原著論文の定義って何だろう?レビューって何だろう?
ランダム化比較試験?前向きコホート?後ろ向きコホート?システマティックレビュー?メタ解析?違いって何だろう?
英語力がなくても論文は読めるってホント?
論文を読む前に知っておいたほうが良いと考える内容について記載していきます。
Contents
論文の種類
一言で論文と言っても、実は色々な種類があります。
ここでは、薬物療法に関する文献を読むうえで押さえておきたい原著論文と総説について記載します。
医中誌データベースにおいては、各文献は「原著論文」「会議録」「座談会」「図説」「講義」「解説」「総説」「一般」「Q&A」「レター」「症例検討会」「コメント」のいずれかの論文種類に分類されています。
原著論文(article)とは
基本的に論文といえば、「原著論文」を指します。
- 学術雑誌に掲載されている
- 著者のオリジナリティがある(新規性がある)
- 著者がその研究成果の所有権を持っている(盗作ではない、二重投稿していない)
- 原則的に未発表である
などの各学術雑誌の投稿規定に則って掲載される論文のこと
一番大事なのは「オリジナル」(新規性がある)な論文であることです。
他にも、
- 取り扱う問題が原則的に1つである(主要評価項目の設定)
- 目的と結果が明確である(目的と結果が一致している)
- 結論を導くための調査・実験が行われている
- 方法が客観的に論じられている
- 考察や残された課題にも言及されている
- 実験の再現性がある(他の人が同じ実験をしても同じ結果が得られる)
- 厳格な査読システムを経る(第三者の専門家が間違っていないか、雑誌に掲載して良いか査定する)
このような厳しい審査を受けて、出せるのが原著論文です。
私も一度は経験と思って投稿しましたが、却下されたり、受理されるまで大変な思いをしました。(辛かったですが良い経験ではありました。)
何本も論文投稿している方々はスゴイと思います。
掲載されるまで大変な苦労があるので、原著論文が出るということは、その分野の有識者によって成果が認められたということになります。
総説(review)とは
- 特定の分野やテーマに関する先行研究を集めて、体系立ててまとめた論文
- その分野の概説や研究動向、今後の展望を示すことが目的
- 新しい事実や成果の発表ではない(オリジナリティはない)
- その分野全体の概要を知ることができる
- その分野の研究を始める上で読むべき論文である
- その分野で一般的に使われている手法の有効性の確認にもなる
- 何がわかっていて、何がわかっていないかの指標になる
その中で気になる文献があれば引用している原著論文を読んでみると良いでしょう。
論文の試験デザイン
試験デザインもたくさんあります。
ここでは、薬物療法に関する文献を読むうえで押さえておきたいランダム化比較試験とコホート研究、システマティックレビュー・メタ解析について記載します。
ランダム化比較試験(RCT:randomised controlled trial)
例えば『A薬あり』のグループと『A薬なし』のグループにランダムに分けて心血管イベントの発生率を比較する研究がランダム化比較試験です。(A薬が介入という扱い)
ランダム化比較試験では、患者も医師も振り分けられるグループを選ぶことはできないため、客観的に治療効果を評価することができます。
この客観的というのがポイントです。
治療効果が得られそうな患者ばかりを医師が『A薬あり』のグループに入れていたら、公平ではないですよね。
コホート研究(cohort study)
システマティックレビュー(systematic review)とメタ解析(meta-analysis)
似ていてわかりにくいですよね。
システマティックレビューは論文を体系的にもれなく検索することであり、メタ解析はその集めたものを統合して解析することです。
論文を料理の具材に例えると、料理の具材を集めてくる方法が指定されているものがシステマティックレビューで、集めてきた具材をメタ解析という方法で料理しなさいといったイメージです。
なので『A Systematic Review and Meta-Analysis』と記載されている論文は、システマティックレビューで論文を集めて、メタ解析という方法でまとめたということになります。
英語力がなくても論文は読める
薬物療法に関する論文を読むにあたっては正直「英語力はほぼ必要ない」といってよいと思います。
求められているのは「論文での表現、医学英語・用語に慣れているかどうか?」です。
え?っと思う方もいると思いますが、これは本当です。
なぜなら、わたし自身が英語がニガテだったから、英語ができないと読めないと思っていたからです。
でも違いました。
慣れです。
なので、才能とか語学センスとかは一切必要ありません。
読み続けていればある程度読めるようになります。
もう一度言います。薬物療法に関する論文を読むのは慣れです。(これは医学系の論文全般に当てはまると思います。)
ただ最初は時間がかかると思います。
なぜなら知らない単語ばかりで調べながら読むからです。
それにその日の仕事が終わってから読むことが多いと思いますから、日をまたいで読む可能性が高く、途中まで読んで、最初の方の内容を忘れてしまって何度も読み返しながら・・・という「行きつ戻りつ」な読み方になる可能性があるからです。
私は仕事後に家で読みながら寝てしまうこともありました。
何度も用語を調べながら読んでいると、時間はかかりますがだんだんとスムーズに読むことが出来るようになってくると思いますよ。
最初は特にしんどいですが、頑張って読んでいきましょう。
Google 翻訳やDeepL 翻訳などで分からない部分を調べながらやると良いと思います。
私自身も自分の翻訳とあっているかの確認や分からない単語をコピペして調べるために使うことが多いです。
ただ、全文翻訳後の訳しか見ていない場合、“論文に慣れる”ことはできませんのでオススメしません。
最初は大変でも分からない単語を1つ1つ調べることをオススメします。
また、RCTやコホート研究などは“ココを押さえれば論文の内容を掴む・評価することができる”など重要なポイントがあります。
最初に努力して単語を調べて、その後論文を評価するポイントを理解すれば論文の内容を把握するスピードも速くなりますよ!(論文を評価するポイントは今後の記事で記載予定です。)
まとめ
- 論文の種類や試験デザインについて重要なものをまず理解しましょう。
- 医療英語論文を読むのに英語力は必要ありません。
医療英語論文が読めるようになるには専門用語や表現に慣れるかことが大事です。
つまり『読む』か『読まないか』です。
読めるようになるには読むしか近道はありません。