ジギタリス中毒を見逃さないために押さえておきたいポイントとは?
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ジギタリス製剤は心不全で内服されることが多いと思いますが、ジギタリス中毒は見逃せません。

ジギタリス中毒は、未然に防いだり早期発見できる副作用です。

どのような患者で起こる可能性が高いのか、どのような症状が出やすいのか、知っていると、疑わしい時にアレ?と気付けるようになると思います。

ジギタリス中毒の症状とは?疑わしい、注意が必要な患者像はどういったものなのか?見ていきたいと思います。

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ジギタリス製剤による心電図の特徴

ジギタリス製剤による心電図の特徴
①PQ時間の延長
②QT時間の短縮
③STの盆状降下

正常な心電図と比べると下図のようになります。

ジギタリス製剤による心電図の影響

ジギタリス中毒(薬が効きすぎた状態)となると、PVCや房室ブロックなど致死的な不整脈が現れることもありますので注意が必要です。

PVCや房室ブロックはコチラをご確認ください。

ジギタリス中毒とは

ジギタリス製剤は強心配糖体と呼ばれ、簡単に言うと、心筋収縮を増強させ、脈拍をゆっくりさせる薬剤です。

主に心不全の患者に使用されます。

ジギタリス製剤にはジゴキシン、メチルジゴキシン(錠剤で比較し、ジゴキシンに比べ薬の吸収が速やかで効果発現が早い)があります。

ジギタリス製剤の治療域は非常に狭く効きすぎた状態中毒症状(ジギタリス中毒)に注意が必要な薬剤です。

特に腎機能が低下している患者で注意が必要です。

治療域が狭いため、薬が治療域内にあるか(どのくらい効いているか)の確認が重要となります。

どのくらい効いているかはジゴキシン血中濃度の測定で確認ができます。

ジギタリス製剤を用いることで心不全症状の改善は認められますが、ジギタリス製剤による死亡減少効果は示されていません。

ジギタリス製剤は症状が進行した患者で開始されるため、ジギタリス製剤を投与している患者が多いわけではありませんが、それだけに投与している患者をみると効きすぎていないか気になります。

また、ジギタリス製剤は血液検査でジゴキシン血中濃度を測定することで、どのくらい効いているか確認できますが、頻回に行う検査ではありません。

腎機能や高齢等背景も確認し、下記のタイミングなどで検査をします。

ジゴキシン血中濃度測定(確認)のタイミング
①開始1週間後以降で治療域内にあることを確認
②治療域にある方は外来で定期的(背景により測定の間隔は変わると思います)に治療域内にあることを確認
③効きすぎた状態が疑わしいときに治療域内にあることを確認(薬が原因かどうかの判断材料)

では、どういったときに効きすぎた状態、すなわちジギタリス中毒が疑わしいと考えるのか。

ジギタリス中毒の初期症状として悪心・嘔吐、食欲不振などの消化器症状が現れます。

ジギタリス製剤を内服していて、急に食事摂取量が減った場合は注意が必要です。

実際に、急に食欲不振を訴え食事量が減った患者に対し、ジゴキシンの血中濃度を測定してもらったところ、ジギタリス中毒が発覚だったというケースを何回か経験したことがあります。

ジギタリス中毒は血清カリウム値が低値の時に発現しやすいので血清カリウム値の確認も必要です。

ジゴキシン血中濃度
治療域 心不全   0.5 ~ 1.0 ng/mL
    心不全以外 0.5 ~ 2.0 ng/mL
中毒域 3.0 ng/mL以上

血中濃度が2.0 ng/mL以上の場合、副作用の注意が必要です。

個人的には1.0 ng/mLを超えたら、背景を確認し、必要に応じて医師に減量等提案をしています。

ジギタリス製剤について

・ジゴキシン(ジゴシン®)

半減期:36~48時間
腎排泄型薬剤
剤型:経口剤(錠剤、散剤、液剤)、注射剤

ジゴキシンを中止した場合、約7.5日{36時間(1.5日)×5}で体内からほぼ薬剤が消失すると考えます。(半減期の考え方の詳細はコチラを参照)

つまり、中毒の時に、中止してからもしばらくは“危険な状態が続く”ということです。

・メチルジゴキシン(ラニラピッド®)

(ジゴキシンとほぼ同等の作用)
剤型:錠剤

経口投与後、ほぼ吸収され、約 5~15 分で効果が発現するとされます。

そのため、剤型も錠剤だけで良いということになります。

参考までに用量換算比を記載します。

用量換算比
ジゴキシン:メチルジゴキシン=1.4~1.8:1

つまり、メチルジゴキシン錠0.05 mgとジゴキシン錠0.07~0.09 mgが同等量となります。

ただ、実際の薬物動態には個体間および個体内変動があるため薬剤の切り替え時には血中濃度測定が必要です。

~おまけ~なぜ、メチルジゴキシンが開発されたのか?

ジゴキシンより吸収率が良好で、それと同程度の作用持続時間を有する強心配糖体が望まれてきました。

遊離水酸基をメチル化することで吸収が良好となることが発見されました。研究者ってすごいなと思います。

なぜ、吸収率が良好な強心配糖体が望まれたのか?

内服薬で効果が得られるまで、一般的に半減期×5の時間がかかります。

ジゴキシンの半減期は36(1.5日)~48時間なので、普通は効果が出るまでに1.5日×5=7.5日かかるということになります。

そのため、最初に高用量投与する急速投与療法(最初に多く投与して、薬が速く効くようにしようということです)といった方法で投与されることが多かったようなのですが、やはり問題点として、副作用や中毒のリスクが高くなります。

なので、効果だけが早く得られるようになれば、最初に高用量入れなくても良いとなりますので、より安全に使用できるようになります。

因みに構造式のどこが変わったのか・・・

ジゴキシン構造式とメチルジゴキシン構造式の違い

違いは赤線部分です。

どこをどのように変えると良いか色々試してこれにたどり着いたはずです。

やっぱり研究者ってすごいですね。

まとめ

心電図変化や消化器症状がジギタリス中毒に気付くためのポイントです。

  • ジギタリス製剤による心電図の特徴は①PQ時間の延長②QT時間の短縮③STの盆状降下
  • ジギタリス中毒ではPVCや房室ブロックなど致死的な不整脈が発現する可能性
  • ジギタリス中毒の初期症状は悪心・嘔吐、食欲不振などの消化器症状
  • 高齢、腎機能低下時はジギタリス中毒に要注意
  • 疑わしい時はジゴキシン血中濃度の測定
  • ジゴキシン血中濃度が2.0 ng/ml以上は注意
    (個人的には1.0 ng/mL以上は注意して経過をみる。心不全の治療域は0.5 ~ 1.0 ng/mL。)

もし、ジゴキシンやメチルジゴキシンを飲んでいる方(本人・家族・患者)が、悪心・嘔吐・消化器症状などを訴えたときはすぐ受診して、先生に飲んでいる薬と症状を伝えるようにしてくださいね。

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