QT延長を見たらまずは薬剤性を疑え!
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QT延長を見たらまずは薬剤性を疑いましょう!

この記事で一番伝えたいことはコレです!

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QT延長症候群とは

QT延長症候群とはQT時間が延長することにより、torsade de pointes(TdP)と呼ばれる特徴的な心室頻拍(ventricular tachycardia: VT)や心室細動(ventricular fibrillation: VF)等の致死的不整脈を生じて、突然死を引き起こす可能性がある心電図異常のことです。

QT延長症候群には先天性後天性(二次性)のものがあります。

後天性QT延長症候群の中でも、特に“薬剤性”、つまり薬剤が原因と考えられるものが多いです。

これは薬剤師としては見逃せません。(後天性QT延長症候群を引き起こす原因として、『薬剤投与』によるもの、『低K血症等の電解質異常』によるもの、『房室ブロック、洞機能不全症候群等の徐脈によるもの』等があります。)

ここでは、薬剤性のQT延長について記載したいと思います。

QTってどこ?

QT時間とは、Q波の始まりからT波の終わりまでのことです。

QT延長の定義

【QT延長の定義】
① Bazett による補正 QT 間隔(QTc)が薬剤投与後に 25%以上延長
もしくは,
② QT間隔が500 msec 以上となる場合

①もしくは②に該当した場合にに QT 延長ありと診断されます。

①「Bazett による補正 QT 間隔(QTc)が薬剤投与後に 25%以上延長」

QTcの“c”は補正(collect)のことを言っています。

QTcとはQT間隔を心拍数で補正したもので、QTc=QT(秒)/√RR(秒)で表されるようです。

心拍数60回/分(RR=1秒)の心拍数に換算したときのQT時間を意味しています。

調べてみたものの、計算は関数電卓を用いなければなりませんし、計算ややこしいですよね。

でも大丈夫です。計算する必要はありません。

カルテに記録される心電図のデータには、QTとQTc両方の記載があります。(施設によって異なっているかもしれません。)

なので、補正のための計算式はQT延長を評価するうえで覚える必要はないです。

薬剤投与前の心電図のデータを確認し、“薬剤投与前のQTc × 1.25”と“薬剤投与後のQTc”の値を比べてどちらが大きいかを判断します。

“薬剤投与前のQTc×1.25”の方が大きい場合⇒QT延長ではない(ただし、②に該当する場合はQT延長となります。)

“薬剤投与後のQTc”の方が大きい場合⇒QT延長

となります。

②「QT間隔が500 msec 以上となる場合」

msecはミリ秒のことです。

1000ミリ秒=1秒なので、500ミリ秒=0.5秒になります。

つまり、②はQT間隔が心電図記録用紙で12.5コマ以上(1コマ=0.04秒)の場合にQT延長となります。

単位ってややこしいですよね。

定義についても覚えておく必要はありません。

QT延長が疑わしいと思ったときに確認しながら心電図を見れば良いと思います。

QT延長を起こす可能性のある薬剤

どんな薬でQT延長が起きているか、サラッと目を通してみてください。(薬は一般名で記載しています。)

【抗不整脈薬】
◎Ⅰ群薬
キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド
◎Ⅲ群薬
アミオダロン、ソタロール、ニフェカラント、ベプリジル
【抗精神病薬】
◎フェノチアジン系
クロルプロマジン
◎ブチロフェノン系
ハロペリドール、ドロペリドール
◎三・四環系抗うつ薬
セルトラリン、トラゾドン
【抗認知症薬】
ドネペジル
【抗ヒスタミン薬】
テルフェナジン(発売中止)、ヒドロキシジン、ヒドロキシジンパモ
【抗菌薬】
エリスロマイシン、クラリスロマイシン、レボフロキサシン
【抗真菌薬】
フルコナゾール、ホスフルコナゾール
【PDE5阻害薬】
バルデナフィル、シルデナフィル(因みに、シルデナフィルはバイアグラのことです。ここでは使用目的は異なります。)
【ホルモン製剤】
タモキシフェン、トレミフェン
【過活動膀胱治療薬】
コハク酸ソリフェナシン、プロピベリン
【高脂血症治療薬】
プロブコール

等々・・・色んな薬がありますね。

因みに、テルフェナジンを改良したものがフェキソフェナジンとなりますが、テルフェナジンは死亡例が出たため(フェキソフェナジンの発売後、日本では2001年に)発売が中止となりました。(アメリカは1998年に発売中止となったようです。)

当時は緊急安全性情報(薬の安全性に関する緊急かつ重篤な情報の伝達が必要とされる場合に、厚生労働省の指示で製薬企業が配布する文書)が発出されたり、報道では「花粉症治療薬で不整脈」などと報じられたようです。(薬剤師になるだいぶ前なので覚えていませんが、大学の授業で少し聞いたような気も・・・)

フェキソフェナジン(アレグラ®)は今では処方箋医薬品として病院だけでなく、一般用医薬品としてドラッグストアでも手に入れることができますね。

上に挙げたように、QT延長を起こしうる薬剤はたくさんあることが分かっていただけたかと思います。

ここに挙げただけでもたくさんあって覚えられませんよね。

もちろん、薬の名前をすべて覚える必要はありません。

ここに記載した薬剤以外にも、QT延長を起こす可能性のある薬剤もたくさんありますので、その都度確認するのが確実です。

QT延長の対応

まずは薬が原因でないか疑ってください。

といっても、QT延長を起こす可能性のある薬剤はたくさんありました。

じゃあどうするか?

あなたが薬剤師であれば、QT延長があったときは自分で添付文書等を調べましょう。

あなたが薬剤師でなく、病院勤務等薬剤師が身近にいるのであれば薬剤師に聞いてみるといいでしょう。

調べてくれるはずです!是非、自施設の薬剤師を活用してください!(もちろん自分で調べることが可能であれば自分で調べた方が勉強になりますよ!)

QT延長を起こした被疑薬(原因薬剤のこと)の種類が特定出来たら、中止を検討します。が、現時点では特定できていません。

なので候補のうち、どれがより疑わしいのか絞ります。

直近で開始となった薬剤はもちろんですが、場合によっては少したってから症状が出る場合もありますので、その点注意が必要です。

また、候補がたくさんあって絞り込めない場合は、優先度の低い薬剤から中止を検討していきます。

中止後もしばらくは薬の効果が残っていますので、中止したらすぐ安心というわけではありません。

どのくらいまで薬が効いているかの目安はコチラの記載をご参照ください。

まとめ

QT延長を認めた場合には、まずは薬剤性を疑う!

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