有意水準とP値って両方とも0.05と論文に記載されていることが多いですが違いって何ですか?
また、結果に記載されたP値はP<0.05とP<0.01ではP<0.01の方が良いような気がするのですが、どうなのですか?
これらの質問について一緒に見ていきましょう。
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薬剤師の“みや”です。
『薬の特徴や比較』、『循環器領域の薬物療法の考え方』、『論文の読み方のポイント』、『男性の育休取得時のポイント』などのテーマで記事を執筆しています。医療現場や日常生活で役立つ視点から、読者にわかりやすく、実用的な情報をお届けすることを心がけています。
有意水準
有意水準(significance level)とは設定した仮説が本当は差がない(帰無仮説が正しい)のに誤って「差がある」としてしまう(仮説を棄却する)確率のことです。
αで表し、危険率とも呼びます。また、P値の小ささの基準となります。
一般的には有意水準α=0.05(5%)が用いられ、研究を実施する前にあらかじめ設定されます。
α=0.05(5%)が用いられた場合、これは100回検定すれば5回くらいは有意な(間違った)結果になることを意味します。
P値
P値とは確率(Probability)の実現値 のことで、『統計的仮説検定において、帰無仮説の元で検定統計量がその値となる確率』のことです。
この値は検定の結果得られる値です。
有意水準α=0.05(5%)を有意と事前に設定していますので、検定の結果得られた確率P値が<0.05(5%)の場合に「統計的に有意である」と判断します。
ここで注意して欲しいことは、「統計的に」という部分です。
例えば、血圧を140から120に下げる薬(変化量-20)でも、血圧を140から139に下げる薬(変化量-1)でもP値が<0.05(5%)となれば統計的に有意ということになります。
統計的に有意だから血圧を1下げる薬を使いましょうとはなりませんよね。
統計的に有意だから必ずしも臨床的に有意になるわけではありません。
臨床的に意味のある結果の差が統計的に有意かどうかです。(臨床的に意味のある結果についてはコチラの記事をご覧ください。)
さて有意水準とP値の違いについて改めて記載すると、それは事前に設定された基準か検定の結果得られる値かということです。
P<0.05よりP<0.01の方が良い?
では検定の結果得られたP値がP<0.05とP<0.01だったら、どっちのほうが良いのでしょうか?
P<0.01のほうが良さそうな印象がありますか?
結論から言うと、良い悪いの話ではありません。
これは確率の話です。
P<0.05は95%以上の確率でその結果が得られる、P<0.01は99%以上の確率でその結果が得られるつまり有意な差があるということを意味しています。
先ほどの血圧を140から120に20mmHg下げる薬を例にとると、P<0.05は5%未満で20mmHg下がらない、つまり95%以上は20mmHg下げるということになります。同様にP<0.01は1%未満で20mmHg下がらない、つまり99%以上は20mmHg下げるということになります。
何が言いたいかというとP値が小さいからといって、2群の差が大きくなるわけではないということです。
血圧を20mmHg下げる薬が30mmHg下げるようになるわけではありません。20mmHg下げる確率が95%以上か99%以上かです。
P<0.05に比べP<0.01のほうがその結果が得られる確率が高い、つまりその結果がより確かであるということは言えます。
あくまで確率論です。
P<0.05でも統計的に有意と定めていますので、P<0.05かP<0.01よりも重要なのは求める結果が臨床的に意味のある結果かどうかです。(臨床的に意味のある結果についてはコチラの記事をご覧ください。)
まとめ
- 有意水準:研究を実施する前にあらかじめ決めておく基準
- P値:検定の結果得られる値
- P値は効果の話ではなくその効果が得られる確率の話
- P値よりもその結果が臨床的に意味があるかどうかの方が重要
臨床的に意味がある結果についてはコチラの記事をご覧ください。