論文を批判的吟味で読む際には結果が臨床的に意味があるかどうかと結果を客観的に評価することが重要です。臨床的に意味があるとはどういうことか、また客観的に評価する上でどのような結果(エンドポイント)が良いのかについて記載していきたいと思います。
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結果を批判的吟味するうえで知っておきたいエンドポイント
結果を批判的吟味するうえでは臨床的に意味があるか、客観的かどうかを確認することが重要です。
論文で設定したPrimary endpoint (主要評価項目)が真のエンドポイントが臨床的に意味があるかどうかです。
Primary endpoint (主要評価項目)って?真のエンドポイントって?
ではエンドポイントで知っておきたい各用語についてみていきましょう。
Primary endpoint (主要評価項目)とSecondary endpoint (副次評価項目)
まずエンドポイントにはPrimary endpoint (主要評価項目)とSecondary endpoint (副次評価項目)があります。
- Primary endpoint (主要評価項目):臨床上意味のある効果を反映し、試験の主要な目的に基づいて選択される。
- Secondary endpoint (副次評価項目):補完的、補足的なもの。
論文で一番重要な結果がPrimary endpoint (主要評価項目)です。
臨床上意味のある効果を反映し、試験の主要な目的に基づいて選択されます。臨床上意味のあるとは真のエンドポイントの部分で説明いたします。
Secondary endpoint (副次評価項目)はPrimary endpoint (主要評価項目)を補完、補足するものです。
Secondary endpoint (副次評価項目)でどんなに良い結果が得られたとしても良い結果だと強く言うことはできません。良い結果となる可能性があるという風にとらえます。
なぜ良い結果と強く言えないのか。論文のサンプルサイズはPrimary endpoint (主要評価項目)を求めるうえで事前に計算されたものです。Secondary endpoint (副次評価項目)のサンプルサイズと異なる可能性があります。
また、一般的にはP<0.05と論文で設定されますが、これは5%未満の確率で得られた結果と異なる結果になる可能性があるということです。5%というのは20回に1回は間違えてしまうということです。統計検定を繰り返し行うと、その分間違えてしまう確率は上がってしまいますし、繰り返すことによって良い結果が出てしまう可能性もあります。統計検定の1回はPrimary endpoint (主要評価項目)ですから、Secondary endpoint (副次評価項目)の項目は統計検定を複数回繰り返していることになります。
Secondary endpoint (副次評価項目)は〇〇という傾向にあるというあくまで参考の結果なのです。
もし、ある論文でSecondary endpoint (副次評価項目)の結果を効果があったと言いたいのであれば、その結果をPrimary endpoint (主要評価項目)と事前に設定した研究を行う必要があります。
Primary endpoint 、Secondary endpoint と英語で記載していますが、それには理由があります。
実際の論文でもこのように記載されていることがほとんどなので、論文でこの記載を見つけたらその付近に何がPrimary endpoint 、Secondary endpointなのか記載されているはずです。
評価指標のタイプ
- 客観的:「死亡」「血液検査所見」「転倒」など
- 中間的:「疾病発症」「画像所見」「機能スコア」など
- 主観的:「○○入院」「全般改善度」「機能評価」など
客観的な指標か主観的な指標か、その中間の指標かによって分けられます。
客観的な指標は誰がどう見ても同じ判断をする評価指標です。
「死亡」は誰がどうみても「死亡」ですよね。
それに対し主観的な指標とは評価する人によって判断が変わる可能性がある評価指標です。
「心不全入院」は担当する医師によって入院させるか、入院しないかの判断が変わる可能性がありますよね。
真のエンドポイントと代替エンドポイント
- 真のエンドポイント:死亡率の低下、罹患率の低下、副作用の低減、QOLの向上、対費用効果の改善など
- 代替エンドポイント:血圧、血糖値、腫瘍サイズなど
真のアウトカム、代用のアウトカムとも言われます。
代替エンドポイントは目に見えやすい結果で真のエンドポイントは目に見えにくい本質をとらえた結果です。
真のエンドポイントは死亡率の低下、罹患率の低下、副作用の低減、QOLの向上、対費用効果の改善など本来求めたいものをさします。
代替エンドポイントは血圧、血糖値、腫瘍サイズなど短期間で評価できるものをさします。本当は真のエンドポイントを求めたいのですが、試験期間などなんらかの問題で難しい場合に代替エンドポイントが用いられます。
血圧や血糖値が下がったり、腫瘍サイズが小さくなることは良いことですが、それがイコール死亡率の低下や副作用の低減、QOLの向上にはつながらない可能性があります。
もし血圧はスゴイよく下げるけど死亡率が上がってしまったとか、腫瘍サイズは小さくなったけど死亡率は変わらずに副作用が増えてQOLが悪化してしまったとかとなると実施した治療は本当に良かったのかとなりますよね。
真のエンドポイントではないか代替エンドポイントだから必ずしも臨床的に意味がないということではありませんが、その論文だけでは臨床的に意味があるかどうかは分かりませんよね。
その点、真のエンドポイントであれば臨床的に意味があるかどうかは判断しやすいです。
臨床に活用する情報を得るためにまずは真のエンドポイントを求めた論文を読みましょう。
まとめ
- 論文の結果にはPrimary endpoint (主要評価項目)とSecondary endpoint (副次評価項目)がある
- エンドポイントの評価指標には客観的、主観的、その中間的なものがある
- 臨床的に意味があるかを見分けるために真のエンドポイント、代替エンドポイントがある
論文の結果についての批判的吟味ではPrimary endpoint (主要評価項目)が真のエンドポイントで臨床的に意味があるかを確認しよう!