胃酸分泌抑制薬であるH2ブロッカーのタガメット®(シメチジン)について薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中の錠IFは『タガメット®錠IF, 2023年4月(第9版)』、注IFは『タガメット®注IF, 2022年4月(第9版)』のことです。
Contents
タガメット®(シメチジン)薬物動態情報
適応
〇胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison 症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血
(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)
〇下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期
用法用量
〈胃潰瘍、十二指腸潰瘍〉
シメチジン1日800mgを2回(朝食後及び就寝前)に分割して経口投与。または、1日量を4回(毎食後及び就寝前)に分割もしくは1回(就寝前)投与も可。
〈吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison 症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による) 〉
シメチジン1日800mgを2回(朝食後及び就寝前)に分割して経口投与。または、1日量を4回(毎食後及び就寝前)に分割投与も可。
※上部消化管出血の場合には、通常注射剤で治療を開始し、内服可能となった後は経口投
与に切りかえる。
〈急性胃炎・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善〉
シメチジン1日400mgを2回(朝食後及び就寝前)に分割して経口投与。または、1日量を1回(就寝前)投与も可。
腎機能による投与量調節
- CLCr0~4mL/min 1回200mg 1日1回(24時間間隔)
- CLCr5~29mL/min 1回200mg 1日2回(12時間間隔)
- CLCr30~49mL/min 1回200mg 1日3回(8時間間隔)
- CLCr50mL/min以上 1回200mg 1日4回(6時間間隔)
バイオアベイラビリティ
- 88.6%
経口投与AUC(0~6時間)3.72±0.30μg・hr/mL(錠IF:P.16より)
静注投与AUC(0~6時間)4.20±0.19μg/mL・hr(注IF:P.15より)
上記より
3.72/4.20=0.886
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
該当資料なし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 平均1.39L/kg
(参考:外国人データ・男性胃潰瘍患者・シメチジン200mg静注)
(注IF:P.14より)
体重60kgの場合、Vd=83.4L
Vd(b)=Vd/(B/P)=83.4/0.5
Vd(b)≦166.8
Vd(b)≧50(細胞内分布型)、Vd(b)=20~50(分布中間型)、Vd(b)≦20(細胞外分布型)すべての可能性があるため特徴付けできませんでした。
全身クリアランス(CL)
- 全身クリアランス(CL)平均655.2mL/min
- 腎クリアランス(CLR)平均375.3mL/min
(参考:外国人データ・男性胃潰瘍患者・シメチジン200mg静注)
(注IF:P.14より)
肝クリアランス(CLH)=CL-CLR=655.2-375.3=279.9mL/min
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 57.3%
Ae=CLR/CL=375.3/655.2=0.573
Ae=30~70%より腎・肝混合型(中間型)の薬剤といえます。
抽出比
- 腎抽出比
ER=CLR(ml/min)/(B/P)/QR(ml)=375.3/0.5/1200
ER≦0.6255
ER<0.3(消失能依存型)、0.3≦ER≦0.7(中間型)の可能性があるため特徴付けできませんでした。
- 肝抽出比
EH=CLH(ml/min)/(B/P)/QH(ml)=279.9/0.5/1600
EH≦0.3499
EH<0.3(消失能依存型)、0.3≦EH≦0.7(中間型)の可能性があるため特徴付けできませんでした。
タンパク結合率
- 18.0~26.3%
(注IF:P.16より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.263=0.737
多く見積もってもfuP>0.2となり、タンパク結合非依存型の薬剤といえます。
半減期
- 約2時間
(錠IF:P.14より)
その他
- 透析除去率:71%(参考データ)(錠IF:P.20より)
タガメット®(シメチジン)薬物動態情報まとめ
- Ae:57.3→腎・肝中間型(30<Ae<70)
- ER≦0.6255→特徴づけ不可
- EH≦0.3499→特徴づけ不可
- Vd(b)≦166.8→特徴づけ不可
- fuP=0.737~0.820→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
- バイオアベイラビリティ:88.6%
- 半減期:約2時間
- 透析除去率:71%