WPW症候群でワソラン®が禁忌になることがあるって知っていましたか?
知っているか、知らないかだけなので、もし知らなくても問題ありません。この記事を読んで理解しちゃいましょう。何でだっけと思ったら、またこの記事を見返せばOKです。
WPW症候群でワソラン®が禁忌になるときはどんなとき?なぜ禁忌になる?について一緒にみていきましょう。
WPW症候群ではワソラン®が禁忌になる?
WPW症候群ではワソラン®が禁忌になることがあります。
ワソラン®と記載しましたが、ワソラン®(ベラパミル)だけでなくヘルベッサー®(ジルチアゼム)やβ1遮断薬、ジゴキシンといった薬剤も禁忌になります。これらの薬剤は頻脈性不整脈のときに投与されやすい薬剤なので注意が必要です。
とはいえWPW症候群=これらの薬が禁忌となるわけではありません。
『WPW症候群≠ワソラン®禁忌』です。
WPW症候群にワソラン®投与が禁忌となるのはWPW症候群に心房細動を伴った場合です。
『WPW症候群+心房細動=ワソラン®禁忌』です。
なぜ心房細動を伴うとワソラン®が禁忌になるのでしょうか。
WPW症候群とは
まずWPW症候群とはどういった不整脈かみていきましょう。
WPW症候群とは、上室性(心房で発生する)の頻脈性不整脈のひとつです。
WPWはウォルフ・パーキンソン・ホワイト(Wolff-Parkinson-White)の略で、症例を報告した3人の医師たちの名前に由来しています。
WPW症候群では正常な刺激伝導系である房室結節以外に心房と心室の間をつなぐ余計な伝導路(副伝導路)が存在しています。
通常は洞結節→房室結節→ヒス束→プルキンエ線維というように心房から心室へ電気信号が流れます。
WPW症候群では心房から心室へ流れた電気信号が副伝導路を通って心室から心房に戻ってきてしまいます。(逆行性)
戻ってきた電気信号がまた房室結節を刺激してくるくるくるくると電気信号が回ってしまいます。そのため脈が速くなるのです。
WPW症候群に心房細動を伴うとなぜワソラン®が禁忌になる?
ではWPW症候群に心房細動を伴うとなぜワソラン®が禁忌になるのでしょうか。
それは心室細動を引き起こすリスクがあるからです。
ワソラン®やヘルベッサー®といったカルシウム拮抗薬や、β1遮断薬、ジゴキシンといった薬剤は、心室細動を起こすリスクがありますので禁忌になります。
ではなぜ心室細動を起こすのでしょうか?
これらの薬の共通点とは、全て房室結節に作用する薬剤ということです。
まず、WPW症候群では洞結節→房室結節と電気信号が流れていくルート(通常ルート)と副伝導路を通って電気信号が伝わっていくルートがあると記載しました。
電気信号が洞結節→房室結節と通常ルートを通っていった場合は通常の電気信号の流れになりますので、心室細動にはなりません。
しかしカルシウム拮抗薬(ワソラン®・ヘルベッサー®)やβ1遮断薬、ジゴキシンといった薬剤を投与した場合は、房室結節に作用し電気信号の伝達を遅らせます。
房室結節での電気信号の伝達が遅れた結果、心房側から心室側に送られる電気信号は、副伝導路を通ったルートが優位になる可能性があります。
心房側から心室側に送られる電気信号が副伝導路を通ったルートが優位になると、心房細動がなければとくに問題はありませんが、心房細動を伴っている場合は心房細動の速いリズム(細動)がそのまま心室側に伝わっていくので、心室細動になる可能性があるということです。
ということでWPW症候群に心房細動を伴った場合は、心室細動を引き起こす可能性があるため、不整脈に投与されやすいカルシウム拮抗薬(ワソラン®・ヘルベッサー®)やβ1遮断薬、ジゴキシンといった薬剤は禁忌となります。
つまり、WPW症候群でワソラン®が禁忌になるのかどうかについては
『WPW症候群≠ワソラン®禁忌』
『WPW症候群+心房細動=ワソラン®禁忌』
ということになります。
『WPW症候群ではワソラン®が禁忌になる?』まとめ
- 心房細動を伴ったWPW症候群では、房室結節に作用する薬剤は心室細動を引き起こすリスクがあるため禁忌となる
- カルシウム拮抗薬(ワソラン®・ヘルベッサー®など)
- β1遮断薬
- ジゴキシン