Vaughan Williams分類Ⅰa群に分類される抗不整脈薬キニジンの薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中の添付文書は『キニジン添付文書, 2022年6月(第1版)』のことです。(古い薬であり記載時点でIFは作成されていないため、添付文書からの情報となります。)
Contents
キニジン薬物動態情報
適応
- 期外収縮(上室性、心室性)
- 発作性頻拍(上室性、心室性)
- 心房細動・心房粗動
- 電気ショック療法との併用及びその後の洞調律の維持
- 急性心筋梗塞時における心室性不整脈の予防
用法用量
1回0.2gを1日3回(6~8時間おき)投与から開始し、効果がない場合は、2日目ごとに1回量を0.4g、0.6gと増量するか、投与回数を1~2日目ごとに4、5、6回と増やす。不整脈除去効果が得られたら、そこで維持量投与に切りかえる。原則として入院下で投与する。
キニジンは教科書的に記載されていますが、私自身実臨床で投与された患者の対応をしたことはありません。
バイオアベイラビリティ
- 約80%(添付文書より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- 該当資料なし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 2.7L/kg(添付文書より)
体重60kgの場合、Vd=162L
Vd(b)≦Vd/(B/P)=162/0.5
Vd(b)≦324
Vd(b)≧50(細胞内分布型)、Vd(b)=20~50(分布中間型)、Vd(b)≦20(細胞外分布型)すべての可能性があるため特徴付けできませんでした。
全身クリアランス(CL)
- 4.7ml/min/kg(添付文書より)
体重60kgの場合、CL=282ml/min
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 約20%(添付文書より)
Ae≦30より肝代謝型の薬剤といえます。
腎クリアランス(CLR)=CL×Ae=282×0.2=56.4ml/min
肝クリアランス(CLH)=CL-CLR=282-56.4=225.6ml/min
抽出比
- 腎抽出比
ER≦CLR(ml/min)/(B/P)/QR(ml)=56.4/0.5/1200
ER≦0.094
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。 - 肝抽出比
EH≦CLH(ml/min)/(B/P)/QH(ml)=225.6/0.5/1600
EH≦0.282
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 90%(添付文書より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.9=0.1
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 約6時間(添付文書より)
その他
- 治療上有効な血中濃度:該当資料なし
- 透析除去率:該当資料なし(タンパク結合率が高く、透析による影響をうけにくいと考えられる)
- CYP3A4で代謝される
- CYP2D6、P-gp阻害作用をもつ
キニジン薬物動態情報まとめ
- Vaughan Williams分類:Ⅰa群
- Ae=20%→肝代謝型(Ae≦30)
- ER≦0.094→消失能依存型(ER<0.3)
- EH≦0.282→消失能依存型(EH<0.3)
- Vd(b)≦324→特徴づけ不可
- fuP=0.1→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- バイオアベイラビリティ:約80%
- 半減期:約6時間
- CYP3A4で代謝される
- CYP2D6阻害作用
- P-糖蛋白の基質薬剤との併用に注意
- 治療上有効な血中濃度:該当資料なし
- 透析除去率:該当資料なし(タンパク結合率が高く、透析による影響をうけにくいと考えられる)