フィブラート系薬剤であるパルモディア®(ペマフィブラート)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
フィブラート系薬剤は脂質異常症(高脂血症)の中でもトリグリセリド(中性脂肪)が高い病態などに対して使用される薬剤です。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『パルモディア®IF, 2022年10月(第13版)』のことです。
Contents
パルモディア®(ペマフィブラート)薬物動態情報
適応
- 高脂血症(家族性を含む)
用法用量
- パルモディア® 1回0.1mg 1日2回経口投与
(最大用量は1回0.2mgを1日2回)
バイオアベイラビリティ
- 絶対バイオアベイラビリティ:61.534%(IF:P.72より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- B/P=0.508~0.575
血球移行率:1.7~13.1%(IF:P.76より)
血球移行率A%を用いてB/Pを計算ていきます。(A=1.7~13.1%)
まずは血漿分布率を求めます。
血漿分布率=1-A=Z
血漿分布率=1-(0.017~0.131)=0.869~0.983
続いてB/Pを求めます。
B/P=全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度・(1-Ht)とHt=0.5より
B/P=1/Z・(1-0.5)=1/(0.869~0.983)・(1-0.5)
B/P=0.508~0.575
ここではB/P=0.575を計算に用います。
分布容積(Vd)
- 静注時分布容積64.00L(IF:P.73より)
Vd(b)=Vd/(B/P)=64/0.575=111.3
Vd(b)≧50より細胞内分布型の薬剤といえます。
全身クリアランス(CL)
- 静注時クリアランス18.00L/h(IF:P.73より)
単位をml/minに換算すると、
300ml/minとなります。
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 0.47%以下
健康成人男性(7例)に14C-ペマフィブラート0.8mgを単回経口投与したとき、投与216時間後までの総放射能回収率(平均値)は投与量の87.81%であり、尿中へ14.53%、糞中へ73.29%の放射能が排泄された。尿中への排泄は投与24時間後までにほぼ終了したが、糞中への排泄は投与96時間後までにほぼ終了した。尿中に認められたペマフィブラートは、投与放射能の0.47%以下であった。(IF:P.79より)
・尿中排泄率14.53%(216時間、未変化体+代謝物)
・尿中に認められたペマフィブラートは、投与放射能の0.47%以下
少なくともAe≦0.47%となるため肝代謝型(Ae≦30)の薬剤といえます。
全身クリアランス(CL)≒肝クリアランス(CLH)と考えることができるので、
CLH=18L/h=300ml/min
抽出比
- 肝抽出比
EH=CLH(ml/min)/(B/P)/QH(ml)=300/0.575/1600
EH=0.326
0.3≦EH≦0.7より中間型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 99%以上
血漿蛋白非結合率:1%未満(IF:P.73より)
血漿中遊離形率(fuP)<0.01
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 2.061時間
※1回0.3mg単回投与でのデータ
(IF:P.60より)
その他
- PPARαの標的遺伝子の発現を選択的に調節することにより作用を示す高脂血症治療剤。(LDL-コレステロールのみが高い高脂血症に対し、第一選択薬とはしないこと)
- 生体内では、ペマフィブラートの未変化体がその薬効を担っているものと考えられた。(IF:P.78より)
- CYP2C8、2C9、3A4、3A7(胎児に特有の分子種)、UDPグルクロン酸転移酵素により代謝された。(IF:P.77より)
- CYP2C8、CYP2C9、CYP3Aにより代謝される。OATP1B1、OATP1B3の基質となる。(IF:P.83より)
- CYP3A誘導剤との併用によりペマフィブラートの代謝が促進されることで、ペマフィブラートの血漿中濃度が低下し効果が減弱するおそれがある。
- OATP1B1及びOATP1B3の阻害作用のある薬剤との併用により、ペマフィブラートの血漿中濃度が上昇する可能性がある。
- 重篤な肝障害、Child-Pugh分類B又はCの肝硬変のある患者あるいは胆道閉塞のある患者は禁忌
- eGFR30mL/min/1.73m2未満の腎機能障害のある患者は慎重投与
- 透析除去率:透析によりほとんど除去されない(IF:P.80より)
OATP1B1、OATP1B3といったトランスポーターについてはコチラの記事をご覧ください。
パルモディア®(ペマフィブラート)薬物動態情報まとめ
- Ae=0.47%以下→肝代謝型(Ae≦30)
- EH=0.326→中間型(0.3≦EH≦0.7)
- Vd(b)=111.3→細胞内分布型(Vd(b)≧50)
- fuP<0.01→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- バイオアベイラビリティ:61.534%
- 半減期:2.061時間
- 透析除去率:ほとんど除去されない
- 主にCYP2C8、2C9、3A4、UDPグルクロン酸転移酵素により代謝
- CYP3A誘導剤との併用で作用減弱
- OATP1B1及びOATP1B3阻害剤との併用で作用増強
- 重篤な肝障害は禁忌、腎障害は慎重投与