ニトログリセリン薬物動態情報
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硝酸薬に分類されるニトログリセリンは、舌下錠・スプレー・注射・テープといった剤型がありますが、経口剤はありません。

なぜ、ニトログリセリンには経口剤がないのか?

では、ニトログリセリンの薬物動態情報を見ていきましょう。

 

各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。

本記事中の舌下IFは『ニトロペン®舌下錠IF, 2014年8月(第8版)』のことです。

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ニトログリセリン薬物動態情報

用法用量

  • 舌下錠

・0.3~0.6mg/回

狭心症などの虚血による胸部症状を一時的に改善させるための薬剤です。

  • スプレー剤

・1回1噴霧舌下、効果不十分に限り1噴霧追加

  • テープ剤

・5mg製剤:1回1枚5mgを1日2回、12時間ごとに胸部、上腹部、背部、上腕部又は大腿部のいずれかに貼付
・25mg・27mg製剤:1日1回1枚 胸部、腰部、上腕部のいずれかに貼付。効果不十分の場合は2枚に増量

徐放性があり、症状が出ないように予防目的で用いられます。

  • 注射剤

○急性心不全
・開始量:0.05~0.1μg/kg/分
・維持量:血圧、左心室充満圧などをモニターしながら5~15 分ごとに0.1~0.2μg/kg/分ずつ増量し、点滴速度を調節。

○不安定狭心症
・開始量:0.1~0.2μg/kg/分
・維持量:発作の経過及び血圧をモニターしながら約5分ごとに0.1~0.2μg/kg/分ずつ増量し、1~2μg/kg/分で点滴速度を調節。効果がみられない場合には20~40μg/kg の静注を1 時間ごとに併用。静注する場合は1~3分かけて緩徐に投与。

バイオアベイラビリティ

  • 1%未満

ニトログリセリンはバイオアベイラビリティが1%未満であり、経口投与では吸収されたあと肝臓で速やかに代謝され効力が低下してしまいます。

ニトログリセリン製剤の剤型は舌下錠・スプレー・注射・テープと、経口投与がありません。ニトログリセリンは経口投与では効果が得られないからです。

全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)

  • 該当資料なし

B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。

分布容積(Vd)

  • 179.6L(舌下IF:P.16より)

Vd(b)<Vd/(B/P)=179.6/0.5=359.2

Vd(b)<359.2

パラメータ上はVd(b)≧50、Vd(b)≦20、Vd(b)=20~50すべてに該当する可能性があり分類することができませんでした。

全身クリアランス

  • 28000mL/min

28.0L/min(0.6mg、舌下投与)
(舌下IF:P.15より)

尿中未変化体排泄率(Ae)

  • 該当資料なし

主に肝臓で代謝される薬剤です。

全身クリアランス(CL)≒肝クリアランス(CLH)とします。

抽出比

肝抽出比

EH<CLH/(B/P)/QH=28000/0.5/1600

EH<35

パラメータ上はEH<0.3、EH>0.7、0.3≦EH≦0.7すべてに該当する可能性があり分類することができませんでした。

タンパク結合率

  • 約60%(舌下IF:P.16より)

タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。

血漿中遊離形率(fuP)=1-0.6=0.4

fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。

半減期

  • 10.0 分(舌下IF:P.15より)

その他

  • 最高血中濃度到達時間

・4分(ニトロペン®舌下錠)
・3.6時間(ミニトロ®テープ)

  • ニトログリセリンと塩化ビニルの輸液セット

ニトログリセリンは塩化ビニル製の輸液容器及び輸液セットに吸着されるので、点滴時にはガラス製、ポリエチレン製又はポリプロピレン製の輸液容器を使用すること。また、輸液セットへの吸着は点滴速度が遅い程及び輸液セットの長さが長くなる程吸着率が大きくなるので注意すること。

ニトログリセリン薬物動態情報まとめ

ニトログリセリンの特徴
  • 急性期の症状改善:舌下錠、スプレー、注射剤
  • 慢性期の悪化予防:テープ剤(徐放性)
  • 肝代謝型
  • Vd(b)<359.2→特徴づけ不可
  • EH<35→特徴づけ不可
  • fuP=0.4→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
  • バイオアベイラビリティ:1%未満
  • 半減期:10分
  • 最高血中濃度到達時間:4分(ニトロペン®舌下錠)、3.6時間(ミニトロ®テープ)
  • ニトログリセリン注は塩化ビニルに吸着して作用減弱

ニトログリセリンの投与経路は舌下、経皮、経静脈と経口投与の剤型がありません。なぜならニトログリセリンはバイオアベイラビリティが1%未満と、経口投与では吸収されたあと肝臓で速やかに代謝され効力が低下してしまうためです。

 

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