ベリキューボ®(ベルイシグアト)薬物動態情報
スポンサーリンク

可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤であるベリキューボ®(ベルイシグアト)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。

ベリキューボ®は左室駆出率45%未満の慢性心不全に対して使用されます。

可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤としてはアデムパス®(リオシグアト)がありますが、こちらは肺高血圧症に対して使用されます。

各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。

また、本記事中の審査報告書は『ベリキューボ®審査報告書, 2021年2月3日』のことです。

前回の記事で審査報告書を取り上げましたので、今回の薬物動態情報は審査報告書メインに情報収集しました。

スポンサーリンク

ベリキューボ®(ベルイシグアト)薬物動態情報

用法用量・効能効果

ベリキューボ® 1日1回2.5mg食後経口投与から開始
2週間間隔で1回投与量を5mg及び10mgに段階的に増量

《慢性心不全》

  • ACE-I、ARB、MRA、β1刺激薬等の心不全標準薬物治療を受けている
  • 左室駆出率45%未満

バイオアベイラビリティ

  • 絶対的バイオアベイラビリティ93%
    (審査報告書:P.25より)

    全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)

    • 血液/血漿中濃度比 0.645~0.672
      (審査報告書:P.26より)

    その他のデータはIFに記載されていましたが、B/PはIFに記載されていませんでした。
    そのため、IFを見ても必要なデータがない場合は審査報告書(または申請資料概要)を確認すると記載されているかもしれません。

    分布容積(Vd)

    • 43.7L
      (審査報告書:P.25より)

    Vd(b)=43.7/0.645=67.75
    Vd(b)≧50となり、細胞内分布型の薬剤になると考えられます。

    全身クリアランス

    • 全身クリアランス(CL):1.62L/h
    • 腎クリアランス(CLR):0.132L/h
      (審査報告書:P.25より)

    肝クリアランス(CLH):1.62-0.132=1.488L/h

    ml/minに単位変換すると、
    CL=27ml/min
    CLR=2.2ml/min
    CLH=24.8ml/min

    尿中未変化体排泄率(Ae)

    • 9.0%(投与後336時間)
      (審査報告書:P.30より)

    Ae<30より肝代謝型の薬剤といえます。

    Ae=腎クリアランス/全身クリアランスで表すことができるので、
    Ae=0.132/1.62≒0.08
    Ae:8%
    この点からみてもAe<30より肝代謝型の薬剤といえます。

    抽出比

    • 腎抽出比(ER)
      ER=CLR/(B/P)/QR=2.2/0.645/1200=0.0028

    ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。

    • 肝抽出比(EH)
      EH=CLH/(B/P)/QH=24.8/0.645/1600=0.024

    EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。

    タンパク結合率

    • 血清蛋白結合率95.95~98.00%
      (審査報告書:P.26より)

    タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
    血漿中遊離形率(fuP)=1-0.96=0.04
    fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。

    半減期

    • 18.9 hr(食後)
      (審査報告書:P.25より)

    作用機序

    心筋収縮力、血管緊張、心臓リモデリング等の生理機能の調節に関わる環状グアノシン一リン酸(cGMP)を生成する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を、一酸化窒素(NO)非依存的に、またNOを介して刺激し、cGMPの生成を促進する。
    (ベリキューボ®添付文書, 2021年8月改訂(第2版)より)

    (ベリキューボ®IF, 2021年9月作成(第2版), P29より)

    NOは血管拡張作用もあるため、血圧低下には注意が必要です。(低血圧にともなう投与量調整については添付文書等をご確認ください。)

    また硝酸薬やPDE5阻害剤といった、NOに関与する薬剤との併用は作用が増強し血圧低下等のリスクがあるため注意が必要です。

    リスク最小化計画

    重要な特定されたリスク
    ・低血圧

    重要な潜在的リスク
    ・硝酸剤及びNO供与剤との併用
    ・PDE5阻害剤との併用

    重要な不足情報
    ・肝機能障害患者への投与時の安全性
    ・腎機能障害患者への投与時の安全性
    ・血圧が100mmHg未満又は症候性低血圧の患者への投与時の安全性
    ・長期投与時の安全性

    ベリキューボ®錠に係る医薬品リスク管理計画書(RMP)より

    その他

    • ベリキューボ®の主代謝経路はN-グルクロン酸抱合体(代謝物M-1)へのグルクロン酸抱合であり、主代謝酵素はUGT1A9及びUGT1A1である。
    • CYPによる酸化代謝は主代謝経路ではないためCYP阻害の影響は少ない。

    ベリキューボ®(ベルイシグアト)薬物動態情報まとめ

    ベリキューボ®は左室駆出率45%未満の慢性心不全に対し、β1受容体遮断薬、ACE-I、ARB、MRAといった標準治療下で追加される薬剤。

    ベリキューボ®(ベルイシグアト)の薬物動態的特徴
    • Ae=9%→肝代謝型(Ae<30)
    • ER=0.0028→消失能依存型(ER<0.3)
    • EH=0.024→消失能依存型(EH<0.3)
    • Vd(b)=67.75L→細胞内分布型(Vd(b)≧50)
    • fuP=0.04→タンパク結合依存型(fuP<0.2)
    • バイオアベイラビリティ93%
    • 半減期18.9時間
    • CYP代謝の影響を受けにくい

    皆様の応援が励みになります。
    1日1回、クリック(↓)をよろしくお願いします。

    にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

     

    PVアクセスランキング にほんブログ村

    スポンサーリンク
    他にもこんな記事を書いています!