Vaughan Williams分類Ⅳ群に分類される抗不整脈薬ワソラン®(ベラパミル)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIF錠は『ワソラン®錠IF, 2021年4月(第9版)』、IF注は『ワソラン®静注IF, 2021年4月(第12版)』のことです。
Contents
ワソラン®(ベラパミル)薬物動態情報
適応
- 頻脈性不整脈(心房細動・粗動、発作性上室性頻拍)
用法用量
- ワソラン®錠:1回40~80mg 1日3回経口投与
- ワソラン®静注:ベラパミル塩酸塩として5mg(1A)を、必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖注射液で希釈し、5 分以上かけて徐々に静脈内に注射する
バイオアベイラビリティ
- 平均22%(12.1~32.2%)
(IF錠:P.12より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- 該当資料なし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 2.5~6.8L/kg
(IF注:P.12より)
体重60kgとすると、Vd=150~408L
Vd(b)≦Vd/(B/P)=150~408/0.5
Vd(b)≦300~816L
Vd(b)≧50(細胞内分布型)、Vd(b)=20~50(分布中間型)、Vd(b)≦20(細胞外分布型)すべての可能性があるため特徴付けできませんでした。
全身クリアランス(CL)
- 500~1257mL/min
(IF注:P.12より)
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 1%(投与48時間)
(IF錠:P.16より) - 未変化体の尿中排泄は元来少ない(IF注:P.20より)
Ae≦30と考えられ肝代謝型の薬剤といえます。
またここでは肝クリアランス(CLH)≒全身クリアランスと考えることとします。
抽出比
- 肝抽出比
EH≦CLH(ml/min)/(B/P)/QH(ml)=500~1257/0.5/1600
EH≦0.625~1.571
EH<0.3(消失能依存型)、0.3≦EH≦0.7(中間型)、EH>0.7(血流速度依存型)すべての可能性があるため特徴付けできませんでした。
タンパク結合率
- 93.7±0.7%
(IF注:P.12より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.94=0.06
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 〈5mg静脈投与〉α相:1.0±0.2min、β相:32.3±13.8min、γ相:4.0±0.7hr
(IF注:P.11より)
その他
- 治療上有効な血中濃度:50~200ng/mL
130~150ng/mL以上でⅡ度房室ブロックを起こす可能性あり。(IF注:P.11より) - 透析除去率:ほとんど除去されない(IF注:P.17より)
- 肝代謝酵素CYP3A4 で代謝される。(IF注:P.21より)
- P糖蛋白の基質であるとともに、P糖糖蛋白に対して阻害作用をもつ。(IF注:P.21より)
ワソラン®(ベラパミル)薬物動態情報まとめ
ワソラン®(ベラパミル)の特徴
- Vaughan Williams分類:Ⅳ群
- 肝代謝型
- EH≦0.625~1.571→特徴づけ不可
- Vd(b)≦300~816L→特徴づけ不可
- fuP=0.06→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- バイオアベイラビリティ:22%
- 半減期:4時間(γ相)
- 治療上有効な血中濃度:50~200ng/mL
- 透析除去率:ほとんど除去されない
- CYP3A4で主に代謝される
- P-糖蛋白阻害作用を持つ薬剤との併用に注意