HMG-CoA還元酵素阻害薬であるクレストール®(ロスバスタチン)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
HMG-CoA還元酵素阻害薬はLDL-コレステロールを低下させる薬剤です。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『クレストール®IF, 2021年2月作成(第22版)』をさしています。
Contents
クレストール®(ロスバスタチン)薬物動態情報
用法用量
クレストール® 1日1回2.5mg MAX 20mg
(クレアチニンクリアランス30mL/min未満のMAX 5mg)
バイオアベイラビリティ
- 29.0%(90%信頼区間:24.1~34.9)
(IF:P.32より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
該当資料なし
不明のためB/P=0.5を使用
分布容積(Vd)
- 67.9L
(IF:P.33より)
Vd(b)<67.9/0.5=135.8
Vd(b)<135.8となり、分類不能。
(おそらく細胞内分布型になると思いますが…)
全身クリアランス
- 全身血漿クリアランス:31.9 L/h
- 腎クリアランス:11.6 L/h
(IF:P.32より)
肝クリアランス:31.9-11.6=20.3L/h
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 4.9%
(IF:P.39より)
Ae<30より肝代謝型の薬剤といえます。
抽出比
- 腎抽出比(ER)
ER=CLR/(B/P)/QR=11.6/0.5/1200=0.019
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
- 肝抽出比(EH)
EH=CLH/(B/P)/QH=20.3/0.5/1600=0.025
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 蛋白結合率は 88.0%(外国人)~89.0%(日本人)
(IF:P.33より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.89=0.11
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 20.2±7.8hr
(IF:P.29より)
その他
- OATP1B1 及び BCRP の基質である。
- CYP2C9 及び CYP2C19により代謝を受けるが、阻害薬による阻害率は10%以下のため薬物相互作用への影響は少ないとされる。
クレストール®(ロスバスタチン)薬物動態情報まとめ
クレストール®(ロスバスタチン)の特徴
- Ae=4.9%→肝代謝型(Ae<30)
- ER=0.019→消失能依存型(ER<0.3)
- EH=0.025→消失能依存型(ER<0.3)
- Vd=67.9L{おそらく細胞内分布型(Vd(b)≧50)}
- fuP=0.11→タンパク結合依存型(fuP<0.2)
- バイオアベイラビリティ:29.0%
- 半減期:20.2時間
- CYP2C9、2C19により代謝を受けるが、阻害率10%と薬物相互作用への影響は少ない