酸化マグネシウムという成分の便秘薬は投与量の調整のしやすさ、価格の安さなどの理由もあり、処方箋医薬品としてだけではなく、市販薬としても使用されています。
よく使用されている薬剤ですが、実は注意が必要な薬剤です。
え?下剤でしょ?と思った方、注意喚起が出ていますよ。
では酸化マグネシウム製剤と高マグネシウム血症について一緒に見ていきましょう。
酸化マグネシウム製剤の「高マグネシウム血症」について
酸化マグネシウム製剤の「高マグネシウム血症」については、2015年10月の「適正使用のお願い」後も「高マグネシウム血症」を発症し、重篤な転帰をたどる症例が報告されています。
そのため、2020年8月にもPMDA(医薬品医療機器総合機構)から再度注意喚起がありました。医療者に注意喚起をしても、高マグネシウム血症の報告があったということです!
- 処方に際しては、必要最小限の使用にとどめること。
- 定期的に血清マグネシウム値を測定するなど高マグネシウム血症の発症に注意すること。 (長期投与あるいは高齢者に投与される場合は特に注意。)
- 高マグネシウム血症の症状があらわれた場合には、服用を中止し、 直ちに医療機関を受診するよう患者さんに指導すること。
血清マグネシウム濃度の正常範囲は1.8~2.6mg/dLで、血清マグネシウム濃度が2.6mg/dLより高い場合に高マグネシウム血症といいます。
高マグネシウム血症の初期症状
もし高マグネシウム血症となっていたとしても初期症状を理解していれば早期に疑って対応することができます。
- 吐き気
- 嘔吐
- 立ちくらみ
- めまい
- 脈が遅くなる
- 皮膚が赤くなる
- 力が入りにくくなる
- 体がだるい
- 傾眠(眠気でぼんやりする、うとうとする)
など
高マグネシウム血症は、軽度では症状はあまりみられません。
つまり自覚症状が認められるということはすでに要注意な状態ということになります。
血清マグネシウムの値が4.9mg/dlを超えてくると、嘔吐や筋脱力、傾眠、徐脈、低血圧などがみられ、QT延長や房室ブロック等の心電図変化を起こす可能性があります。そのまま放っておいてさらに血清マグネシウム値が上昇すると意識混濁 ・消失や呼吸筋麻痺が生じ、心停止に至ってしまうというような最悪の事態になってしまう可能性があります。
これは未然に防ぐことが可能です。血液検査を定期的に確認すればよいのです。
だからといってルーティーンで血清マグネシウムを測定するわけではありません。高マグネシウム血症に注意すべき要因があります。
高マグネシウム血症の注意が必要な方
- 高齢者
- 腎機能が悪い方
- マグネシウム製剤を常用している方
腎機能の低下によりマグネシウムの排泄が低下し、
マグネシウムの摂取量 > マグネシウムの排泄量
となった結果、高マグネシウム血症になってしまいます。
マグネシウム製剤を常用している方で、腎機能が悪い方は特に注意が必要です。
特に腎臓が問題ないと若い時に言われていても高齢になるにつれて腎機能は低下していきますので、高齢者でマグネシウム製剤を常用している場合も注意が必要です。
まとめ
- 酸化マグネシウム製剤(下剤)の定期服用では高マグネシウム血症に注意すること(特に高齢者、腎機能が低下している場合)
実際に長期間服用歴はあるものの、血清マグネシウムの測定結果がない方というのは見かけます。そのような方が入院してきた場合、高齢で腎機能が低下していると、高マグネシウム血症になっていないか血液検査でチェックしてもらうよう提案します。
血液検査の結果、高マグネシウム血症だと分かれば、減量・中止と自覚症状や症状が出る前に対応することが可能ですよね。
もし高マグネシウム血症でなければ、現時点では飲んでも問題ないってなりますし。(リスクの高い方はその後も定期的な検査が望ましいです。)
もし初期症状を認める方が近くにいましたら必ず受診してくださいね!
【参考資料】
このブログが書籍になりました。
『心電図最後の教科書【NEXT STEP】~薬剤性不整脈編~』
ぜひみていただけるとうれしいです。(下のリンクを押しても販売ページにはいきませんので気軽に押してくださいね)