Vaughan Williams分類Ⅰc群に分類される抗不整脈薬サンリズム®(ピルシカイニド)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFカプセルは『サンリズム®カプセルIF, 2021年12月(第13版)』、IF注は『サンリズム®注射液IF, 2022年1月(第15版)』のことです。
Contents
サンリズム®(ピルシカイニド)薬物動態情報
適応
- 頻脈性不整脈
用法用量
- カプセル
サンリズム®カプセル 1回50mg 1日3回経口投与
(効果不十分時は1回75mgまで増量可)
高齢者や透析を必要とする腎不全患者では、1日25mgから投与を開始するなど、患者の状態を観察しながら慎重に投与することが必要。
- 注射液
サンリズム®注射液1回0.075~0.1mL/kg(ピルシカイニド塩酸塩水和物として0.75~0.1mg/kg)を必要に応じて日本薬局方生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液などで希釈し、血圧ならびに心電図監視下に10分間で徐々に静注する。
バイオアベイラビリティ
- 該当資料なし
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- 該当資料なし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 1.3±0.1L/kg
(IF注:P.15より)
体重60kgの場合、Vd=78L
Vd(b)≦Vd/(B/P)=78/0.5
Vd(b)≦156
Vd(b)≧50(細胞内分布型)、Vd(b)=20~50(分布中間型)、Vd(b)≦20(細胞外分布型)すべての可能性があるため特徴付けできませんでした。
全身クリアランス(CL)
- 3.76±0.36mL/min/kg
(IF注:P.15より)
体重60kgの場合、CL=225.6ml/min
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 90%以上
(IF注:P.17より)
Ae≧70より腎排泄型の薬剤といえます。
腎クリアランス(CLR)=CL×Ae=225.6×0.9=203ml/min
肝クリアランス(CLH)=CL-CLR=225.6-203=22.6ml/min
抽出比
- 腎抽出比
ER≦CLR(ml/min)/(B/P)/QR(ml)=203/0.5/1200
ER≦0.338
ER<0.3(消失能依存型)、0.3≦ER≦0.7(中間型)の可能性があるため特徴づけできませんでした。
- 肝抽出比
EH≦CLH(ml/min)/(B/P)/QH(ml)=22.6/0.5/1600
EH≦0.028
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 35%
(IF注:P.16より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.35=0.65
fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。
半減期
- 4~5時間
(IFカプセル:P.15より)
腎機能が低下するにつれて半減期が上昇する。
50≦CLcr:半減期は腎機能正常例とほぼ同じ。
20≦CLcr<50:半減期は腎機能正常例に比し約2倍に延長する。
CLcr<20:半減期は腎機能正常例に比し約5倍に延長する。
その他
- 治療上有効な血中濃度:0.2~0.9μg/mL
- 透析除去率:25%
- P-gp(P-glycoprotein)及びOCT2(organic cation transporter 2)を阻害する
トランスポーター(P-gp、OCT2)についてはコチラの記事を参照してください。
サンリズム®(ピルシカイニド)薬物動態情報まとめ
- Vaughan Williams分類:Ⅰc群
- Ae=90%以上→腎排泄型(Ae≧70)
- Vd(b)≦156L→特徴づけ不可
- ER≦0.338→特徴づけ不可
- EH≦0.028→消失能依存型(EH<0.3)
- fuP=0.65→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
- バイオアベイラビリティ:該当資料なし
- 半減期:4~5時間
- 治療上有効な血中濃度:0.2~0.9μg/mL
- 透析除去率:25%