知っておきたい高カリウム血症・低カリウム血症と薬の話
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高カリウム血症、低カリウム血症は良くある電解質異常です。

薬剤が原因のケースも多いです。

なぜ、これらの電解質異常がなぜ重要なのか、心電図はどうなるのか、どんな症状が出やすいのか、対応はどうするのかなど、これらの内容を理解することは、とても重要です。

一緒に学んでいきましょう!

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高カリウム血症

高カリウム血症を起こす可能性のある薬剤

薬剤名は一般名で記載します。

・アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)

○○プリル(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、イミダプリル、テモカプリル、ペリンドプリル)

・アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)

△△テンシン(テルミサルタン、カンデサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、アジルサルタン)

・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)

スピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノン

・カリウム製剤

L-アスパラギン酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム

など

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は高血圧や慢性心不全に対して使用されます。

カリウムの排泄を抑制するため、カリウム濃度が上がってしまう可能性があります。また、使用頻度の多い薬なので、注意が必要です。

カリウム製剤はカリウムを補充し、低カリウム血症(カリウムが不足している状態)を改善するために使用されます。

これらの薬剤は、特に併用時や腎機能障害がある場合に注意が必要です。

病院にいる薬剤師の視点としては、薬剤や現在の血中カリウム濃度、腎機能等を見て、前述したような薬剤をすでに使用していたり、開始したときに、安全に使用できるか、注意が必要でこまめに確認が必要か判断し、継続的にチェックをしています。

急性腎障害による高カリウム血症で入院してくる等、仕方のないケースもありますが、高カリウム血症は事前に対応できるケースが多いです。

高カリウム血症とは?

血液中のカリウム濃度の正常値は3.5~5.0mEq/Lです。

高カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が5.5mEq/L以上と高くなった状態のことを言います。

カリウム濃度が7mEq/L以上になると致死的不整脈を起こす可能性が非常に高くなります。

そのため、高カリウム血症に気付いたらなるべく早く対応を取る必要があります。

高カリウム血症の心電図の特徴

高カリウム血症の心電図の特徴

・テント状T波

高カリウム血症の心電図はこんなイメージです。

図のようにT波が高くテントみたいにとがっている心電図をテント状T波といいます。

高カリウム血症初期にはこのような「テント状T波」を認めます。

また、高カリウム血症が進行すると、QRS幅が延長するようになり、心室細動から心停止に至ります。

ちなみに、先ほどの心電図と正常な心電図と比較するとこんなイメージです。(薄い色の方が正常な心電図のイメージです。)

高カリウム血症を引き起こす原因

◎偽性高カリウム血症

血液中のカリウム濃度は正常値なのに、検査結果では高いとなっている状態です。

採血の際に手技的な影響から溶血(細胞内のカリウムが血液中に放出)してしまった場合などに起こります。

この場合は、高カリウム血症の特徴的な心電図はみられません。

◎腎機能が低下している

カリウムは尿中に排泄されるのですが、腎臓の機能が低下していると、排泄ができず、血液中のカリウム濃度が高くなってしまいます。

◎カリウムを多く含む食品の過剰摂取

カリウムを排泄する量より、摂取する量が多いと血液中のカリウム濃度が高くなってしまいます。

特に腎機能が低下している方は注意が必要です。

◎薬剤(前述)

高カリウム血症の対応(薬剤に関する部分)

◎原因薬剤の中止・減量

◎陽イオン交換樹脂製剤

腸管内で薬剤のもつ陽イオンをカリウムイオンと交換し、カリウムイオンを排泄させて血液中のカリウム値を下げる薬のことです。

ここで交換される陽イオンにはナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)があります。

蛇足ですが、心不全でこれらの薬剤を用いる場合は、カルシウムイオン製剤を選択することが多いです。

なぜなら、ナトリウムは体内に水分を保持する性質を持ちますので、心不全を悪化させる可能性があるからです。

そもそも、高血圧や心不全など、ナトリウムを制限されているような方に入れなくてもよいナトリウムを入れてしまったら・・・。

薬剤名は一般名で記載と、( )に商品名を記載しておきます。
・ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート®、アーガメイト®)
・ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート®)

◎GI療法

GI療法とはグルコース-インスリン療法のことです。

グルコース(ブドウ糖)とインスリン(血糖値を下げるホルモン)を一定の割合で一緒に点滴します。

インスリンは、血中のブドウ糖とカリウムを同時に細胞内に取り込んで、血糖値を下げます。

インスリンのみを投与すると低血糖となってしまうためグルコース(つまり、糖分)を補っています。

GI療法は、血糖値を上げるためでもなく、下げるためでもなく、血液中のカリウム濃度を下げることが目的です。

高カリウム血症のまとめ

高カリウム血症に特徴的な心電図は『テント状T波

◎血中カリウム濃度が5.5mEq/L以上を高カリウム血症という

◎高カリウム血症は進行すると心停止を引き起こす

◎高カリウム血症は事前に防ぐことができる。

原因薬剤{アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、カリウム製剤など}の併用腎機能障害に注意

◎もし高カリウム血症時となってしまったら原因薬剤の中止・減量陽イオン交換樹脂製剤GI療法等の対応を取る。

低カリウム血症

低カリウム血症を起こす可能性のある薬剤

薬剤名は一般名で記載します。

ループ利尿薬

フロセミド、トラセミド、アゾセミドなど

チアジド系利尿薬

トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジドなど

甘草(グリチルリチン)を含む漢方薬など

芍薬甘草湯、葛根湯、六君子湯、防風通聖散など

など

甘草では偽性アルドステロン症(高血圧、低カリウム血症などがおこる)に注意ということを聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

甘草(グリチルリチン)のところで漢方薬などとしたのは、風邪薬、胃腸薬などの市販薬や食品にも含まれているからです。

食品には甘草の『甘』という字にもあるように、甘味成分として使用されており、グリチルリチンの甘さは砂糖の約200倍だそうです。

甘草抽出物はしょう油、みそ、漬物、つくだ煮、清涼飲料水、魚肉ねり製品、氷菓、乳製品など、広範囲に使われている?いた?ようですが、グリチルリチンで偽性アルドステロン症を引き起こすことが分かり、精製されたグリチルリチン酸二ナトリウムは、しょう油およびみそ以外の食品に使用してはならない旨が”食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準”で定められたようです。

低カリウム血症とは?

血液中のカリウム濃度の正常値は3.5~5.0mEq/Lです。

低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L未満と低くなった状態のことを言います。

◎軽度(K 3.0-3.5mEq/L) 
無症状のこと多い

◎中等度(K 2.5-3.0mEq/L)
消化器症状(嘔気、食思不振など)、骨格筋症状(脱力、筋力低下、テタニーなど)、尿濃縮障害(多尿、多飲)、インスリン分泌障害(耐糖能異常)

◎重度(K <2.5mEq/L)
四肢麻痺、呼吸筋麻痺、イレウス

低カリウム血症の心電図の特徴

低カリウム血症の心電図の特徴
・T派平低化
・U派増高

低カリウム血症の心電図はこんなイメージです。

図のようにT波が低く平らになり、U派が高くなるのが特徴です。

ちなみに、先ほどの心電図と正常な心電図と比較するとこんなイメージです。

低カリウム血症を引き起こす原因

◎カリウム摂取不足

偏食等でカリウム摂取不足や、食事量が少なく栄養不良の場合

◎カリウム排泄過剰

何らかの理由によってカリウムが多く排泄される場合(カリウムは主に尿と一緒に排泄されます)

・利尿薬
・薬剤性(偽性)アルドステロン症:甘草を含む漢方薬
・嘔吐・下痢(カリウムは消化管の分泌液からも排出されるため)

◎カリウムが細胞外から細胞内へ移動

・インスリン

カリウムが細胞内に入ってしまったことで、血中濃度が下がった状態です。(『高カリウム血症の対応(薬剤に関する部分)』のGI療法参照)

低カリウム血症の対応(薬剤に関する部分)

低カリウム血症ではカリウムの補充と、原因に対する治療を行います。

◎カリウム製剤の投与

低カリウム血症のまとめ

◎低カリウム血症の心電図の特徴は『T波平低化』『U波増高』

◎血中カリウム濃度が3.0mEq/L未満の低カリウム血症では症状が出る可能性あり

ループ利尿薬、チアジド系利尿薬、甘草(グリチルリチン)を含む漢方薬などに注意

◎低カリウム血症に対しては原因に対する治療とカリウム製剤

まとめ

高カリウム血症・低カリウム血症ともに命にかかわる可能性がある。

また、薬剤が原因のケースも多いため、原因・対応について知っておくことがが大事である。

 

 

 

 

 

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