ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の薬物動態情報まとめ&使い分け
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ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)に分類される薬剤にはスピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノン、フィネレノンの4種類があります。

では、MRA各薬剤にはどのような違いがあるのでしょうか?一緒に確認していきましょう。

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ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の薬物動態情報まとめ&使い分け

薬物動態情報

薬物動態情報をまとめた表です。

特徴づけ

薬物動態情報から薬剤の特徴付づけをおこなった結果が下の表です。

  • 尿中未変化体排泄率
    MRAすべての薬剤は尿中未変化体排泄率30%未満であり、肝代謝型の薬剤でした。
  • 分布容積
    エサキセレノンとフィネレノンは細胞内分布型(Vd(b)>50)でしたが、スピロノラクトンとエプレレノンは特徴づけできませんでした。

特徴づけの詳細は各薬剤の記事をご確認ください。

適応

各薬剤の適応についてまとめました。

スピロノラクトン、エプレレノンは慢性心不全にたいして適応がありますが、エサキセレノン・フィネレノンは心不全にたいして適応がありません。エサキセレノンは高血圧のみ、フィネレノンは2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)のみです。

また、スピロノラクトンの適応には腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫及び腹水、栄養失調性浮腫、原発性アルドステロン症の診断及び症状の改善があります。

用法用量

  • スピロノラクトン
    1日50~100mg 適宜増減
  • エプレレノン
    〈高血圧症〉
    1日1回50mg(効果不十分な場合は100mgまで増量可)
    〈慢性心不全〉
    1日1回25mgから投与を開始
    血清カリウム値、患者の状態に応じて、投与開始から4週間以降を目安に1日1回50mgへ増量
  • エサキセレノン
    1回2.5~5mg 1日1回経口投与
  • フィネレノン
    〈eGFR60mL/min/1.73m2以上〉
    1回20mg 1日1回経口投与
    〈eGFR60mL/min/1.73m2未満〉
    開始量:1回10mg 1日1回経口投与
    血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)とステロイド骨格

  • ステロイド骨格をもつMRA:スピロノラクトン、エプレレノン
  • ステロイド骨格をもたないMRA:エサキセレノン、フィネレノン

非ステロイド型のMRAは、ミネラルコルチコイド(MR)受容体の選択性が高いうえにMR受容体に対する親和性も高く、ほかのステロイド受容体への作用や副作用が少ないといった特徴があります。

各薬剤構造式とステロイド骨格は下記となります。

降圧作用

  • スピロノラクトン50 mg1)
    収縮期血圧 -20.09 mmHg(95%CI:-23.06, -16.58)
    拡張期血圧 -6.75 mmHg(95%CI:-8.69, -4.8)
  • エプレレノン50 mg2)
    収縮期血圧 -9.21 mmHg(95%CI:-11.08, -7.34)
    拡張期血圧 -4.18 mmHg(95%CI:-5.03, -3.33)

上記よりスピロノラクトン25mg>エプレレノン50mgとなり、スピロノラクトン25mg≒エプレレノン50mgと考えられます。

  • エプレレノン50mg≒エサキセレノン2.5mg3)
  • フィネレノン20mg:-2.1mmHg4)

実薬同士の比較ではないデータもありあくまで参考値としてですが、まとめると以下のようになると考えられます。

降圧作用
フィネレノン20mg<スピロノラクトン25mg≒エプレレノン50mg≒エサキセレノン2.5mg

※フィネレノンの適応は2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)で、高血圧に対する適応はありません。

腎機能と投与量

  • スピロノラクトン
    無尿又は急性腎不全:禁忌
  • エプレレノン
    クレアチニンクリアランス
    30mL/min未満:禁忌
    30~50mL/min:最大量25mg
  • エサキセレノン
    eGFR 30mL/min/1.73m2 未満:禁忌
  • フィネレノン
    eGFR 25mL/min/1.73m2未満:慎重投与
    (末期腎不全又は透析施行中の患者は適応外)

各MRAが腎機能により投与制限がある理由は、腎機能低下により高カリウム血症を引き起こす可能性があるからですね。高カリウム血症についてはコチラの記事をご覧ください。

また、MRAによる高カリウム血症には作用機序が関係しています。では続いて作用機序についてみていきましょう。

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)と作用機序・臓器保護

MRAは集合管のミネラルコルチコイド(MR)受容体を遮断して、Na+の体内への再吸収、K+の尿への排泄をブロックする薬剤です。つまり、MRAは集合管に作用し、カリウム排泄を抑制するため高カリウム血症となる可能性があります。

また、アルドステロンがMR受容体に作用すると、Na貯留、心肥大、線維化などの心臓に対して悪い影響を与えるため、MRAによりアルドステロンがMR受容体への作用を防ぐことで、心臓に対して悪い影響が出るのを防ぎます。心保護効果ですね。

心保護効果についてはコチラの記事に記載しています。

そして新薬のフィネレノンは糖尿病を合併する慢性腎不全に対して使用される薬剤で、尿細管および腎・心臓のMR受容体を遮断することで、慢性腎不全の進行を抑制します。いわゆる腎保護作用ですね。

MRAの作用機序について詳細はコチラの記事もご覧ください。(「カリウム保持性利尿薬」の項目です。)

スピロノラクトンによる女性化乳房

  • 女性化乳房
    スピロノラクトンエプレレノン

スピロノラクトンはミネラルコルチコイド受容体の選択性が低く、アルドステロン拮抗作用とエストロゲン様作用を有するために女性化乳房を起こすことがあります。それに対しエプレレノンはミネラルコルチコイド受容体に選択的に作用します。そのため、エプレレノンではスピロノラクトンに比べて女性化乳房は少ないです。

  • ミネラルコルチコイド受容体の選択制
    スピロノラクトンエプレレノン

エサキセレノン、フィネレノンは非ステロイド型のMRAであり、女性化乳房のようなステロイド受容体への作用による副作用は少ないです。(「ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)とステロイド骨格」参照)

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の使い分け

心不全

心不全に適応のあるスピロノラクトンとエプレレノンの使い分けについて考えていきます。まず選択肢として検討されるのはエビデンスもあり薬価の安いスピロノラクトンだと考えています。(2022年4月時点で後発品があるのはスピロノラクトンのみです。)

また腎機能の点からも、クレアチニンクリアランス30mL/min未満ではエプレレノンは禁忌ですが、スピロノラクトンでは禁忌には該当していません。腎機能でエプレレノンが使用できずスピロノラクトンに変更するといった例はよくあります。しかし、スピロノラクトン使用により、女性化乳房などステロイド様作用による副作用が発現する場合はエプレレノンに変更します。

高血圧

高血圧にたいしてもスピロノラクトンで良いのではないでしょうか。降圧作用の部分に記載したようにスピロノラクトン25mg≒エプレレノン50mg≒エサキセレノン2.5mgと考えられますし、スピロノラクトン50mgはSBP-20mmHgと血圧に応じて調整すれば良いと思います。もちろん、女性化乳房などステロイド様作用による副作用の発現があればエプレレノンやエサキセレノンに変更すれば良いと考えています。

2型糖尿病を合併する慢性腎臓病

2型糖尿病の慢性腎臓病の進行抑制にたいしてはフィネレノンのみの適応なので、該当する患者には選択されるのではないかと思います。

その他

適応が高血圧のみのエサキセレノンや慢性腎不全の進行抑制として承認されたフィネレノンが今後心不全にたいしても適応を取得するかどうかは気になるところです。

“ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の薬物動態情報まとめ&使い分け”まとめ

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の薬物動態情報
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の適応
  • ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の共通点
    ・肝代謝型の薬剤
    ・副作用:高カリウム血症
  • スピロノラクトンに特異的な副作用:女性化乳房
  • 降圧効果
    フィネレノン20mg<スピロノラクトン25mg≒エプレレノン50mg≒エサキセレノン2.5mg
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