宗教上の理由でブタやウシなど動物由来の成分が原料の医薬品が使用できないケースがあることをご存じですか?
先日、宗教上の理由で医薬品が使えないというケースを体験しました。過去に同じ宗教でも食事はダメだけど医薬品はOKという経験しかなかったため、改めてしっかりと確認することは大事だなと実感しました。(意識がないため事前確認ができないケースだったり、動物由来の成分が含有されていることを知らずに投与されていたケースがなかったか…というと否定はできませんが…)
知らずと動物由来の成分が使用された医薬品を投与してしまうことがないように、注意が必要ですよね。
ということで、宗教と注意すべき医薬品についてみていきたいと思います。
- 動物由来の医薬品にはどのような医薬品があるのか?
- 宗教と摂取を注意すべき成分(食べ物)
- 動物由来の成分が含まれているかどうやって調べるの?
では先日経験した事例とともにお送りします。
Contents
【動物由来の医薬品】宗教と注意すべき薬剤
- 外国の方
- アレルギー登録に「肉」と記載
- 労作性狭心症で経皮的冠動脈形成術(PCI)目的で入院
面談時の一コマです。
カルテに詳細記載、アレルギー欄に「ヘパリン」「ブタ由来成分を含む医薬品」を登録、掲示板にて注意喚起を行いました。
続いて医師に報告します。
今回は、動物由来の成分を含まないアルガトロバンを代替薬として提案しています。使いたい薬剤が使えないとなったときにどうするかも薬剤師の腕の見せ所ですね。
医師に伝えると、宗教上の理由で肉がダメということは把握しており食事オーダーでは肉を取り除いたようですが、薬も使用できないとは思っていなかったようです。ヘパリンを使用できないのは想定外だったようですが、事前に報告・提案できており、患者にも誤って投与することはありませんでした。
また看護師にも報告し、ヘパリンロックシリンジをルートフラッシュ時等に使用しないように周知しました。
同じ宗教でも地域や個人によって信仰理念に差があり、治療に必要であれば使用してようという教徒もいるため、何がダメか、どこまでなら許容できるのかといった詳細の確認が重要です。
今回で言えば、食事はすべての動物でNGだけど、薬はブタ由来のみNGで他に関しては選択肢がなければ投与可でした。同じ宗教でも食事はNGだけど医薬品ならブタ由来でも投与OKというケースもあるため、聞き取りが大事になってきます。
望まない投与が起こらないように、注意が必要です。
生物由来製品とは?
宗教で問題となるウシやブタ等の動物に由来する医薬品は生物由来製品に含まれます。
では生物由来製品についてみていきましょう。
【改正薬事法第2条第10項】
「生物由来製品」とは、人その他の生物(植物を除く。)に由来するものを原料又は材料として製造をされる医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器のうち、保健衛生上特別の注意を要するものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
生物由来製品でなくても(ウシやブタに由来する原料が使用されていなくても)、製造の工程で使用されるケースもありますので注意が必要です。
厚生労働大臣が指定する生物由来製品にはなにがあるか気になる方はコチラから確認できます。(※ウシやブタ等の動物だけでなく、ヒトに由来する製品も記載されています。リンクはpmdaの該当ページです。)
動物由来の医薬品と宗教
ここで特に問題となるのが、ウシやブタ由来の医薬品です。
宗教によってはこのような医薬品を宗教上の理由で使用できない場合があります。
では世の中にはどのような宗教があるのでしょうか?
【世界の主な宗教】
- キリスト教(約20億人)
- イスラム教(約11億9,000万人)
- ヒンドゥー教(約8億1,000万人)
- 仏教(約3億6,000万人)
- シク教(約3,000万人)
- ユダヤ教(約1,400万人)
- その他の宗教(約9億1,000万人)
- 無宗教(約7億7,000万人)
これらの宗教で食べられないもの・注意すべきものについてまとめました。つまり医薬品に各宗教で該当する動物の成分が含まれている場合は注意が必要ということになります。
・肉類
菜食を主義とするセブンスデー・アドベンチスト教会の信者は、肉食全般を避ける傾向があります。肉・魚・卵をはじめ、動物の脂肪分でできた油や動物の肉・骨を使ったエキス・出汁にも気をつけましょう。バター、ラード、牛脂、ゼラチン、ブイヨンは使用せず、植物性の油や出汁で代用してください。
・アルコール
モルモン教ではアルコール類の摂取を禁止しています。飲み物としてのアルコールだけでなく、料理酒、みりんなどのアルコール入りの調味料や、デザートに含まれるリキュール、香りつけに使用するワインなども対象になるため、料理を提供する際にも注意が必要です。
・コーヒー・紅茶・お茶
カフェイン入り飲料も、モルモン教においては禁忌とされています。コーヒー・紅茶に加えて日本茶・緑茶もカフェインを含むため、食中・食後のドリンクはミネラルウォーターにするなど配慮できるとよいでしょう。
参考:CAN EAT『キリスト教徒の食事制限〜食のタブーと調理・接客のポイント〜』
・豚肉
イスラム教徒が食べられないものとしてもっとも有名な食品です。食品そのものだけでなく、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工食品や、豚のエキス・油にも注意が必要です。ブイヨンやゼラチン、豚の脂であるラードは使用しないでください。ラードの代わりには植物性の油を使うとよいでしょう。
豚肉を見るだけで嫌悪感を抱く人や、豚肉と同じ器具を使って調理された食べものを忌避する人もいるため、調理や配膳にも配慮できるとより安心です。
NGメニュー例:豚肉入りのカレー、豚骨ラーメン、豚エキスを使用した調味料やドレッシングなど
・酒類
イスラム法では、アルコールの摂取は禁忌とされています。酒はドリンクとしてだけでなく、料理酒やみりん、香りづけ用のワインなど、調味料として使われることもあるため調理の際にも注意しましょう。お菓子やデザートに入っているリキュールも食べられないため、原材料をしっかりと確認してください。
なお、アルコールをイメージさせるものや空間も避ける傾向があります。お酒を飲まない人にはグラスを提供しないようにするなど、不安にさせないための配慮が必要です。
・イスラム法上適切に処理されていない肉
牛肉や鶏肉、羊肉など、豚肉以外の肉であっても、イスラム法の規定に則した屠殺方法・調理器具・調理場で処理されていない肉はタブーとして避けられます。
海外から輸入した肉には、適切な処理を施したかどうかわかるように「ハラルマーク」をつけることも多いです。ただし、厳格な教徒でない限りは「豚肉でなければ大丈夫」という人も実際には多いため、個別に確認するとよいでしょう。
・一部の魚介類や生魚
一部の宗派ではウロコのない魚を食べません。うなぎやイカ、タコ、貝類は避けたほうが無難です。また刺身や寿司などの生魚は食べ慣れていないため苦手に感じる人がいます。
参考:CAN EAT『イスラム教徒の食事制限〜ハラールと調理・接客のポイント〜』
・肉類(牛肉・豚肉)
牛は神聖な動物として崇拝されているため、タブーとされる食材です。逆に不浄な動物とみなされている豚も食べません。肉食をする人でも、食べられるのは鶏肉と羊肉、ヤギ肉に限られます。
動物の肉や骨を使ったエキスやブイヨン、ゼラチン、牛乳の脂肪であるバター、豚の脂肪であるラード、牛の脂肪であるヘットにも、調理時には注意が必要です。肉食全般を忌避する人がいるときは、植物性の出汁や脂を使うようにしましょう。
・魚介類全般
魚介類全般も、動物性の食べ物として忌避する人がいます。鰹節を使った出汁も避ける対象になるため、昆布出汁など、野菜や海藻由来の出汁を使うようにすると安心です。
・卵
卵も動物性の食べ物なので、忌避する場合があります。なかには有精卵は食べられないものの無精卵は食べるという人もいます。
・生もの
ヒンドゥー教徒には生ものを食べる習慣がありません。基本的に火を通したものを提供するようにしましょう。
・五葷(ごくん:ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ)
厳格なヒンドゥー教徒は、五葷(ごくん)と呼ばれるネギ科の植物も食べません。その他野菜では根菜を食べない人もいるため、ベジタリアンの人には事前に確認しておくとよいでしょう。
僧侶や信仰心の強い信者、一部の宗派の信者のなかには、下記の食材を忌避する人がいます。日本では、修行中に限って食事を制限するケースもみられます。
・肉類(牛肉など)
東アジアや中央アジアを中心に広がった大乗仏教では、肉・魚・卵などの動物性の食べ物全般を避ける傾向があります。また中国仏教の観音信仰では牛肉を食べない人がいます。肉を食べてもよいとされる上座部仏教においても、積極的に生き物を殺して僧侶に肉を提供することや肉に関する仕事に就くことはタブーとされています。
肉食が禁忌とされる場合には、肉そのものだけでなく、動物のエキスを使った出汁やスープ、動物性の脂肪でできたバターやラードも食事に使用できません。植物性の出汁や油を使う配慮が必要です。精進料理でも鰹出汁は使わないように注意しましょう。
・五葷(ごくん):ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ
「五葷」と呼ばれるネギ科の植物も、厳格な信者は禁忌として避ける傾向があります。臭いが強いため気を損ない、修行の妨げになると考えられているからです。
・豚肉
コーシェルに属する動物(食べてもよいとされる生き物)は「ひづめが2つに割れていて、反芻するもの」と規定されています。豚はこれに当てはまらないため、ユダヤ教徒は食べません。豚の肉や骨を利用した出汁やスープ、ソース、エキス、豚の脂肪であるラードなども禁忌の対象となるため、調理の際には注意しましょう。
・血液
ユダヤ教では血液を口に入れることも禁じています。肉や魚を調理する際には、しっかり血抜きを行った上で焼き加減に気をつける必要があります。たとえばレアステーキのような血の色がみえるメニューは避けてください。
・乳製品と肉の組み合わせ
「乳製品と肉が同時に胃の中にあってはならない」という決まりもあります。これは聖書の「子山羊を、その母の乳で煮てはならない」という文言から生まれた規定と考えられており、具体的には下記の行為が禁忌とされます。ユダヤ教徒向けの献立やメニューを考えるときには見逃せないポイントです。
<禁忌>
・乳製品と肉が入った料理(シチュー、チーズハンバーグなど)を食べること
・同じ献立のなかに乳製品を使った料理と肉料理が同時に存在すること
・乳製品と肉を同じ器具を使って調理すること
・肉料理を食べてから時間を空けずに乳製品を食べること(逆もしかり)
・宗教上適切に処理されていない肉
ユダヤ教にはシェヒターという屠殺に関する規定があります。専門の資格を有する屠殺人によって屠殺された上でさまざまな検査をクリアし、厳格に管理された肉のみが本来はコーシェルとして認められます。
地域によっては適切な処理がなされた肉を手に入れることが困難なので、規定の遵守を徹底する信者のなかには、肉類を食べることそのものを避ける人もいます。
・イカ・タコ・エビ・カニ・牡蠣・貝類全般
海の生き物では「ヒレとウロコのあるもの」のみがコーシェルとして認められています。イカ・タコ・エビ・カニ・牡蠣、その他貝類全般はタブーであり、口に入れないのが一般的です。
日本食では刺身や寿司、酢の物、イタリアンでもパスタやピザなどにはコーシェルではない食材がしばしば使われるため、メニューを決める際には十分に考慮しましょう。「カニカマ」のように禁忌とされる食材を想起させる食材やメニューもNGです。
・その他
ウサギ、ラクダ、イノシシ、ハゲワシ、昆虫類、肉食動物(ライオンなど)も食べてはならないと規定されています。日本の食文化においては食べる風習のないものがほとんどですが、ジビエ料理などで特別な食材を使用する際には注意しましょう。
参考:CAN EAT『ユダヤ教徒の食事制限〜コーシェルと調理・接客のポイント〜』
見比べてみると宗教ごとの違いもありますが、同じ宗教でも宗派や個人の価値観により変わってくる可能性があることが分かると思います。医薬品の使用についても何が絶対NGで何が許容できるのか、個々に詳細を確認することが大事ということになります。
あと、各宗教の内容を囲った色は、その宗教で好まれている色から被らないように選びました。なんだその情報…って感じですよね。スイマセン。
動物由来物質を含む医薬品の確認方法
ここまで動物由来物質を含む医薬品は宗教上の理由で投与できない可能性があるということを伝えてきました。では、どこをみれば動物由来物質が含まれているということがわかるでしょうか。
まずは添付文書やインタビューフォームを調べてみましょう。最初に『組成』という項目を確認します。今回の事例ででてきたヘパリンナトリウムでは次のように記載されています。
本剤は、健康な食用獣(ブタ)の腸粘膜から得たヘパリンナトリウムの注射液で、下記の成分を含有する。
ヘパフラッシュ添付文書、2023年4月改訂(第2版)
また、カプセル剤のゼラチンが動物由来である場合があるので注意が必要です。
とはいえ最近のカプセルは植物由来が多いので、動物由来のゼラチンを使用する頻度は減っています。
というのも、これまでは安価で品質も安定していた動物由来の原料を使ったゼラチンカプセルが使用されておりましたが、BSE(牛海綿状脳症)問題や宗教上の理由で近年では動物由来のゼラチンの使用を避け、植物由来のゼラチンが使用されるケースが増えてきているからです。
組成の項目に記載されていなくても、『禁忌』に『ウシ又はブタ蛋白質に対し過敏症の既往歴のある患者』と記載されている場合も、動物由来の成分が入っているか製造の工程で使用されていると思いますので注意が必要です。
他にも、『薬効薬理』や『取り扱い上の注意』の項目に記載されているケースもあります。
もし最新の添付文書やインタビューフォームを見ても分からなかった場合はメーカーのDIに電話して確認しましょう。(その方が確実ですし、答えにたどり着くまで早いです。)
例えば上述したゼラチンについてですが、添付文書やインタビューフォームでは「ゼラチン」としか記載されていない場合もあるので、該当医薬品のゼラチンが動物由来か植物由来かという情報が知りたい場面に遭遇したときは各メーカーの DIに確認すると良いでしょう。
動物由来物質を含む医薬品
ウシやブタなどの動物由来物質を含む医薬品についてまとめてみました。(※すべてのウシ・ブタ由来物質を含む医薬品を網羅しているわけではありません。)
医薬品名 | ウシ | ブタ | その他の動物 | 備考 |
乳糖 | 🔴 | [ウシの乳由来] | ||
ヘパリン | 🔴 | ブタ腸由来 | ||
フラグミン | 🔴 | ブタ腸由来 | ||
オルガラン | 🔴 | ブタの小腸粘膜抽出物 | ||
ウロナーゼ | 🔴 | 精製ゼラチン(ブタ皮由来) | ||
クリアクター | 🔴 | 🔴 | 🔴 | 製造工程でベビーハムスターの腎臓由来の遺伝子組換え細胞、ウシ胎児血清、ウシ血清より製するプラスミン、ブタ膵臓より製するトリプシン、マウス腹水より製する抗モンテプラーゼモノクローナル抗体、ウサギ血清より製する抗不純蛋白質抗体を使用 |
トロンビン | 🔴 | ウシ血液由来 | ||
アクチバシン | 🔴 | 🔴 | アルテプラーゼ原液は組換えチャイニーズハムスター卵巣細胞(組換えCHO細胞)に由来。製造工程において、ウシ胎児血清を使用 | |
クレキサン | 🔴 | ブタの腸粘膜由来 | ||
ノンスロン/ノイアート | 🔴 | 製造工程でブタ腸粘膜由来のヘパリンを使用 | ||
献血グロブリン | 🔴 | 製造工程でブタの腸粘膜由来成分(ヘパリン)及びブタの胃粘膜由来成分(ペプシン)を使用 | ||
献血ベニロン-I | 🔴 | 製造工程でブタの腸粘膜由来成分(ヘパリン)を使用 | ||
献血グロベニン-I | 🔴 | 製造工程でブタの腸粘膜由来成分(ヘパリン)を使用 | ||
エクセラーゼ | 🔴 | 🔴 | [ウシ・ブタ膵臓由来の消化酵素、販売中止経過措置期限:2024年3月31日] | |
タフマック | 🔴 | 🔴 | パンクレアチンはブタ膵臓由来の消化酵素。添加剤に乳糖。 | |
パンクレアチン | 🔴 | 🔴 | ウシ・ブタ膵臓由来の消化酵素(主にブタ) | |
リパクレオン | 🔴 | ブタ膵臓由来の消化酵素 | ||
ベリチーム | 🔴 | 🔴 | 有効成分の濃厚膵臓性消化酵素はブタの膵臓から精製したパンクレアチン。添加剤に乳糖。 | |
フェンラーゼ | 🔴 | 🔴 | [ウシ・ブタ膵臓由来の消化酵素] | |
アクトヒブ | 🔴 | 🔴 | 🔴 | 製造工程で、ウシの乳由来成分(カゼイン酸加水分解物、カゼインパンクレアチン消化物、トリプトンV、カゼインペプチドN3、スキムミルク)、ブタ由来成分(チャコールアガー、カゼインパンクレアチン消化物及びトリプトンV)、ウシの肝臓及び肺由来成分(肉エキス)、ウシの心臓(ウシ心臓浸出液及びチャコールアガー)及び骨格筋(チャコールアガー)由来成分、ウマの血液由来成分(脱線維ウマ血液)を使用 |
(表は横にスライドできます。)
表の備考には添付文書等に載っていた内容を記載しています。また、備考の[ ]のなかに記載されている内容は添付文書等にはウシやブタ由来の物質とは明記されていないものの、禁忌として記載されていたり、調べた範囲で分かった原料として用いられている内容を記載しています。
表を見てみると、血液凝固阻止剤、消化酵素剤が多いということが分かりますね。
乳糖の原料はなに?
乳糖って添付文書のどこにもウシとは書いていないんですよね。
乳というと牛乳なのでウシのイメージだとは思いますが、一応調べてみました。
製薬用乳糖はホエイまたはパーミエートを濃縮することによって生成されます (濃縮ホエイたんぱく質の副産物)。その乳糖を過飽和し、次に取り除き、乳糖結晶を精製し、乾燥し、製粉します。製薬用乳糖は厳しい仕様に合うように製造されます。
ここででてきたホエイとは、ヨーグルトにできる上澄みの水分のことで、乳清(にゅうせい)とも呼ばれます。牛乳から乳脂肪とカゼインを除いた成分になります。
これで乳糖はウシさんの乳が使用されていることが確認できました。
参考までに、FAO(国連食料農業機関)による2020年の統計によると、世界で生産される乳の内訳は牛82%、水牛15%、山羊2%、羊1%、ラクダ0.3%となっていました。乳といったら“牛乳”がまず浮かんでくるのも頷けますね。
乳糖は多くの医薬品の製造に用いられていますから、もし投与NGなケースを対応することになったら対応が大変そうですね。
まとめ
- ウシやブタなど動物由来物質を含む医薬品は宗教上の理由で投与できない可能性があることを把握する。(製造工程での使用含む)
- 動物由来物質を含む医薬品の投与を望まないケースでは使用薬剤に該当成分が使用されていないことを調べる。(製造工程での使用含む)
- 動物由来物質が含まれているかどうかは該当医薬品の最新の添付文書やインタビューフォームを調べる。記載がない場合はメーカーのDIに確認する。(製造工程での使用含む)
- 動物由来物質が含まれている医薬品が投与NGな場合は代替薬を提案する。(製造工程での使用含む)
望まない投与が起こらないように、各宗教のタブーを理解し、目の前の患者さんがウシやブタなど該当成分を含む医薬品を使用できるかどうかしっかりコミュニケーションをとって確認していかなければいけませんね。
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)(令和五年法律第六十三号による改正、施行日:令和五年六月十六日)
- 宗教、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
- CAN EAT『キリスト教徒の食事制限〜食のタブーと調理・接客のポイント〜』
- CAN EAT『イスラム教徒の食事制限〜ハラールと調理・接客のポイント〜』
- CAN EAT『ヒンドゥー教徒の食事制限〜食のタブーと調理・接客のポイント〜』
- CAN EAT『仏教徒の食事制限〜精進料理とマナー・接客のポイント〜』
- CAN EAT『ユダヤ教徒の食事制限〜コーシェルと調理・接客のポイント〜』
- 『製薬用乳糖』, ThinkUSAdairy by the U.S. Dairy Export Council
- FAO(国連食料農業機関)統計データ(2020年生乳生産量)
- 各薬剤添付文書、インタビューフォーム(2023年11月確認)