暗記じゃない!シシリアン・ガンビット分類表の見方を知ろう!
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早速質問ですがベラパミル(ワソラン®)は左室駆出率が低下している患者に使用しても良いでしょうか?

結論から言うと、ベラパミル(ワソラン®)は心機能が低下している患者に使用しにくい薬剤です。

それは陰性変力作用(≒心機能を低下させる作用)があるからなのですが、このような情報がまとまっている表があります。

それが『Sicilian Gambit分類(シシリアンガンビット分類)』です。

『Sicilian Gambit分類』って聞いたこと・見たことないでしょうか。授業で習ったことありませんか?

授業で覚えるようにと言われても暗記はしんどいですよね。

しかし『Sicilian Gambit分類』は暗記する表ではありません。活用する表です。

最初に学んだときに表の見方の説明がなかったことがニガテへつながっていると思います。

表の見方が分かると、『Sicilian Gambit分類』は“使える表”だと思えるようになりますよ!

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Sicilian Gambit分類は暗記するものではない

不整脈、特に頻脈のときに、抗不整脈薬を使うことがあると思います。

抗不整脈薬って難しくないですか?○○イオンチャネルとか、△△受容体とかややこしいですよね。

看護師さんだけでなく薬剤師も抗不整脈薬って苦手って思っている人が多いと思います。

私も学生の頃、就職してからもずーっと苦手でしたが、循環器内科を何年も担当して、やっと苦手意識が減りました。

なので、今苦手と思っている方、安心してください!そして、その苦手を少しずつ減らしていきましょう!

 

『Sicilian Gambit分類』、これには○○イオンチャネルとか、△△受容体とかどこに作用するかということが書いてあります。

私も大学等の授業で抗不整脈薬と言うとそこをメインにならった遠い記憶がありますし、この表にはそういったことがまとめて書いてあるだけというように思い込んでました。

しかし、よくよくこの表を見てみると、右の方に『臨床効果』とか『心電図所見』といった項目の記載があるではありませんか。

なんと薬を使った後にどういった効果・影響があるかがまとめてあります!(このことに循環器内科を何年も担当してから、気付きました・・・)

抗不整脈薬を使っている場合、心電図で気になることがあれば、『Sicilian Gambit分類』の表を見てみると答えが書いてあるかもしれません。

Sicilian Gambit分類を別で検索して見ながらこの記事を見ていただければ分かりやすいと思います。

Sicilian Gambit分類は暗記するものではありません。必要な時に見るものです。

では、見方について記載していきたいと思います。

『Sicilian Gambit分類』の見方

ここでは薬を使った後にどういった効果・影響があるかが分かる『臨床効果』・『心電図所見』の項目について記載します。

矢印については下記のとおりです。

↑:上昇・増加・延長、→:ほとんど変わらない、↓:低下・減少・短縮

『臨床効果』

左室機能:
心筋収縮力について表しています。

↑の場合は心収縮力を増加します。
逆に↓の場合は心収縮力が低下します。

もともと心機能が低下している患者に対して↓の効果がある薬剤は使用しにくいということになります。

冒頭に記載したように、ベラパミルは心機能低下患者に使用しにくい薬剤ということです。

洞調律:
ベースの心拍数について表しています。

↑の場合はベースの心拍数が増加します。
逆に↓の場合はベースの心拍数が減少します。

ベースの心拍数を下げたい場合は↓の効果がある薬剤を選択するということになります。

心外性:
心臓以外の副作用について表しています。

○の色で頻度を示しています。
白:低度、グレー:中等度、黒:高度

ジゴキシンでは、ジゴキシン中毒の初期症状として、悪心・嘔吐、食欲不振などの消化器症状が出る可能性が高いです。

ジゴキシン中毒についてはコチラの記事参照

また、アミオダロンは副作用が多く、他の薬で不整脈がおさまらないときに使用される薬ですが、心臓以外でも肝機能障害や甲状腺機能障害、間質性肺炎などの重い副作用を起こす可能性がありますので注意が必要です。

『心電図所見』

PR:PR間隔への影響について表しています。↑の場合はPR間隔が延長します。

QRS:QRS幅への影響について表しています。↑の場合はQRS幅が延長します。

JT:JT(≒QT)間隔への影響について表しています。↑の場合はQT間隔が延長します。

 

J波とは、QRS群とSTの接合部であるJ点が0.1mV以上持ち上がる所見を指すようです。(下の図の赤い矢印の部分)

JT≒QTと考えて良さそうです。また、副作用ではJT・RT・STではなく、QT延長という言葉が一般的だと思いますので、ここではQTとしました。

表の矢印はその傾向にあるということなので、この表のとおりにならないこともあると思いますが、抗不整脈薬であれって思ったら、『Sicilian Gambit分類』を参考にしてみてはいかがでしょうか。

また、心電図変化については抗不整脈使用前と使用後の心電図を比較してみてください。

まとめ

  • 抗不整脈薬の作用部位・効果・心電図変化がまとめられているものが『Sicilian Gambit分類』
  • もともと心機能(左室駆出率など)が低下している患者に対して左室機能”↓”の効果がある薬剤は使用しにくい
  • 心電図への影響は『心電図所見』を確認する
  • 抗不整脈薬使用後は、使用前と使用後の心電図を比較する

 

『Sicilian Gambit分類』を覚える必要はありません!!!分からないときに見て確認できればOKです!私も覚えてません!覚えなくてよい、それだけでも抗不整脈薬への苦手意識が和らぐのではないかなと思います。

 

 

 

 

 

 

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