によるものが考えられます。

血漿アルブミン濃度が低下すると全血中非結合形分率が上昇する可能性があると考えられます。この“非結合形分率が上昇”を言い換えると“遊離形分率が上昇”ということになります。

基本的に遊離形の薬物が薬効を示すので、遊離形分率が上昇するとは薬物血中濃度が上昇することを意味します。

また肝クリアランスが低下するということは、薬物代謝が通常よりも遅くなるということです。

つまり心不全において肝機能が低下している場合に肝代謝型の薬剤を投与すると健常者と比べて代謝が遅延し血中濃度が上昇する可能性があるということになります。

排泄

心不全患者では腎機能が低下していることがあります。

腎機能に影響を与える要因として、腎クリアランスの低下が考えられます。さらに細分化すると、①腎血流速度の低下、②血漿アルブミン濃度の低下によるものが考えられます。

血漿アルブミン濃度が低下すると全血中非結合形分率が上昇する可能性があると考えられます。この“非結合形分率が上昇”を言い換えると“遊離形分率が上昇”ということになります。

基本的に遊離形の薬物が薬効を示すので、遊離形分率が上昇するとは薬物血中濃度が上昇することを意味します。

また腎クリアランスが低下するということは、薬物の排泄が通常よりも遅くなるということです。

つまり心不全において腎機能が低下している場合に腎排泄型の薬剤を投与すると健常者と比べて排泄が遅延し、血中濃度が上昇する可能性があるということになります。

心筋梗塞時

心筋梗塞では、血漿たん白のひとつであるα1-酸性糖たん白の血漿中濃度が急速に高まります。

α1-酸性糖たん白濃度の上昇は薬物の全血中非結合形分率の低下につながります。

非結合形分率が低下、つまり遊離形分率が低下します。基本的に遊離形薬物が薬効を示すので、遊離形分率が低下するということは薬物血中濃度が低下する可能性があるということになります。

心不全時の薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄)への影響まとめ

バイオアベイラビリティに対する影響
末梢血流速度の低下
  • 消化管や筋肉からの薬物吸収速度やバイオアベイラビリティ(Fa)の低下
    肝初回通過効果への影響
    • 肝実質細胞の変性:肝固有クリアランスの低下
    • 血漿アルブミン濃度の低下:全血中非結合形分率(fuB)の上昇(遊離形分率の上昇)
    • α1-酸性糖たん白濃度の上昇:全血中非結合形分率(fuB)の減少(遊離形分率の低下)
    クリアランスに対する影響
    肝クリアランス
    • 血流速度の低下:肝血流量(QH)の低下
    • 肝実質細胞の変性:肝固有クリアランス(CLintH)の低下
    • 血漿アルブミン濃度の低下:全血中非結合形分率(fuB)の上昇(遊離形分率の上昇)
    • α1-酸性糖たん白濃度の上昇:全血中非結合形分率(fuB)の減少(遊離形分率の低下)
    腎クリアランス
    • 血流速度の低下:腎血流量(QR)の低下
    • 腎機能の低下:腎固有クリアランス(CLintR)の低下
    • 血漿アルブミン濃度の低下:全血中非結合形分率(fuB)の上昇(遊離形分率の上昇)
    • α1-酸性糖たん白濃度の上昇:全血中非結合形分率(fuB)の減少(遊離形分率の低下)
    分布に対する影響
    投与直後
    • 心臓と脳以外の組織への血流速度の低下:分布容積(Vd)が大きい薬物の心臓や脳への相対的な分布の高まり
    定常状態
    • 血漿アルブミン濃度の低下:全血中非結合形分率(fuB)の上昇(遊離形分率の上昇)
    • α1-酸性糖たん白濃度の上昇:全血中非結合形分率(fuB)の減少(遊離形分率の低下)
    • 浮腫:血液容積(VB)の上昇

     

    簡単に体内動態への影響をまとめると以下のようになります。

    • 吸収率が低下、遊離形薬物濃度の低下⇒血中濃度低下の可能性
    • 肝・腎クリアランスの低下、遊離形薬物濃度の上昇⇒血中濃度上昇の可能性

    薬の効果を事前に推定する

    心不全患者における薬物動態の変化は、個々の患者の状態や使用される薬物によって異なる場合があるため、患者のモニタリングが重要です。

    薬物動態の考え方を知ると、薬物投与前に投与後にどうなるか、例えば吸収率が低下しているから効きにくいのかなとか、腎血流量が低下しているから薬物が排泄できず蓄積するかもといった推測ができたり、薬物投与後の結果確認後に投与量調節がしやすくなると思っています。

    慢性心不全急性増悪時と心不全のコントロールができている時期では体内での薬物動態に違いが出る可能性があります。

    たとえば慢性心不全急性増悪時に腸管浮腫が認められる場合では、コントロールできている場合に比べて、内服薬が吸収されにくくなります。

    また腎機能が低下していたとします。もし腎排泄型の薬剤を急性増悪時に投与開始し投与継続していた場合で、薬が吸収されないため効果が得られずに投与量を増量していったとします。

    心不全の状況が改善してきたとき、体液貯留の改善とともに腸管浮腫が解除されて内服の吸収率がよくなるはずです。そこで腎機能が改善していた場合は腎排泄型の薬剤は腎から排泄されるので、あまり血中濃度が上がらないかもしれません。

    逆に腎機能が改善していなかった場合は血中濃度が上がってしまう可能性があります。

    すべて可能性のはなしですが、薬が効きすぎる(血中濃度上昇)・効かない(血中濃度低下)にはなにかしらの原因があるはずです。

    起きたことに対して、事後で考察することも大事ですが、事前に起こる可能性があることについて想定しておくことも大事です。

    簡単に言うと、薬が効かないとどうなるのか、効きすぎると何が起こる可能性があるのかを状態をふまえて考えておきましょうということですね。

    作用を事前に推測して、得られた結果を元に投与量を再検討していく、心不全に伴う循環器系の変化を考慮して薬物療法をより適切に調整でき、より良い医療のサポートができるように自分も日々精進です。

    最適薬物療法(ファンタスティックフォー)でイメージしてみる

    心不全で浮腫や肝・腎血流速度の低下が見られているとします。

    下記薬剤を心不全急性増悪前より、同量で継続しているとします。

    ARNI:エンレスト®(サクビトリルバルサルタン)
    β1遮断薬:メインテート®(ビソプロロール)
    MRA:セララ®(エプレレノン)
    SGLT-2阻害薬:ジャディアンス®(エンパグリフロジン)

     

    なおARNI、β1遮断薬、MRA、SGLT-2阻害薬の4剤はファンタスティックフォーとも呼ばれています。早期にこれらの内服を適切に導入することで、生命予後を伸ばし、心不全入院を減らすことが期待されています。

     

    肝血流速度の低下があれば肝代謝型の薬剤の血中濃度、腎血流速度の低下があれば腎排泄型の薬剤の血中濃度は、短期的には上昇すると考えられます。

    また腸管浮腫で吸収率が低下していれば、長期的には血中濃度は低下していくと思います。

    心不全増悪に伴う腸管浮腫が改善したら腸管吸収率ももとにもどるはずなので、血中濃度は増悪前と同程度になると思いますが、その時に臓器機能が改善していなければその限りではありません。

    心不全増悪時の状態でファンタスティックフォーを導入済みで同用量用法で継続しているとした場合、状態が変わらなければ臓器機能の低下により短期的には体内から薬物を排泄できないので血中濃度が上昇し、血圧低下・脈拍数低下・高カリウム血症・心不全症状増悪(β1遮断薬による)などが考えられます。(だから経過を見て用量調節するわけです)

    また、長期的には腸管浮腫で吸収率が低下しているので、血中濃度ももともとの濃度より低下しているため、血圧上昇・脈拍数上昇・心不全症状の改善が見られないといったことが考えられます。

    もし血圧低下・脈拍数低下・高カリウム血症・心不全症状増悪(β1遮断薬による)などの状態になり内服薬を減量調節していた場合、腸管浮腫改善後に、状態を見ながら投与量を検討していく必要があります。

    β1遮断薬で心不全増悪?と感じた方はコチラの記事をご覧ください。

     

    では心不全と薬物血中濃度の変動についてエプレレノンを例にイメージしてみましょう。

    教科書的には薬物動態の式もありますが、必要時書籍等を確認すれば良いです。

    それよりもなんとなくでも、なぜ薬物投与量を調節しているのか、体内でどうなっているか、その結果どうなるかといったことがイメージできれば良いと思っています。

    薬物動態情報は変化の程度を知るための参考情報ですので、活用できるとより薬物療法のイメージが鮮明になると思います。

     

    上記ででてきたエンレスト®、メインテート®、セララ®、ジャディアンス®の薬物動態情報についてまとめておきます。
    医薬品名 成分名 F(%) Ae(%) fuP t1/2(Hr) CL(L/hr) Vd(L)
    エンレスト バルサルタン 39 9~14 0.07 4~6 2.19 16.9
      サクビトラート ≧60 11 0.087 13.4 49.4※ 82.7※
    メインテート ビソプロロール 47.8※ 88 0.67 8.59 12.8※ 150※
    セララ エプレレノン 69 <2.5 0.885 3~5 5.6※ 45.5※
    ジャディアンス エンパグリフロジン 21.3~22.9 0.153 9.88~11.7 11.0※ 76.5※

    ※経口データ

    また特徴づけを行うと下記表となります。

    医薬品名 成分名 消失経路 分布容積 血漿中遊離形率
    エンレスト バルサルタン 胆汁排泄型(肝代謝型) 特徴づけ不可 蛋白結合依存型
      サクビトラート 腎・肝中間型 特徴づけ不可 蛋白結合依存型
    メインテート ビソプロロール 腎・肝中間型 特徴づけ不可 蛋白結合非依存型
    セララ スピロノラクトン 肝代謝型 特徴づけ不可 蛋白結合依存型
    ジャディアンス エンパグリフロジン 肝代謝型 特徴づけ不可 蛋白結合依存型

    薬物動態情報の見方についてはコチラの記事も参照してください。

    腎機能低下時、肝機能低下時どの程度AUCが上昇するかの目安は下記となります。(各薬剤IFより)

    腎機能低下時
    薬品名 成分名 軽度腎機能低下 中等度腎機能低下 高度腎機能低下
    エンレスト バルサルタン AUC1.30 AUC0.88 AUC1.36
      サクビトラート AUC1.50 AUC1.70 AUC1.70
    メインテート ビソプロロール 通常用量 通常用量 半減期2倍に延長※
    セララ エプレレノン AUC1.03 AUC1.17 AUC1.31
    ジャディアンス エンパグリフロジン AUC1.29 AUC1.44 AUC1.52

    軽度腎機能障害:CLCr50~80ml/min
    中等度腎機能障害:CLCr30~<50ml/min
    高度腎機能障害:CLCr<30ml/min
    ※CLCr<20ml/min

    肝機能低下時
    薬品名 成分名 軽度肝機能低下 中等度肝機能低下 高度肝機能低下
    エンレスト バルサルタン AUC1.19 AUC2.09
      サクビトラート AUC1.48 AUC1.90
    メインテート ビソプロロール 通常用量 通常用量 半減期2倍に延長
    セララ エプレレノン AUC1.66
    ジャディアンス エンパグリフロジン AUC1.23 AUC1.47 AUC1.75

    肝機能障害患者[Child-Pugh 分類、軽度:A、中等度:B、高度:C]

    各薬剤の薬物動態情報は以下の記事に記載しています。

    ループ利尿薬投与を考える

    心不全で頻用されるループ利尿薬のフロセミドについてもみてみましょう。

    フロセミドは腎排泄型の薬剤ですが、腸管浮腫の場合に吸収されにくい場合は腸管吸収の影響を受けない静脈投与を検討することもひとつの手段です。

    ここでは薬物動態のデータも用いて考えてみましょう。

    フロセミドの薬物動態情報は以下の通りです。

    フロセミドの薬物動態パラメータ
    • バイオアベイラビリティ:51%
    • 分布容積(Vd):7.5L(静注データ60kg換算)
      Vd(b)<Vd/(B/P)=7.5/0.5=15
      Vd(b)≦20より細胞外分布型
    • 全身クリアランス:132ml/min(静注データ)
    • 尿中未変化体排泄率(Ae):82%
      Ae≧70より腎排泄型
    • 腎抽出比(ER)<0.18
      ER<0.3より消失能依存型
    • 血漿中遊離形率fuP=0.05
      fuP<0.2よりタンパク結合依存型
    • 半減期0.35時間

    フロセミド錠のバイオアベイラビリティ約50%より「フロセミド40mg経口投与≒フロセミド20mg静脈注射」となります。

    たとえば腸管浮腫で吸収率が25%に低下していた場合、フロセミド40mg経口投与は静注投与10mgとほぼ同量と考えられます。

    分布容積は小さく、細胞外分布型の薬剤であり、また半減期も短い薬剤なので、細胞内には蓄積しにくい薬剤ということが分かります。

    タンパク結合依存型の薬剤であり、血中アルブミン濃度に影響を受けやすい薬剤です。

    また血中のアルブミンと結合することで利尿作用が得られるため、低アルブミン血症の状態では効果が得られにくいです。

    臨床ではアルブミン製剤投与後にフロセミドを静脈投与することがあると思いますが、これはフロセミドの効果を得られやすくするためですね。

    ジゴキシン投与を考える

    もし心不全患者にジゴシン注の投与と判断されたとします。

    ジゴシン注は投与後どうなるでしょうか。

    ジゴシン注の添付文書の用法用量には「急速飽和療法」の記載もありますが、なぜそのように投与するのでしょうか。

    つまりなぜ一度に投与せず、分割するのでしょうか。

    ジゴシン注の用法・用量(成人)

    ジゴキシンとして通常成人に対して

      1. 急速飽和療法(飽和量:1.0~2.0mg)1回0.25~0.5mgを2~4時間ごとに静脈内注射し、十分効果のあらわれるまで続ける。
      2. 比較的急速飽和療法を行うことができる。
      3. 緩徐飽和療法を行うことができる。
      4. 維持療法1日0.25mgを静脈内注射する。
    ジゴシン注の用法用量に関連する注意事項
    飽和療法は過量になりやすいので、緊急を要さない患者には治療開始初期から維持療法による投与も考慮すること。

     

    ジゴシン注の薬物動態パラメータは下記の通りです。

    ジゴシン注の薬物動態パラメータ
    • バイオアベイラビリティ:0.746%
    • 分布容積(Vd):480L(静注データ60kg換算)
      Vd≧50より細胞内分布型
    • 全身クリアランス: ml/min(静注データ)
    • 尿中未変化体排泄率(Ae):70%(腎排泄型)
    • 血漿中遊離形率fuP=0.75
      fuP>0.2よりタンパク結合非依存型
    • 半減期:35~48時間

    なぜ一度に投与せず、分割するのか、それは飽和量1mgを1回で投与するのと、0.5mg+0.25mg+0.25mg(計1mg)と分割して2~4時間おきに投与するのは薬物動態的に同様となるからです。

    なぜ同様になるかというと、ジゴキシンは半減期が35~48時間と長い薬剤だからです。

    0.5mg+0.25mg+0.25mg(計1mg)と分割して2~4時間おきに投与しても最初の0.5mgは体内からほとんど排泄されておらず、追加投与しても薬物動態的には一度に投与したのと変わらないことになるのです。

    下図のようなイメージです。

    急速飽和療法(分割することのメリット)は、飽和量を単回投与することにくらべ、少ない量から投与することができるので副作用のリスクを減らすことができることです。

    とはいえ、ジゴシン注の用法用量に関連する注意事項に、『飽和療法は過量になりやすいので、緊急を要さない患者には治療開始初期から維持療法による投与も考慮すること。』と記載があるように検討することが必要ですね。

     

    またジゴシンはジゴキシン中毒も心配ですね。

    例えば高齢・低体重・腎機能障害等があると減量して開始しても良いと考えています。

    もちろん投与後に血中濃度を測定して…で良いとも思いますが、血中濃度が高くなりそうだな~と感じている状態で減量せずに投与するというのもリスクの観点から言うと個人的には違うと思っておりますので。

    心不全と薬物動態まとめ

    心不全により体内でどうなっているか・その結果どうなるかがイメージしてみましょう

    • 吸収率が低下、遊離形薬物濃度の低下⇒血中濃度低下の可能性
    • 肝・腎クリアランスの低下、遊離形薬物濃度の上昇⇒血中濃度上昇の可能性
    心不全時の体内動態への影響
    • 吸収:腸管浮腫⇒吸収の低下
    • 分布:投与直後、分布容積が大きい薬剤は心臓や脳に相対的に分布
    • 代謝:肝機能低下⇒肝代謝型薬剤の血中濃度上昇
    • 排泄:腎機能低下⇒腎排泄型薬剤の血中濃度上昇

     

     

     

     

    皆様の応援が励みになります。
    1日1回、クリック(↓)をよろしくお願いします。

    にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

     

    PVアクセスランキング にほんブログ村

    スポンサーリンク
    他にもこんな記事を書いています!