薬剤師必読!新薬評価で使える審査報告書・医薬品リスク管理計画書(RMP)
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突然ですが、新しい医薬品が承認された時に何を見て有効性、安全性を判断しますか?

  • メーカーHP
  • 添付文書
  • インタビューフォーム(IF)
  • メーカー説明会(オンラインセミナー含む)

など色々あると思いますが、

審査報告書医薬品リスク管理計画書(RMP)を読んだことはありますか?

承認時に気になる疑問はわざわざメーカーに問い合わせなくても審査報告書等を確認すると解決できることは多いです。

一緒に活用方法を学んでいきましょう。

※この記事では審査報告書・RMPの確認ポイント、審査報告書の検索方法について知ることができます。

 

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薬剤師必読!新薬評価で使える審査報告書・医薬品リスク管理計画書(RMP)

審査報告書・RMPを読んだことない方!読まなくても問題ないと思っているかもしれませんがもったいないです。情報の山ですよ。

そもそも審査報告書やRMPを知らない方、これを機に読んでみましょう。

まず簡単に添付文書、IF、審査報告書、RMP、承認審査概要といった書類関係の説明をしますね。

添付文書とは

添付文書とは、医薬品や医療機器に添付されが義務付けられた適切に使用する際の基本となる重要な公的文書で、使用上の注意や用法・用量、効能、副作用などの基本的情報を記載した書面のことです。

 

インタビューフォーム(IF)とは

IFとは、日本病院薬剤師会が製薬企業に作成と配布を依頼する薬剤師向けの医薬品解説書の一種で、医薬品の基本情報を記した添付文書を補完する情報資材のことです。

 

審査報告書とは

審査報告書とは、医薬品の審査経過、評価結果等について独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が取りまとめた情報資材のことです。

 

医薬品リスク管理計画書(RMP)とは

RMPとは、医薬品の開発から市販後まで一貫したリスク管理をひとつの文書に分かり易くまとめ、市販後の安全対策として既に確認されたリスクだけでなく、潜在的リスクや不足情報が記載された情報資材のことです。

 

承認審査概要とは

申請資料概要とは、申請資料の最終版を製薬企業が取りまとめた情報資材のことです。

 

審査報告書とIFの違い

審査報告書とは個々の医薬品の承認にあたって製薬会社がまとめた申請書をPMDAが審査し、PMDAとしての見解をまとめた資料です。

添付文書やIFは製薬会社がまとめたものなので、臨床試験データも製薬会社が不要と考えるデータは載っていません。

一方で審査報告書はその医薬品の承認にあたって使われたデータが載っています。

例えば薬物動態情報をみるときに全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)というパラメータを確認するのですが、IFに載っていなくても審査報告書には記載されていることはよくあります。(以下で例にあげるベリキューボ®についてもそうでした。)

このように、もし自分が薬の特徴を知るために必要な情報と思っていても、作成者(製薬会社)が必要と思っていなければ、記載されていないということになります。

 

審査報告書では製薬会社とPMDAのやりとりを見ることができる

2021年6月に発売された慢性心不全治療薬のベリキューボ®(ベルイシグアト)という薬剤を例に見てみましょう。

 

審査報告書の対象患者(P.77)について製薬会社(申請者)とPMDA(機構)の意見が異なっています。

  • 申請者:心不全の標準治療を受けている慢性心不全
  • 機構:心不全の標準治療を受けているLVEF(左室駆出率)45%未満の慢性心不全

最終的には添付文書に効能又は効果に関連する注意として左室駆出率の記載がされました。

5. 効能又は効果に関連する注意
5.1 左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。
5.2 「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率、収縮期血圧等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。

審査報告書を読むことでなぜこのようになったかの経緯が分かり、医薬品の有用性、安全性などについて理解を深めることができますね。

発売時点では左室駆出率が保たれた心不全に対するデータは不十分でしたが、この文言がなければ左室駆出率などの患者背景を気にせず使用されていたかもしれません。

審査報告書は薬剤師として薬剤の適正評価のために必要な書類だと思います。

 

もちろんすべての医薬品の審査報告書に目を通すことは難しいですし、承認されてから年数の経っている医薬品についてはその後の臨床試験データや再評価のデータが出ており、添付文書の改訂も随時行われていることから、最新のデータを主に参考にすべきであることは補足しておきます。

ただ、薬物動態のデータなどは審査報告書を参考としていただいて問題ありません。

では、審査報告書を読むポイントについて記載していきたいと思います。

 

審査報告書を読むポイント

審査報告書という書類があるのは知っているけど、審査報告書はページ数が多いしどこになにが書いてあるかよく分からないからあまり読みたくないと感じる方も多いかもしれません。

大丈夫です。確認するポイントさえ押さえてしまいましょう。検索方法は『審査報告書・RMPの取得方法』で記載しています。

では、ベリキューボ®の審査報告書を例に記載していきます。

審査報告書の構成は画像と文章、見やすい方でご確認ください。

審査報告書の構成(画像Ver.)
審査報告書の構成
○審議結果報告書
○審査報告書
○審査報告(1)
1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等
2.品質に関する資料及び機構における審査の概略
3.非臨床薬理試験に関する資料及び機構における審査の概略
4.非臨床動物動態試験に関する資料及び機構における審査の概略
5.毒性試験に関する資料及び機構における審査の概略
6.生物薬剤学試験及び関連する分析法、臨床薬理試験に関する資料並びに機構における審査の概略
7.臨床的有効性及び臨床的安全性に関する資料並びに機構における審査の概略
8.機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断
9.審査報告(1)作成時における総合評価
○審査報告(2)
1.審査内容
 1.1 有効性について
 1.2 安全性について
 1.3 効能・効果及び対象患者について
 1.4 用法・用量について
 1.5 医薬品リスク管理計画(案)について
2.審査報告(1)の訂正事項
3.機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断
4.総合評価

審査報告書というファイルをクリックするとまずでてくるのが「審議結果報告書」という文書です。そのまま下に進めていくとでてくるのが「審査報告書」になります。

「審査報告書」は「審査報告(1)」、「審査報告(2)」で構成されています。

「審査報告(1)」には申請者(製薬企業)から提出された医薬品の品質、薬理、薬物動態、毒性、臨床薬理、治験などの資料の概要や申請者とPMDAの審査におけるやりとりや PMDA としての結論が記載されています。

「審査報告(2)」には外部専門家の意見も含む、有効性と安全性に関する議論の結果が記載されています。

 

まずは「審査報告(2)」に目を通しましょう。特に「1.審査内容」は重要ですね。

「1.審査内容」の構成は次の通りです。

○審査報告(2)
1.審査内容
 1.1 有効性について
 1.2 安全性について
 1.3 効能・効果及び対象患者について
 1.4 用法・用量について
 1.5 医薬品リスク管理計画(案)について

最初から全部読むよりも、結論を見て全体を把握したほうが早く情報できますよね。

 

続いて「審査報告(1)」を確認します。

「審査報告(1)」の構成は次の通りです。

○審査報告(1)
1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等
2.品質に関する資料及び機構における審査の概略
3.非臨床薬理試験に関する資料及び機構における審査の概略
4.非臨床動物動態試験に関する資料及び機構における審査の概略
5.毒性試験に関する資料及び機構における審査の概略
6.生物薬剤学試験及び関連する分析法、臨床薬理試験に関する資料並びに機構における審査の概略
7.臨床的有効性及び臨床的安全性に関する資料並びに機構における審査の概略
8.機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断
9.審査報告(1)作成時における総合評価

「審査報告(1)」に目を通すのですが、目次をみて分かるように非臨床情報が半分程度含まれています。そういうところには基本目を通しません。臨床に関する情報が欲しいのです。特に6、7の項目の情報が欲しいのですが、何が記載されているかというと、次の通りです。

 

  • 「6.生物薬剤学試験及び関連する分析法、臨床薬理試験に関する資料並びに機構における審査の概略」には薬物動態情報、食事の影響、腎機能の影響、肝機能の影響、薬物相互作用などが記載されています。
  • 「7.臨床的有効性及び臨床的安全性に関する資料並びに機構における審査の概略」には第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験、臨床的位置付け、有効性、安全性、製造販売後の検討事項などが記載されています。

 

私自身は審査報告書を読むときはまず「審査報告(2)」を読んで「審査報告(1)」の6・7に該当する部分を読みます。その後RMPに目を通すという感じですね。

 

RMPを読むポイント

RMPは市販後の安全対策として既に確認されたリスクだけでなく、潜在的リスクや不足情報が記載されています。

つまり添付文書だけを見ていては記載されていない情報の部分を見逃してしまう可能性があります。

見ていれば、知っていれば、未然に防げた可能性が高いですよね。

こちらがベリキューボ®のRMP概要になります。

RMPのトップに記載されている概要を確認すれば内容をつかむことができますね。ポイントというまでもないですが、この文書を見ることが大事なのです。各項目の詳細等は必要に応じて本文を確認してください。

 

審査報告書・RMPの取得方法

審査報告書やRMPはPMDAのHPから見ることができます。

「審査報告書」と検索すると下のページが検索されますので「医療用医薬品 情報検索」をクリックしてください。

(私自身はこちらのページをブックマークしています。)

①一般名または販売名(医薬品の名称)に入力し、②検索をクリックしてください。

検索結果が表示されますので、右にスライドしてください。

審査報告書やRMPなど選択すると、該当文書を閲覧することができます。

簡単に文書までたどり着くことができますので、是非検索して確認してみてください。

 

まとめ

  • 審査報告書とは、医薬品の審査経過、評価結果等について独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が取りまとめた情報資材のこと。
審査報告書の構成
○審議結果報告書
○審査報告書
○審査報告(1)
1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等
2.品質に関する資料及び機構における審査の概略
3.非臨床薬理試験に関する資料及び機構における審査の概略
4.非臨床動物動態試験に関する資料及び機構における審査の概略
5.毒性試験に関する資料及び機構における審査の概略
6.生物薬剤学試験及び関連する分析法、臨床薬理試験に関する資料並びに機構における審査の概略
7.臨床的有効性及び臨床的安全性に関する資料並びに機構における審査の概略
8.機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断
9.審査報告(1)作成時における総合評価
○審査報告(2)
1.審査内容
 1.1 有効性について
 1.2 安全性について
 1.3 効能・効果及び対象患者について
 1.4 用法・用量について
 1.5 医薬品リスク管理計画(案)について
2.審査報告(1)の訂正事項
3.機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び機構の判断
4.総合評価
審査報告書の構成(画像Ver.)
  • 医薬品リスク管理計画書(RMP)とは、市販後の安全対策として既に確認されたリスクだけでなく、潜在的リスクや不足情報を取りまとめた情報資材のこと。
  • オススメの確認順
    ①「審査報告(2)」を確認
    ②「審査報告(1)」の6・7を確認
    ③RMPで潜在的リスクや不足情報を確認
  • 審査報告書やRMPはPMDAのHPから取得することができる。

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