心不全に適応をもつβ1受容体遮断薬は本邦ではカルベジロールとビソプロロールの2種類です。
この記事ではそのうちのひとつであるアーチスト®(カルベジロール)の薬物動態情報についてみていきます。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『アーチスト®IF, 2021年10月(第17版)』のことです。
Contents
アーチスト®(カルベジロール)薬物動態情報
用法用量
○本態性高血圧症(軽症~中等症)、腎実質性高血圧症
カルベジロール1回10~20mg 1日1回経口投与 適宜増減
○狭心症
カルベジロール1回20mg 1日1回経口投与 適宜増減
○虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
開始量:カルベジロール1回1.25mg 1日2回食後経口投与
維持量:カルベジロール1回2.5~10mg 1日2回食後経口投与
忍容性をみながら段階的に増量し、忍容性がない場合は減量する。用量の増減は必ず段階的に行い、1回投与量は1.25mg、2.5mg、5mg又は10mgのいずれか。開始用量はさらに低用量としてもよい。
○頻脈性心房細動
開始量:カルベジロール1回5mg 1日1回経口投与
最大量:カルベジロール1回20mg 1日1回経口投与
慢性心不全におけるβ遮断薬の忍容性についてはコチラの記事をご参照ください。
バイオアベイラビリティ
- 22~24%
<参考:外国人データ>
健康成人男性にカルベジロール12.5mg静脈内投与(1時間注入)、25mg及び50mgカプセル剤の経口投与を1~2週間間隔で行い血漿中未変化体濃度を測定した結果、絶対生物学的利用率は22~24%であった。(IF:P.41より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
データなし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 10mg:247±33L
- 20mg:347±88L
(IF:P.41より)
20mgで計算した場合
Vd(b)<Vd/(B/P)=347/0.5
Vd(b)<694L
おそらくVd(b)≧50細胞内分布型の薬剤となると思いますが、細胞外分布型・中間型を否定できないため特徴づけはできません。
全身クリアランス
- 35.3(L/hr)
クリアランス(L/hr)
=静脈時投与量/血中濃度曲線化面積(AUC)
=12.5(mg)/354(ng・hr/mL)
≒35.3
(IF:P.41より)
588.3ml/min
尿中未変化体排泄率(Ae)
カルベジロールは未変化体としては尿中にはほとんど排泄されず、代謝されたのち主に胆汁排泄を介して糞中より排泄される。
(IF:P.44より)
肝代謝型の薬剤といえます。
抽出比
肝抽出比
CL≒CLH
EH<CLH/(B/P)/QH=588.3/0.5/1600
EH<0.735
肝抽出比はEH<0.3(消失能依存型)、EH>0.7(血流速度依存型)、0.3≦EH≦0.7(中間型)すべての可能性があり、特徴づけできません。
タンパク結合率
- 94.2~96.1%
(IF:P.42より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.95=0.05
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 10mg:4.26±1.43時間
- 20mg:8.03±1.92時間
(IF:P.41より)
その他
- α:β受容体遮断効力比=1:8
- 頻脈性心房細動に対する心拍数減少効果(IF:P.16より)
・5mg:-7.6拍/分
・10mg:-8.9拍/分
・20mg:-10.6拍/分 - CYP2D6、CYP2C9、CYP3A4、CYP1A2、CYP2E1で代謝される
- 有効血中濃度:該当資料なし
- 透析除去率:該当資料なし
アーチスト®(カルベジロール)薬物動態情報まとめ
- 肝代謝型
- EH<0.735→特徴づけできず
- Vd(b)<694L→特徴づけできず
- fuP=0.05→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- バイオアベイラビリティ:22~24%
- 半減期:4.26~8.03時間
- α:β受容体遮断効力比=1:8
- CYP2D6、CYP2C9、CYP3A4、CYP1A2、CYP2E1で代謝される