Vaughan Williams分類Ⅰc群に分類される抗不整脈薬タンボコール®(フレカイニド)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIF錠は『タンボコール®錠IF, 2015年6月(第12版)』、IF注は『タンボコール®静注IF, 2019年5月(第11版)』のことです。
Contents
タンボコール®(フレカイニド)薬物動態情報
適応
- 錠剤:頻脈性不整脈(発作性心房細動・粗動、心室性)
- 静注:頻脈性不整脈(症候性の発作性心房細動・粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍、及び医師が生命に関わると判定した重症の心室性期外収縮)
用法用量
- 錠剤
タンボコール® 1回50mg 1日2回経口投与(最大1回100mg) - 静注
タンボコール® 1回0.1~0.2mL/kg(フレカイニド酢酸塩として1.0~2.0mg/kg)を必要に応じてブドウ糖液で希釈し、血圧及び心電図監視下10分間かけて静脈内に注射する。総投与量はフレカイニド酢酸塩として1回150mgまで。
上記用法用量は成人にたいしての記載です。錠剤は小児への適応もあります。
バイオアベイラビリティ
- 該当資料なし
(IF錠:P.28より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- 該当資料なし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 475mL/kg(心室性期外収縮患者2.0mg/kg単回静注)
(IF注:P.16より)
体重60kgの場合、Vd=28.5L
Vd(b)≦Vd/(B/P)=28.5/0.5
Vd(b)≦57L
Vd(b)≧50(細胞内分布型)、Vd(b)=20~50(分布中間型)、Vd(b)≦20(細胞外分布型)すべての可能性があるため特徴付けできませんでした。
全身クリアランス(CL)
- 8.1±0.8mL/min/kg(健康成人男子2.0mg/kg単回静注)
(IF注:P.16より)
体重60kgの場合、CL=486ml/min
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 33.3%
健康成人男子にフレカイニド酢酸塩0.5~2.0mg/kgを5分間又は10分間定速静注したとき、投与後72時間までの投与量に対する、未変化体及び主代謝物(脱アルキル体、ラクタム体)の尿中総排泄率(%)は、いずれの投与量においても約50%であった。尿中総排泄量のうち約2/3が未変化体であり、投与量にかかわらず未変化体と主代謝物の比率はほぼ一定であった。(IF注:P.20より)
Ae=50%×2/3=33.3%
Ae=30~70%より腎・肝混合型(中間型)の薬剤といえます。
腎クリアランス(CLR)=CL×Ae=486×0.33=160ml/min
肝クリアランス(CLH)=CL-CLR=326ml/min
抽出比
- 腎抽出比
ER=CLR(ml/min)/(B/P)/QR(ml)=160/0.5/1200
ER=0.27
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
- 肝抽出比
EH=CLH(ml/min)/(B/P)/QH(ml)=326/0.5/1600
EH=0.41
0.3≦EH≦0.7より中間型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 50~60%(健康成人男子1.5~2.0mg/kg単回静注)
(IF注:P.16より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.6=0.4
fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。
半減期
- 8.6~9.3時間
(IF:P.15より)
その他
- 最低有効血漿中濃度:200ng/mL(IF注:P.15より)
- 薬物代謝酵素CYP2D6により代謝される(IF錠:P.30より)
- 主代謝物は2 種(M-1、M-2)存在する。M-1は未変化体の約1/2 の活性(抗不整脈作用)を有するが、M-2には活性がほとんどない。両者とも血液中では大部分抱合体として存在するため、薬効への寄与はない。(IF錠:P.30より)
- 透析除去率:0.97%(IF錠:P.31より)
タンボコール®(フレカイニド)薬物動態情報まとめ
- Vaughan Williams分類:Ⅰc群
- Ae=33%→腎・肝中間型(30<Ae<70)
- ER=0.27→消失能依存型(ER<0.3)
- EH=0.41→中間型(0.3≦EH≦0.7)
- Vd(b)≦57L→特徴づけ不可
- fuP=0.4→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
- バイオアベイラビリティ:該当資料なし
- 半減期:8.6~9.3時間
- 薬物代謝酵素CYP2D6により代謝される
- 最低有効血漿中濃度:200ng/mL
- 透析除去率:0.97%