良い薬剤指導記録ってナニ?記録を書くうえで一番重要なこととは?
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突然ですが、良い薬剤指導記録ってなんでしょうか?

 

先日、薬剤師の記録について“とーふ@小児科経営/薬剤師”さんがおもしろいアンケートをとっていました!

記録で読み手が重要と思うのはSOAPのどれか?という質問です。

 

(許可を得て引用させていただきました。とーふさん、ありがとうございます!)

 

良い記録とは、

  • 患者がどんな人か知るためにSが充実していること?
  • 客観的に判断できるOが充実していること?
  • 思考のまとめや情報の評価などAが充実していること?
  • 具体的対応であるPが充実していること?
  • ことこまかに詳しく書いてあること?

さてどうでしょうか?

(結論だけみたい方は目次の一番下の“まとめ”をクリックしてくださいね)

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良い薬剤指導記録ってナニ? 記録を書くうえで一番重要なこととは?

私自身の考えを先に書いておきますね。

良い薬剤指導記録とはなにか?

『第三者が読んだときに要点がすんなりと伝わる』記録が良い記録だと考えています。

つまり伝えるべきことがしっかり『相手に伝わる』ことが一番重要です。

A(評価)に記載されていることが、S(主観的情報)・O(客観的情報)に記載されていなければ、なんで記載されているように評価したのかなと思いますよね。根拠がありません。

逆に、S(主観的情報)・O(客観的情報)に書いてあっても、A(評価)に書いていなければどう考えたのかわかりません。情報からおそらく分かると思いますが、きっとこうだろうと想定させているということはすんなり伝わったことになりません。

つまりこの両方のケースはどちらも不十分です。

また頑張ってたくさん書いても読み手に伝わらなかったら、そもそも不要な情報だったら、記録を残した意味はなく時間のムダということになっちゃいますね。

読み手視点で充実してほしいのはSOAPのどれ?

一応、SOAPについておさらいしておきましょう。

SOAPについておさらい

SOAPとは「Subjective Data (主観的データ)」「Objective Data (客観的データ)」「Assessment (評価)」「Plan (計画)」の頭文字を取った呼び名で、記録の型の1つです。

  • S(subjective):主観的情報
  • O(object):客観的情報
  • A(assessment):評価
  • P(plan):計画

主観的情報「S」は主に患者さんが話したこと

S(subjective)は、患者さん本人が訴えていることにあたり、患者さん本人が訴えている内容から得た「主観的情報」です。「少し息が苦しい」「足がむくんでいる」「寝るとき座った方が楽」など、患者さんの訴えや自覚症状がSにあたります。

患者さんの家族が話したこともSとして記録します。

客観的情報「O」は患者の主観以外の情報

O(objective)は検査・診察・観察などから得られる情報で、「患者さんの訴えたS以外の客観的情報」です。例えば、バイタルサイン(血圧・脈拍・SpO2・体温)や体重、血液検査の結果、内出血の有無や場所などがあります。

記録すべき情報は多岐にわたりますが、全ての情報を記載するのではなく、考えられる問題に関連する情報を取捨選択する必要があります。

アセスメント「A」は思考過程のまとめ

A(assessment)は、SとOの内容から分析・考察した「経緯と評価」にあたります。S、Oから得られた情報に基づいて薬物療法が適切か今後確認していくことなどを考えるため、このアセスメントが薬剤師として最も大事になります。

A(assessment)は、日々の業務でも考えて仕事をすることが必要と言われている部分です。Aは基本的に主観が入ってはいけないため、問題点やテーマを明確にした上で適切な評価を行っていきます。

計画「P」は具体的な内容

P(plan)は、Aの中で問題点や今後も確認していくべき内容について、薬剤師として自分が行うべき具体的対応になります。その内容は患者さんによって変わります。

S、Oに基づいたAをもとに、さらにPでAに基づくプランを立案することで、患者さんへの支援の根拠を明確にすることが可能となるのです。

記録で何を伝えたいのか?

記録で何を相手に伝えたいかというとA(評価)の部分です。P(計画)に至った根拠ですよね。

なぜそのように判断したのか、そしてこれまでの経過や問題点などを把握するための記録です。

あたりまえですが、関わる患者さん全員の情報なんてとても覚えられません。(全員覚えている方がいたらスイマセン。さきに謝っておきます。)

記録とは読んで何をやるべきか把握するためサポートツールであり、さらに振り返ったときに何をしたか証拠となるものです。

例えば1人薬剤師で他の人は普段目にしないから関係ないという話でもありません。

記録とは確認すべきことをしっかり確認したという証明でもあります。記録としてしっかり残しておくことで、何かあったときに自分の身を守るためのものということです。

自分だけが分かる記録を書いても意味がありません。他人に伝わらなければ証明になりませんからね。「確認した」、「確認していない」といったことも記録に残していなければ確認していないと捉えられてしまうこともありますよ。

だからといって何でもかんでも長く書けば良いわけでもありません。詳細な記載はありがたいですが、ダラダラと長い記録は読み手も疲れちゃうと思います。

また時間をかければかけるほど“比例的”に良い記録になるわけではありません。

ポイントを押さえた記録が大事です。指導の際にも相手に必要な情報を取捨選択して分かりやすい言葉で説明していると思いますが、記録を書く際にも情報の取捨選択が必要ということですね!

薬剤指導記録記載例

私自身は病院勤務の薬剤師です。電子カルテを見れるから書けるんだと言われるかもしれませんので、そうでなくても書ける内容で例を記載してみました。(あくまで1例です)

記載例①心房細動

60歳 男性 170cm 70kg
高血圧で内服管理中。
今回心房細動でDOACが処方された。

(当院からの外来処方箋は血清クレアチニン(Cre)が記載されているので例①にはCre値がある想定で記載しています。)

 

症例①の薬剤指導記録案

S)
心房細動って言われた。
家では血圧測っていない。
病院では140/90だった。

O)
#心房細動
#高血圧

リクシアナ®30mg 1T1X朝食後

170cm、70kg、Cre1.2mg/dL(〇〇年△月□日)

A)
CHADS2スコア1点でDOAC開始推奨であり問題なし。
CLCr48.6ml/minとリクシアナ®の投与量も適切。
出血傾向に注意を。症状時の対応について説明。理解いただく。

脳梗塞予防に血圧管理は重要であり、家庭血圧の測定が望ましい。

P)
#血圧管理
#家庭血圧の測定
#副作用確認(出血傾向など)

CHADS2スコア:心房細動による脳梗塞発症リスクを評価するスコア
DOAC:直接作用型経口抗凝固薬
CLCr:クレアチニンクリアランス

 

Creの情報があるだけでも評価できることが増えますよね。身長体重は問診票に記載されているかもしれませんし、なければ本人に確認すれば分かりますよね。

記載例②心不全

心不全で薬剤を定期内服している患者。
過去に目標体重は71kgと言われている。
今回ループ利尿薬が増量になっている。

ループ利尿薬が増量されている…心不全が悪化したのかな?と思いますよね。症状などを確認します。この返答がSになります。

症例②の薬剤指導記録案

S)
体重は1kg増えた。
自覚症状に変わりはない。
空咳ない。
ふらつきない。
家での血圧は120/70くらい。

O)
#心不全
体重72kg(目標体重+1kg)
家庭血圧120/70

処方
・エナラプリル5mg
・フロセミド40mg
・スピロノラクトン25mg
・ビソプロロール2.5mg
 上記1T1X朝食後

フロセミド増量(20→40mg)

A)
心不全予後改善薬:ACEi(+)、MRA(+)、BB(+)、SGLT2i(-)
ACEiで空咳なし。
内服にて血圧は正常域内。
体重増加でループ利尿薬増量。
血圧測定・体重測定の継続を。

P)
#心不全自覚症状の確認
#体重測定
#副作用確認(口渇、脱水など)

ACEi(ACE阻害薬)、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、BB(β遮断薬)、SGLT2i(SGLT2阻害薬)

 

ここでは少ない情報で記録を記載してみましたが、血清クレアチニン値やカリウム値などの血液検査の結果が処方箋に載っている場合や結果を持ってきてくれる方もいますし、血圧手帳を持っている人もいると思うので、情報があればOに記載できますし、Aにその評価を記載することもできます。

もちろん薬だけでなく、患者さんがどのような人なのかとか食事や運動、飲酒、喫煙などの生活習慣の確認内容も記録に書けますよね。

また服薬コンプライアンスなどは、病院では持参した薬剤を確認したり、薬局では残薬調整をしたりすると分かります。どのくらい飲めていないのか?それにより問題点(管理状況の悪化)はあるのか?といった確認・評価ができるはずです。問題点があれば解決するためにはどうしたら良いのか、次回確認事項等がPに記載されるはずですね。

病院では患者さんとの会話内容で得られる情報だけでなく、バイタルサインや血液検査値、心エコー、カテーテル検査などたくさんの情報がありますので、それらの情報をもとに確認すべき事項を確認して記載していきます。

薬局でも病院でも基本的にはやっていることは変わらないと思っています。ただ薬局では客観的情報の情報量が圧倒的に少ないことが多いため、主観的情報を得ようとしてSが充実して欲しいと思うのも分かる気もします。

そういう点も含めて、とーふさんのアンケートではSとAが多かったというのはとてもおもしろい結果だなと思いました。

『良い薬剤指導記録ってナニ?記録を書くうえで一番重要なこととは?』まとめ

  • 良い記録とは第三者が読んだときに要点がすんなり伝わる記録

 

SOAPはあくまで記録の型
  • S(subjective):主観的情報
  • O(object):客観的情報
  • A(assessment):評価
  • P(plan):計画
  • Aで評価する判断の根拠をS・Oに記載する
  • PにはAと評価した結果どうするか具体的計画を記載する

 

  • 読み手に伝わって初めて意味がある
  • ながすぎる記録は読み手が疲れる
  • 記録に残す情報も取捨選択が大事

 

  • 一番重要なことは、伝えるべきことがしっかり『相手に伝わる』こと

 

以上、『良い薬剤指導記録ってナニ?記録を書くうえで一番重要なこととは?』に対する自分の考えでした!

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