ワーファリン®(ワルファリン)薬物動態情報
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ワーファリン®(ワルファリン)は長年にわたり、血栓症や塞栓症の治療薬として、標準的に用いられてきた抗凝固薬です。そして、ビタミンK拮抗薬(vitamin K antagonist:VKA)であり、食事や薬剤等の影響を受けやすい薬剤ということもご存じだと思います。

そんなワーファリン®(ワルファリン)の薬物動態情報について一緒に見ていきましょう。

 

各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。

 

この記事中のIFは『ワーファリン®IF, 2020年1月(第24版)』をさしています。

 

また、トロンビンやXa因子を選択的に阻害し食事等の影響を受けにくい直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)についてはコチラの記事をご参照ください。

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ワーファリン®(ワルファリン)薬物動態情報

用法用量

ワーファリン® 1日1回経口投与 INRにて用量調節

ワルファリンの効果モニタリングにはPT-INR(international normalized ratio:国際標準比)といった国際的に統一された指標を用います。

プロトロンビン時間(prothrombin time : PT)はクエン酸加静脈血漿にカルシウムと組織トロンボプラスチンを加え、フィブリンが析出するまでの時間を測定する凝固反応の外因系と共通系の凝固異常を調べる検査ですが、使用する試薬・機器により結果に違いが出てしまうためです。

INR治療域
  • 通常:2.0~3.0
  • 70歳以上:1.6~2.6

INRが3.0以上では出血が起こりやすい状態になるためワーファリンの減量が必要です。(INR4.5以上ではワーファリンの中止とビタミンK製剤の投与といった対応が必要になります。)

逆にINRが1.6未満では、ワーファリンの抗凝固効果は十分に得られていません。(つまり脳梗塞等の予防効果は得られていないということ。)そのため、ワーファリンの増量が必要です。

定期的な採血検査でINRの測定を実施し、INRが治療域にコントロールできるようにワーファリンの投与量を調整します。

バイオアベイラビリティ

  • ほぼ100%
    (IF:P.28より)

全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)

データなし

B/Pが得られていないためB/P0.5を代用します。

分布容積(Vd)

  • 0.14L/kg(S体、R体)
    (IF:P.28より)

体重60kgの場合、0.14×60=8.4Lとなります。

ワルファリンは光学異性体であるS-ワルファリン(薬理活性が高い)とR-ワルファリンが当量の割合で含有されています。(S体とR体ともに記載しますが特徴づけはS体で行います。)

Vd(b)<8.4/0.5=16.8

Vd(b)<20より細胞外分布型の薬剤といえます。

全身クリアランス

  • 0.067mL/kg/min

S-ワルファリン:4.0 mL/kg/hr
R-ワルファリン:2.6 mL/kg/hr
(IF:P.28より)

体重60kgの場合
S-ワルファリン:4.0 mL/kg/hr=0.067mL/kg/min

0.067×60=4mL/min

尿中未変化体排泄率(Ae)

  • ほとんどない
    (IF:P.31より)

Ae≦30より肝代謝型の薬剤といえます。

抽出比

EH<CLH/(B/P)/QH=4.0/0.5/1600=0.005
(AeほとんどないことよりCL≒CLHとしました。)

EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。

タンパク結合率

  • 90~99%
    (IF:P.29より)

タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。

血漿中遊離形率(fuP)=1-0.9=0.1

fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。

半減期

  • 55~133 hr
    (IF:P.26より)

その他

  • CYP2C9代謝(+)→CYP2C9阻害作用を持つ薬剤との併用に注意
  • ビタミンK含有物との併用はワルファリンの効果を減弱させるため注意が必要。

特に納豆・青汁・クロレラは摂取禁となっています。

  • ペニシリン系、セフェム系、テトラサイクリン系などの抗菌薬によりワルファリンの作用が増強するため注意が必要。

なぜ抗菌薬でワルファリンの作用が増強するのか。

それは腸内細菌が減少しビタミンKの産生が抑制されるためです。

 

腸の中には腸内細菌がいます。そして、この腸内細菌によりビタミンKが産生されます。

抗菌薬を投与することで腸内細菌が死滅します。

腸内細菌が死滅してしまったら、ビタミンKの産生が抑制されます。

このような理由でワルファリンの作用が増強します。

 

抗菌薬が開始となるケースは感染症のほうに意識が向いて、ワルファリンの作用増強リスクについて見逃されることが多い印象です。

抗菌薬開始時にワルファリンを内服していたら医師に注意喚起しフォローを強化してもらいましょう。

ワーファリン®(ワルファリン)薬物動態情報まとめ

INR治療域
  • 通常:2.0~3.0
  • 70歳以上:1.6~2.6
ワーファリン®(ワルファリン)の特徴
  • 肝代謝型(Ae<30)
  • 消失能依存型(EH<0.3)
  • 細胞外分布型(Vd(b)<20)
  • タンパク結合依存型(fuP<0.2)
  • バイオアベイラビリティ:ほぼ100%
  • 半減期:55~113時間
  • ビタミンK含有物との併用注意、特に納豆・青汁・クロレラは禁忌→ワルファリン作用減弱
  • CYP2C9阻害作用を持つ薬剤に影響を受ける
  • 抗生剤の使用による腸内細菌の減少(ビタミンK産生抑制)→ワルファリン作用増強

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