強心薬であるPDE-Ⅲ阻害薬ピモベンダンの薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『ピモベンダン錠「TE」IF, 2022年4月(第5版)』、アカルディIFは『アカルディ®カプセルIF, 2014年9月(第6版)』のことです。アカルディ®はすでに製造・販売中止となっております。(2021年3月31日に経過措置期間も終了)
Contents
ピモベンダン薬物動態情報
適応
- 急性心不全で利尿剤等を投与しても十分な心機能改善が得られない場合
- 慢性心不全(軽症~中等症)で、ジギタリス製剤、利尿剤等を投与しても十分な効果が得られない場合
用法用量
ピモベンダン 1回2.5mg 1日2回経口投与
バイオアベイラビリティ
- 66±19%
(アカルディIF:P.19より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- 該当資料なし
分布容積(Vd)
- 見かけの分布容積228.2L
(アカルディIF:P.19より)
経口投与でのデータであり、特徴づけに用いることはできませんでした。
全身クリアランス(CL)
- 経口クリアランス176.4L/h
(アカルディIF:P.19より)
経口投与でのデータであり、特徴づけに用いることはできませんでした。
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 肝代謝型
(アカルディIF:P.20より)
尿中へは脱メチル体の非抱合体及び抱合体として排泄され、非抱合体の尿中排泄率 (24 時間) は投与量の約20~40%である(アカルディIF:P.21より)
肝代謝型の薬剤で、明記されていませんがAeはない(もしくは、ほとんどない)と推測できます。
抽出比
みかけのクリアランスのため、腎抽出比(ER)・肝抽出比(EH)を算出することはできませんでした。
タンパク結合率
- 97~99%
(アカルディIF:P.19より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.99=0.01
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 未変化体:約1時間
- 脱メチル体:約2時間
(アカルディIF:P.18より)
その他
- 未変化体(ピモベンダン)は体内に投与された後、肝臓において代謝され脱メチル体となる(IF:P.30より)
- CYP1A2 とCYP3A4 (ラット肝ミクロソーム)により代謝される(アカルディIF:P.20より)
- 主代謝物である脱メチル体の陽性変力作用及びPDE活性抑制作用は未変化体ピモベンダンの34倍及び12.6倍といずれも強い(アカルディIF:P.21より)
- 透析除去率:ほとんど除去されない(アカルディIF:P.21より)
ピモベンダン薬物動態情報まとめ
- 肝代謝型
- 代謝物も陽性変力作用・PDE活性抑制作用を示し、未変化体より強い
- ER、EH、Vd(b):特徴づけ不可
- fuP=0.01→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- バイオアベイラビリティ:66%
- 半減期:未変化体 約1時間、脱メチル体 約2時間
- CYP1A2 とCYP3A4 (ラット肝ミクロソーム)により代謝
- 透析除去率:ほとんど除去されない
今回ピモベンダンを調べて問題と感じたことは、もともと先発品のアカルディ®IFにはバイオアベイラビリティやタンパク結合率、経口投与のデータとはいえクリアランスや分布容積など記載されていた項目が、販売中止となって現在発売している後発品IFにまったく記載がないこと。情報が反映されず消えていってしまうのは問題かなと感じました。