薬はいつまで体内に残っていると思いますか?
想像してみましょう!
薬により、副作用があったとします。
医師に状況を伝え薬が中止になりました。もう安心でしょうか。
薬が中止になった場合、中止した薬のことはもう考える必要はありませんか?
いえ、まだ薬は体内に残っています。
もし副作用で不整脈が起こる場合、薬の効果が残っている間は不整脈を起こす可能性があるため注意が必要です。
では、いつまで薬の効果は残っているのでしょうか。
理論的に95%以上の薬剤が体外に排泄されていると考えられる時間とはどのくらいか、この考え方は、看護師さんやその他いろんな人に知ってほしいと思います。
不整脈を例にすると、不整脈の原因が薬だった場合、薬を中止後、特に注意しなければならない期間の目安が分かるからです。
ちなみに薬によっては半年以上も体内に薬の成分が残っているものもあるんですよ!
考え方
答えを先に言います。
半減期×5倍以上の時間が経つまでは、薬が体内に残っていると考えてください。
半減期という言葉が出てきましたが聞いたことはありますか。
半減期とはある時点から薬の血中濃度が半分になるまでの時間のことを言います。
1×半減期:100%⇒半減期⇒50%(50%が体内から消失)
2×半減期:50%⇒半減期⇒25%(75%が体内から消失)
3×半減期:25%⇒半減期⇒12.5%(87.5%が体内から消失)
4×半減期:12.5%⇒半減期⇒6.25%(93.75%が体内から消失)
5×半減期:6.25%⇒半減期⇒3.125%(96.875%が体内から消失)
6×半減期:3.125%⇒半減期⇒・・・と続きます。
薬を中止後、5×半減期以上の時間が経過すると理論的には95%以上の薬剤は体外に排泄されていると考えられます。
もちろん半減期は平均的な値なので大体そのくらいの時間以上とざっくりとらえる必要はあります。
ただ、5×半減期以内では薬剤はまだ体内に残っているため、薬による影響は完全には否定できないということになります。
また、腎排泄型の薬剤は腎機能が低下している場合は、半減期は長くなると考えられますし、同様に肝代謝型の薬剤は肝機能が低下している場合は、半減期が長くなると考えられます。
半減期が長くなるということはそれだけ、薬が体内に残っているということです。
イメージ
5×半減期のイメージ(内服薬)を描いてみました。
図を内服薬と記載しているのは、内服薬は基本的に薬がしっかりと安定して効く濃度(定常状態といいます)となるまでに、基本的には同じように時間がかかるからです。
これに対し、注射薬(静脈投与)は直接血液内に入るため、血中濃度は100%となります。
なので、内服薬ではどのくらいでしっかり薬の効果が得られるかを考えるときは半減期×5以上経てば効いているはずと考えます。(もちろん内服薬、注射薬ともに例外はあります。)
例えば、分かりやすく半減期24時間(1日)の薬剤で不整脈があったとします。
その場合は24×5=120時間=5日間経ってやっと薬剤の95%以上が体外に排泄されたと考えます。(90%以上が体外に排泄される半減期×4でも薬はほとんど体内からなくなったと考えることもできますが、ここでは、薬の可能性をできるだけ除外したいので半減期×5としました。)
イメージはつかめましたか?
ずっと飲んでいた薬をやめた場合、
薬をやめてから、半減期×5倍以上の時間が経つまでは薬が体内に残っていると考えます。
また、半減期は薬によって変わります。
なので、薬ごとに、体内から薬がなくなる時間は変わります。
すべての薬の半減期等の情報を覚えることは難しいので、薬剤師に聞くと良いでしょう。
半減期さえ分かれば、あとは”×5”をするだけです。
冒頭の半年以上も薬の効果が残っている薬について1例を上げたいと思います。
アミオダロンという抗不整脈薬は半減期19~53日と極めて長い薬剤です。
53×5=265日と、理論的には中止後265日間は薬の成分が血液や脂肪に存在する可能性があるということになります。
まとめ
薬をやめてからも薬の半減期×5以内の時間は体内に薬が残っていると考えましょう。
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