心不全薬物療法をイメージしよう~前負荷・後負荷、循環動態~
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心不全の薬物療法に用いられる薬の作用は、血圧・体重・尿量などの指標で効果が分かりやすい目に見える作用と、心臓を護る・心臓の負担を減らすなど予後を改善するような効果が分かりにくい目に見えにくい作用があります。個々の薬剤の目的を知りましょう。

また、心不全の薬物療法では、前負荷・後負荷という言葉も、目に見えないため分かりにくく心不全の薬物療法がニガテと感じる一因だと思います。

循環動態でも薬剤選択が変わってきますので、患者の状態も重要です。

薬から、前負荷・後負荷から、血行動態から、いろんな角度で心不全薬物療法を捉えることができます。

この記事で心不全薬物療法の目に見えにくい・分かりにくい部分を理解し心不全薬物療法をイメージしてみましょう。

 

まず、薬物療法が確立しているHFrEFの基本治療薬はACE-IまたはARBβ1受容体遮断薬、MRAとなります。(HFpEFについてはまだ明確なものがありません。)

無症状(NYHA分類Ⅰ度)でも禁忌がない限りACE-I(忍容性がなければARB)とβ1受容体遮断薬は全例で投与されるべき薬剤です。

MRAについても基本的にはNYHA分類Ⅱ度以上では禁忌がない限り全例で投与されるべき薬剤です。(NYHA分類Ⅰ度で使用されないというわけではありません。)

また、NYHA分類Ⅱ度以上では基本治療薬に加え、うっ血があれば利尿薬を追加したり、必要に応じてACE-IまたはARBからARNIへの変更や、SGLT-2阻害薬やHCNチャネル阻害薬が追加されたり、心拍出量低下があれば強心薬を追加したりします。

患者さんの状態により、選択される薬剤が変わります。

HFrEF・HFpEF、NYHA分類についてはコチラの記事をご覧ください。

個々の薬剤については下記記事をご覧ください。

ここでは心不全薬物療法のイメージを理解していきましょう。

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心不全の薬物療法をざっくりとイメージしよう

心不全と薬物療法はざっくり言うと、重い荷物を運ぶ状態をイメージしてください。

心不全は、たくさんの荷物を頑張って運んで疲れている状態です。

運ぶ荷物を減らして疲れないようにしようというのが、利尿薬(利尿作用を持つSGLT-2阻害薬含む)、ACE-IARB・硝酸薬などの血管拡張薬です。

荷物とは、身体活動や血圧(に関するホルモン含む)や水分や塩分、体重などです。

利尿薬で体内の水分を減らしたり、水分量が減った結果体重が減ったり、ACE-IARB・血管拡張薬で血圧を下げたりすることで荷物が減ります。

それに対し、荷物をゆっくりと運ぶことで、疲れないようにしようというのが、脈拍をゆっくりさせる作用をもつβ1受容体遮断薬HCNチャネル阻害薬です。

また、頑張って疲れている状態に対し、ドーピングをして(ムチをうって)頑張ってもらおうというのが強心薬です。

心不全と薬物療法のイメージです。

心不全薬物療法イメージ

ここでは薬のことを記載していますが、薬以外でも、労作を減らしたり、塩分制限をしたり、肥満を改善することでも荷物を減らすことができます。

心不全治療では薬をしっかり飲むことも大事ですが、生活習慣の改善が大事ということですね。

前負荷・後負荷から心不全の薬物療法をイメージしよう

下図を心不全の状態とします。

心不全、前負荷、後負荷

心房・心室前後の血管が血液パンパンで圧がかかっている状態というイメージです。

心房・心室の前で血管パンパンの状態が前負荷、後ろで血管パンパンの状態が後負荷です。

この状態が続くと、心不全の症状が出現している・出現する可能性があるため、薬物療法を行います。

前負荷・後負荷に対して、心不全の薬を使う目的は大きく分けて、3つあります。

薬物療法の目的
① 血管を拡張し、前負荷・後負荷(血管パンパンの状態)を改善する。
② うっ血を取り除き、前負荷(血管パンパンの状態)を改善する。
③ 心拍出量を上げて、後負荷以上の力で血液を送る。(言い換えると、『全身に送る血液量(供給酸素量)』を『必要とする血液量(必要酸素量)』よりも大きい状態にするということ。)

では前負荷・後負荷について具体的にみていきましょう。

前負荷とは

前負荷とは、静脈(容量血管)の緊張、つまり箱(心房・心室)の容量オーバーでその手前の血管で水があふれている状態です。

心不全、前負荷イメージ

前負荷を軽減するためには、あふれた水を取り除いてあげる(利尿薬)or入る容量を増やしてあげる(血管拡張薬)必要があります。

薬物療法と前負荷の改善

後負荷とは

後負荷とは、動脈(抵抗血管)の緊張、つまり箱(心房・心室)から外へ出すための抵抗が強い状態です。

後負荷を軽減するためには、通り道を広げて(血管拡張薬)、抵抗を減らしてあげる必要があります。

薬物療法と後負荷の改善

また、後負荷の改善とは関係ないですが、無理やり押し出す作用が強心薬になります。

心不全、強心薬

循環動態から心不全の薬物療法をイメージしよう

心不全薬物療法と循環動態

似た図にフォレスター分類とノーリア・スティーブンソン分類があります。
(分類についてはコチラの記事参照

フォレスター分類、ノーリア・スティーブンソン分類

心不全の状態(うっ血と低灌流の組み合わせ)により、おおよその薬物療法がイメージできるというわけです。

 

うっ血(ー)・低灌流(ー):
状態が安定しています。安静(心不全症状が出ない程度)に過ごすことができれば、現在使用している薬で心不全のコントロールはうまくいっているということです。β受容体遮断薬を内服してなければ、内服導入が望ましいでしょう。

うっ血(+)・低灌流(ー):
うっ血がある状態ですので、それを取り除く必要があります。利尿薬や血管拡張薬を使用します。

うっ血(ー)・低灌流(+):
末梢循環が悪い状態ですので、末梢まで血液を循環させるように心臓の収縮力を増加させる強心薬を使用するか、血管内水分量が足りないために末梢循環が悪いのであれば補液を投与します。

うっ血(+)・低灌流(+):
うっ血もあり、末梢循環も悪い状態です。うっ血を取り除くために利尿薬・血管拡張薬を、末梢まで血液を循環させるように強心薬を使用します。補液はうっ血があるため、悪化させてしまいます。また、薬物療法で改善がなければ、大動脈バルーンパンピング法(IABP)や経皮的心肺補助法(PCPS)といった機械的補助循環の検討が必要かもしれません。

まとめ

①ざっくりとした心不全と薬物療法のイメージを理解しよう。

心不全薬物療法イメージ

②前負荷・後負荷に対する薬物療法のイメージを理解しよう。

血管拡張薬作用:血管を拡張し、前負荷・後負荷(血管パンパンの状態)を改善する。
利尿作用:うっ血を取り除き、前負荷(血管パンパンの状態)を改善する。
強心作用:心拍出量を上げて、後負荷以上の力で血液を送る。

前負荷に影響を与える薬剤
薬物療法と前負荷の改善
後負荷に影響を与える薬剤
血管拡張薬、強心薬

③循環動態から薬物療法のイメージを理解しよう。

心不全薬物療法と循環動態

 

 

 

 

 

 

 

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