優越性とは?非劣性とは?
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優越性試験で統計学的に有意差があるから優越性が認められるわけではありません。

その差は臨床的に意味があるのでしょうか。

また、非劣性試験でどんなに良い結果だったとしても優越性とはなりません。

この記事で優越性試験と非劣性試験について一緒に見ていきましょう。

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優越性を示すための試験とは何か?

優越性試験とは、薬剤の比較試験を例にすると、被験薬の効果が比較する薬剤(プラセボまたは実薬)より臨床的に優れることを示す試験のことです。

何かを比較するときに、こっちの方が優っているということを示したいのですが、優っているからイコール良いというわけではありません。

例えば、「この薬は血圧を1mmHg下げます。統計学的にも有意差が出ています。」

さて、あなたはこの薬を使いますか?

血圧を1mmHg下げるのであれば減塩や運動など生活習慣の改善で達成するでしょう。

そして血圧を1mmHg下げるためだけに薬を使いますか?

統計学的に有意でも臨床的に有意でなければ使う意味がありませんよね。

論文に記載されている結果を読んで受け取る論文の読み手の捉え方が重要です。

優越性試験

基準(実線:差の場合0、比の場合1)を境に右側を試験薬が優る、左側を試験薬が劣るとします。

95%信頼区間が基準をまたぐ場合、試験薬が優るか劣るか有意差はありません。(P>0.05)

95%信頼区間が基準より右側にあれば試験薬は統計学的に有意といえますが、それに意味があるかどうかはまた別の話です。

95%信頼区間が臨床的に意味のある差(点線)をまたいだときにはじめて臨床的にも有意となります。

臨床的に意味のある差についてはコチラの記事をご参照ください。

また、優越性試験で優越性を示せなかったときは、非劣性も示すことはできません。

非劣性を示すための試験とは何か?

非劣性試験とは、被験薬の効果が比較する薬剤(実薬)よりも劣っていないことを示す試験のことです。

優越性試験のときとは異なり、非劣性試験ではプラセボは含みません。

プラセボとの非劣性を証明したとしても、それは何も投与しなくても変わらないということになってしまいますからね。

実対照薬の効果が一般的であり、同様の効果が求められる場合に計画されます。また、プラセボ対照試験が困難な場合に計画されます。

非劣性試験

基準(実線:差の場合0、比の場合1)を境に右側を試験薬が優る、左側を試験薬が劣るとします。また、非劣性を許容できる限界を非劣性マージン(点線)とします。

95%信頼区間が非劣性マージンをまたぐ場合、P>0.05となり非劣性は証明できません。許容できる範囲を超える可能性があるため、劣っている可能性があるとなります。

図には示していませんが95%信頼区間が非劣性マージンよりも左側にある場合、劣っているとなります。

95%信頼区間が非劣性マージンより右側にあって非劣性マージンをまたがない場合、P<0.05となり非劣性が証明されます。

非劣性試験の場合、非劣性マージンより右側にあれば基準をまたいでいても、基準より右側にあっても非劣性は変わりません。

基準をまたがず右側にあるからといって優越性とはなりません。

どんなに良い結果が得られて差があったとしても非劣性試験で実施した場合、基準をまたいでいてもいなくても、非劣性マージンをまたいでいなければ非劣性は非劣性なのです。

 

企業は比較試験をおこなって、自社の薬剤が優れていることを証明し自社の薬剤が良いとアピールしたいのですが、比較試験をおこなって良い結果が出なかったときには「優れていなかった」となります。

その場合、「劣っていない」ということは証明できていません。

じゃあ、優越性の統計検定を追加で実施してしまえば…と思うかもしれません。

しかし、コチラの記事で『有意水準は研究を実施する前にあらかじめ設定』すると記載したように、研究は事前にいろいろ設定して開始されます。

結果が予想以上に良かったから、同時に優越性も言っちゃおう、優越性の統計検定を追加しちゃおうというのは後出しじゃんけんになってしまいます。

後出しじゃんけん、ズルいですよね。

 

臨床試験の実施には莫大な資金もかかりますし、企業も失敗したくありません。途中で失敗すると企業の価値(株価)にも影響します。

有効性は非劣性だけど、投与が簡便になるとか、副作用が減るとか、有効性以外にメリットと考えられることがある場合は非劣性試験を選択するかもしれません。

優越性試験で実施するか、非劣性試験で実施するか、そこには企業の目算と戦略があると思います。

まとめ

優越性試験
  • 被験薬と対照薬(プラセボ含む)を比較して、被験薬が優れていることを証明する試験。
  • 統計学的に有意なだけでなく、臨床的に有意であることが重要。
  • 95%信頼区間が基準より優る側に位置し、臨床的に意味のある差を含むときにはじめて臨床的にも有意となる。
非劣性試験
  • 被験薬と対照薬(プラセボ含まない)を比較して、被験が劣っていないことを証明する試験。
  • 非劣性が許容できる限界(非劣性マージン)を超えないこと。
  • 非劣性試験では優越性は証明できない。

優越性試験なのか非劣性試験なのかは、論文中に記載されていると思いますのでsuperiority(優越性)またはnon-inferiority(非劣性)という単語がそのままキーワードになりますので探してみてくださいね。

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