直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)のリクシアナ®(エドキサバン)について薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
また、本記事中のIFの記載は『リクシアナ®IF, 2021年8月改訂(第13版)』のことを示しています。
Contents
リクシアナ®(エドキサバン)薬物動態情報
用法用量
《非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制》
リクシアナ® 1回60mg 1日1回経口投与
体重60kg以下:1回30mg
15≦クレアチニンクリアランス(CLCr)≦50:1回30mg
禁忌:腎不全(CLCr15mL/min未満)の患者
《静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制》
リクシアナ® 1回60mg 1日1回経口投与
体重60kg以下:1回30mg
15≦CLCr≦50:1回30mg
禁忌:腎不全(CLCr15mL/min未満)の患者
《下肢整形外科手術(膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術)施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制》
リクシアナ® 1回30mg 1日1回経口投与
30≦CLCr≦50:1回15mgを検討
禁忌:腎不全(CLCr30mL/min未満)の患者
バイオアベイラビリティ
- 絶対的バイオアベイラビリティ61.8%
(IF:P.108より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- 血球分布率47.4%
(リクシアナ®審査報告書, 2011年2月9日, P.29より)
血漿分布率=1-0.474=0.526
B/P=全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度・(1-Ht)とHt=0.5より
B/P=1/0.526・(1-0.5)=0.95
分布容積(Vd)
- 107L
(IF:P.107より)
Vd(b)=Vd/(B/P)=107/0.95=112.6
Vd(b)≧50より細胞内分布型の薬剤といえます。
全身クリアランス
- 全身クリアランス(CL)21.8L/hr
- 腎クリアランス(CLR)10.7L/hr
(IF:P.107より)
肝クリアランス(CLH)=CL-CLR=21.8-10.7=11.1 L/hr
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 48.6%
エドキサバン30mg を単回静脈内投与したとき、72 時間後までの累積尿中排泄率は48.6%
(IF:P.111より)
半減期10~14時間ですから、14×5=70と、
半減期の5倍よりも長い時間のデータで確認しているのでこのデータを活用して良いということになります。
また、念のため全身クリアランスと腎クリアランスから計算すると49%となります。
Ae=CLR/CL=10.7/21.8=0.49
検算でもあっていることが分かりますね。
30≦Ae≦70より腎・肝中間型の薬剤といえます。
抽出比
- ER=CLR/(B/P)/QR=10.7/0.95/1200=0.009
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。 - EH=CLH/(B/P)/QH=11.1/0.95/1600=0.007
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
エドキサバン:54.3~56.6%
活性代謝物M-4:80.0~81.9%
(IF:P.110より)
下記より、ここでは活性代謝物については考慮しないこととします。
・エドキサバンと活性代謝物M-4の抗凝固作用は同程度
・尿中及び糞中での総放射活性は主にエドキサバン未変化体
・血漿中にも主にエドキサバンとして存在
(IF:P.111より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.55=0.45
タンパク結合率は中間値として55%を用いました。
- fuP=0.45
fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。
半減期
- 10~14 時間
(IF:P.102より)
その他
- P-糖蛋白の基質
- CYP3A4による代謝(寄与率10%未満)
(IF:P110より)
リクシアナ®(エドキサバン)薬物動態情報まとめ
- Ae=48.6%→腎・肝中間型(30≦Ae≦70)
- ER=0.009→消失能依存型(ER<0.3)
- EH=0.007→消失能依存型(EH<0.3)
- Vd(b)=112.6→細胞内分布型(Vd(b)≧50)
- fuP=0.45→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
- バイオアベイラビリティ:61.8%
- 半減期:10~14時間
- P-糖蛋白阻害作用を持つ薬剤との併用に注意