プラザキサ®(ダビガトラン)薬物動態情報
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直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)のプラザキサ®(ダビガトラン)について薬物動態情報を見ていきたいと思います。

各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。

 

また、本記事中のIFの記載は『プラザキサ®カプセルIF, 2021年4月(第16版)』のことを示しています。

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プラザキサ®(ダビガトラン)薬物動態情報

用法用量

《非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制》

プラザキサ® 1150mg 12回経口投与

中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50 mL/min)のある患者やP-糖蛋白阻害剤(経口剤)を併用している患者では1110mgへの減量を検討する。

※静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)には適応なし

※人工心臓弁置換術後の抗凝固療法には適応なし(経口抗凝固薬での適応はワルファリンのみ)

バイオアベイラビリティ

  • 約 6.5%(健康成人男子)
    (IF:P.19より)

全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)

血漿に対する血球の放射能の比は0.10.4(プラザキサ®審査報告書, 20101025, P.31

より0.1を用いた場合、比ですので血漿の割合は10.10.9となります。

つまり全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度=1/0.91.11

また0.4を用いた場合、血漿の割合は0.6となります。

つまり全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度=1/0.61.67

B/P=全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度×(1Ht

Ht=0.5より

B/P=(1.111.67)×0.50.5550.835

分布容積(Vd)

  • 60~70L(健康成人男性)
    (IF:P.18より)

Vd(b)=Vd/(B/P)=70/(0.5550.835)84127

Vd(b)≧50より細胞内分布型の薬剤といえます。

全身クリアランス

  • 108~110 mL/min(健康成人男性)
    (IF:P.18より)

また、mL/minをL/hrに単位変換すると、6.48~6.6L/hrとなります。

尿中未変化体排泄率(Ae)

  • Ae:82.1%

健康被験者にダビガトラン(活性代謝物)を静脈内投与したとき,主にダビガトランとして尿 中に排泄され,腎クリアランスは 87~92 mL/分であった。
(IF:P.21より)

尿中未変化体排泄率(Ae)=腎クリアランス/全身クリアランスより
Ae=89.5/109≒82.1%
(数値は中間値を使用)

Ae≧70より腎排泄型の薬剤といえます。

抽出比

ER<CLR/(B/P)/QR=89.5/0.695/1200=0.107

ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。(B/Pは中間値を使用)

 

腎排泄型の薬剤なので肝臓の影響は少ないですが、肝臓についても考えてみます。

CLH=CL-CLR=109-89.5=19.5ml/min

EH<CLH/(B/P)/QH=19.5/0.695/1600=0.018

EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。

血漿タンパク結合率

  • 34~35%(ヒト血漿蛋白結合率)
    (IF:P.19より)

タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。

血漿中遊離形率(fuP)=1-0.35=0.65

fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。

半減期

日本人健康成人男性に本剤 110 mg 及び 150 mg を 1 日 2 回 7 日間反復経口投与したときの t1/2はそれぞれ 10.7 時間,11.8 時間であった
(IF:P.21より)

その他

プロトンポンプ阻害剤併用:バイオアベイラビリティの低下(-14.6%)
P-糖蛋白阻害剤併用:バイオアベイラビリティの上昇(+15%)
(IF:P.18より)

 

  • バイオアベイラビリティの低下

プラザキサ®は、強酸下では溶解性は高いですが pH3以上ではその溶解性は著しく低下します。

溶解性を保つために添加剤に酒石酸が含まれています。胃内に薬剤が入り0.3% 酒石酸(pH 2.4)が崩壊することで、局所が強酸状態となりダビガトランの原薬が溶解しやすくなります。

ダビガトランとプロトンポンプ阻害薬との併用は胃内pHを上昇した結果、効果を減弱させてしまう可能性があります。

  • バイオアベイラビリティの上昇

もともとバイオアベイラビリティが低い薬剤のバイオアベイラビリティが上昇すると(≒吸収率が上昇すると)、もともとバイオアベイラビリティが高い薬剤に比べて影響が大きくなります。(プラザキサ®は他のDOACと比べてバイオアベイラビリティが低いです。)

ダビガトランはP-糖蛋白の基質であり、P-糖蛋白阻害作用のある薬には注意が必要です。

強いP-糖蛋白阻害作用を示すイトラコナゾールは併用禁忌となっています。

心房細動で使用する可能性のある抗不整脈薬のアミオダロンやベラパミルなども阻害作用を示すため、注意が必要です。特にダビガトランと同時にベラパミル塩酸塩の併用を開始、もしくはダビガトラン服用中に新たにベラパミル塩酸塩の併用を開始する場合は、併用開始から3 日間はベラパミル塩酸塩服用の2 時間以上前にダビガトランを服用させることとなっています。

プラザキサ®(ダビガトラン)薬物動態情報まとめ

プラザキサ®(ダビガトラン)の特徴
  • Ae=82.1%→腎排泄型(Ae≧70)
  • ER=0.107→消失能依存型(ER<0.3)
  • EH=0.018→消失能依存型(EH<0.3)
  • Vd(b)=84~127→細胞内分布型(Vd(b)≧50)
  • fuP=0.65→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
  • バイオアベイラビリティ6.5%
  • 半減期10.7~11.8時間
  • P-糖蛋白阻害作用を持つ薬剤との併用に注意

 

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