一硝酸イソソルビドはニトログリセリンと硝酸イソソルビドと同じ硝酸薬ですが、一硝酸イソソルビドの剤型は錠剤しかありません。なぜでしょうか。
では、一硝酸イソソルビドの薬物動態情報をみていきましょう。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『アイトロール®IF, 2014年7月(第9版)』のことです。
Contents
一硝酸イソソルビド薬物動態情報
用法用量
一硝酸イソソルビド 1回20mg 1日2回経口投与(最大量:1回40mg)
バイオアベイラビリティ
- ほぼ100%(IF:P.28より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
データなし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 10mg:40.7 ± 4.5(L)
- 20mg:42.1 ± 8.3(L)
(IF:P.28より)
20mgの場合
Vd(b)<Vd/(B/P)=42.1/0.5
Vd(b)<84.2
Vd(b)≧50、Vd(b)≦20、Vd(b)=20~50すべての可能性があり特徴づけできませんでした。
全身クリアランス
- 10mg:6.0 ± 0.8(L/hr)
- 20mg:6.1 ± 0.8(L/hr)
- 40mg:6.2 ± 1.0(L/hr)
(IF:P.28より)
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 2%
投与48 時間までの尿中に投与量の29.0%が5 - ISMN のグルクロン酸抱合体として、42.0%がイソソルビドとして、2.0%が未変化体としてそれぞれ排泄された。残りはD -ソルビトール等に代謝されたものと考えられた。(IF:P.32より)
Ae≦30より肝代謝型の薬剤といえます。
20mgの場合、
全身クリアランス(CL):101.67ml/min
腎クリアランス(CLR):101.67×0.02=2.03
肝クリアランス(CLH):101.67-2.03=99.64
抽出比
- 腎抽出比
ER<CLR/(B/P)/QR=2.03/0.5/1200=0.0034
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
- 肝抽出比
EH<CLH/(B/P)/QH=99.64/0.5/1600=0.1246
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 3.9%(IF:P.28より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.039=0.961
fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。
半減期
- 5~6時間(IF:P.21より)
その他
- 初回通過効果の影響は極めて少ない
一硝酸イソソルビド薬物動態情報まとめ
- 経口剤のみ
- Ae=2%→肝代謝型(Ae≦30)
- ER=0.0034→消失能依存型(ER<0.3)
- EH=0.1246→消失能依存型(EH<0.3)
- Vd(b)<84.2→分類できない
- fuP=0.961→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
- バイオアベイラビリティ:ほぼ100%
- 半減期:5~6時間
一硝酸イソソルビドの剤型はなぜ経口剤のみなのか?ですが、一硝酸イソソルビドはバイオアベイラビリティがほぼ100%と投与した薬剤が血管内に移行し作用を示します。つまり、経口剤で十分であり、もし注射剤など他の剤型があったとしても使用されることはほとんどないということが想定できますね。