強心薬であるジゴシン®(ジゴキシン)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中の錠IFは『ジゴシン®錠IF, 2018年5月(第14版)』、注IFは『ジゴシン®注IF, 2018年5月(第12版)』のことです。
Contents
ジゴシン®(ジゴキシン)薬物動態情報
適応
- うっ血性心不全
- 心房細動・粗動による頻脈
- 発作性上室性頻拍
用法用量
- ジゴシン®錠 1回0.125~0.25mg 1日1回経口投与
- ジゴシン®注 1回0.125~0.25mg
バイオアベイラビリティ
- 74.6%(錠IF:P.16より)
錠剤と点滴の同等量は
錠剤A mg×0.75≒注射B mg
となります。
つまり、同等量で切り替える場合は下記のようになります。
注射薬→内服薬の切り替え:約1.33倍
内服薬→注射薬の切り替え:約0.75倍
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
該当資料なし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 8 L/kg(注IF:P.11より)
体重60kgの場合、Vd=8×60=480L
Vd(b)=Vd/(B/P)=480/0.5
Vd(b)=960L
※腎機能の低下に伴いジゴキシンの分布容積は小さくなり、末期腎障害患者でも4~5 L/kgと大きく、血液浄化法でも効率よく除去することはできない
Vd(b)≧50より細胞内分布型の薬剤といえます。
全身クリアランス(CL)
- 総クリアランス(CL):223 ml/min/1.73m2
- 腎クリアランス(CLR):150 ml/min/1.73m2
(注IF:P.11より)
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 一般的にジゴキシンは極性が大きく、吸収されたジゴキシンの60~70%は未変化体とし腎より体外へ排泄される。(注IF:P.15より)
- 一般的には、吸収されたジゴキシンは大部分がそのままの形で排泄され、20 30 %が主に肝臓で代謝されるといわれている。(注IF:P.13より)
またクリアランスよりAeを算出してみます。
Ae=CLR/CL
Ae=150/223=0.67
Aeよりほぼ腎排泄型の薬剤といえます。
肝クリアランス(CLH)=CL-CLR=223-150=73 ml/min/1.73m2
抽出比
- 腎抽出比
ER=CLR(ml/min)/(B/P)/QR(ml)=150/0.5/1200
ER≦0.25
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
- 肝抽出比
EH=CLH(ml/min)/(B/P)/QH(ml)=73/0.5/1600
EH<0.09125
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 25%
一般的には、アルブミン結合率は25 %であるが他の組織蛋白、特に心筋への結合が高いといわれている。(注IF:P.11より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.25=0.75
fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。
半減期
- 35~48時間(成人)
(注IF:P.10より)
その他
- 有効血中濃度:0.5~0.8ng/mL(心不全)1)
- 透析除去率:3%未満(注IF:P.15より)
- 主な代謝酵素は肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A が考えられている(注IF:P.14より)
- P 糖蛋白質の基質である(注IF:P.18より)
ジゴシン®(ジゴキシン)薬物動態情報まとめ
- 腎排泄型(Ae=60~70%)
- 細胞内分布型(Vd=8L/kg)
- fuP=0.75→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
- バイオアベイラビリティ:0.746%
- 半減期:35~48時間
- P-糖蛋白阻害作用を持つ薬剤との併用に注意