ワーファリン服用患者は
緑黄色野菜をどれだけ食べて良いのでしょうか?
結論、食べたい人は好きなだけ食べれば良いです。
なぜかは読めばわかります。
動画でサクッと聞き流し(1.5倍速推奨)[9:12]
Contents
ワーファリンと緑黄色野菜、まずはじめに
ワーファリンを飲んでいる方にたいして「緑黄色野菜を食べ過ぎないように」とか「緑黄色野菜を避けるように」指導する方も多いのではないでしょうか。
ウソと思うかもしれませんが、入院時に話を聞いていて「ワーファリンは緑黄色野菜食べちゃいけないと思っていた」という方は過去に何人もいました。
これは薬剤師と患者さんでのある意味コミュニケーションエラーだと思います。
最初に受けた薬剤師の説明のまま、その後の説明でも「わかっている」という返答でそのままずっと来てしまったようですね。
とある病院の一薬剤師がたまに経験していたので、日本全国でもある程度いたのではないでしょうか。
とはいえ、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)も普及してきていますし、筆者自身が薬剤師になった時と比べると減ってきている感はありますが…
ワーファリンに触れる機会が減ると説明時にもれてしまう可能性もありますしね!
ということで、一緒にみていきましょう。
ワーファリンと食事の注意事項についてどのように指導をしていますか?
「納豆と青汁とクロレラは絶対ダメ!」
「緑黄色野菜も注意してね!」
ざっくり言うとこのような感じでしょうか。
納豆、青汁、クロレラについて「摂取禁」については問題ないでしょう。
緑黄色野菜についてはどうでしょうか。
注意してねって言われてもどのように注意すればよいのでしょうか?
ワーファリンは緑黄色野菜を食べていいの?食べちゃいけないの?
ワーファリンは緑黄色野菜を食べて問題ありません。
野菜好きな人であればたくさん食べてもらってかまわないと考えています。
ん?どういうこと?それじゃ注意になっていないような…と思いましたか?
では何を注意するのか。
それは緑黄色野菜を食べる量の変動です。
つまり、毎日“同じくらいの量”を食べるのであれば問題ありません。
日によって野菜を食べる量が
小鉢程度と少なかったり、
逆にボウル一杯の量と多かったり、
と日々の摂取量に大幅な偏りがなければ
気にする必要はありません。
説明時は結構おおげさに説明しますが、「そんなにたくさん食べない(笑)」という返答を受けるので、緑黄色野菜を食べて良いことは印象に残るようですね。
ワーファリンと緑黄色野菜の注意とは何が問題ですか?
ビタミンK摂取によりワーファリンの作用が減弱する、INRが低下することが問題ですよね。
緑黄色野菜を食べる量が日々変わってくると、薬の血中濃度も変動する恐れがあります。
そうするとINRのコントロールも難しいですよね。
でもたくさん食べるとINRも低下しちゃうんじゃないか…と思いませんか。
そうです。その通りです。
INRが低下したらワーファリンを飲む量が増えるということです。
それを許容できるかどうかは患者さんと話して相談していくことになるかなと思います。
やっぱり食は楽しみですし、制限され過ぎるのは辛いと思います。
野菜が好きな人はもう好きなだけ食べればいいじゃないかと思うわけです。
それになにより、栄養バランスが偏ってしまいますよね。
いつも通りの生活をして得られるINRを治療域に近付けていけばいいのです。
または患者本人が制限され過ぎてツライと感じないような無理のない範囲で制限してもらうことが大切です。
無理に食事制限する必要はありません。
緑黄色野菜だけでなく野菜ジュースも注意が必要?
過去に野菜ジュースの種類を毎日変えていてINRが変動しコントロール不良となった人もいました。
ラベルを見るとビタミンKの含有量も違うんですよね。
興味ある人は野菜ジュースを飲むついでに見てみてくださいね。
ワーファリンは激しい運動にも注意が必要?
過去にハードなトレーニングをする人にワーファリンを13~15mgくらいでコントロールしていた人がいました。
ワーファリンは運動でも効果が減弱するんですよね。
企業の方に聞いたときに「社内資料でそのようなデータがあります」と最初聞いたときはびっくりしましたね。
現在では直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)もありますから、絶対にワーファリンでなければいけない人っていうケースは少ないとは思いますが…
選択肢があるっていうことはとても大切だなと思います。
ワーファリンでなければいけない人とは?
- 弁膜症性心房細動
- 機械弁置換術後
- 高度腎機能低下
DOACに適応があるのは非弁膜症性心房細動です。弁膜症が原因で起こった心房細動には適応がありません。
また、機械弁置換術後の抗凝固薬はワーファリンが用いられます。
そして、高度腎機能低下患者はDOACが禁忌に該当しますのでワーファリンが選択されます。
非弁膜症性心房細動や静脈血栓塞栓症にはDOACの適応がありますので、多くのケースではワーファリンとDOACどちらも選択することができます。
最近はワーファリンから開始することは少ないように思います。
ワーファリンとDOACにはそれぞれメリット・デメリットがありますが、DOACが何らかの理由で使用できないときにワーファリンという選択肢があることが重要なのです。
ワーファリンとDOACのメリット・デメリットについてはコチラの記事をご覧ください。
実際にワーファリンの食事面の注意事項をどのように指導しているか?
ワーファリンは食事面で注意事項があります。
サラサラにする薬で納豆を食べてはいけないという話を聞いたことありますか?
それはこのワーファリンという薬の話です。
納豆の他に青汁、クロレラも摂取してはいけません。
摂取により薬の効果が弱くなります。
これはビタミンKを多く含むためです。
また、納豆は納豆に含まれる納豆菌が腸内でビタミンKを産生してしまうためです。
ワーファリンは1日1回飲んで頂きますが、夕食後に薬を飲むから朝は青汁を飲んでいいということはありません。
薬を飲み続けている間はずっと避けてください。
他にも注意するものがあります。
緑黄色野菜やワカメなどの海藻類です。
これらもビタミンKを多く含むため摂り方に注意が必要です。
日によって摂取する量を大幅に変えないということです。
例えば全く食べない日が続いた後に、緑黄色野菜を大きいお皿一杯食べるというような感じです。
あまりお皿山盛りで野菜を食べるということはしないかもしれませんが(笑)、摂取量に大きな違いがでると薬の効きに影響してきます。
それに栄養バランスを考えてと良く聞くかもしれませんが、緑黄色野菜を全く食べないとなったら栄養バランスも悪くなってしまいますよね。
なので摂り方に注意してください。
ワーファリンは血液検査の結果でどのくらい薬が効いているかが分かりますので、日常の生活に合わせて薬の量を調整することができます。
バランスの良い食事を心がけていただければ、そこまで神経質になる必要はありません。
食べてはいけないものは納豆、青汁、クロレラの3つだけ覚えていただければ大丈夫です。
たくさんしゃべってしまいましたが分からなかった部分など、何か質問はありますか?
ワーファリンが新しく始まった人や、聴取で認識が間違っているなと感じた場合はこんな感じで説明していました。
もちろん相手の反応等を見ながらですよ。
コチラの伝えることが大事なのではなくて、理解してもらって初めて指導ですからね。
病院では退院時に家族が迎えに来ることが多いですので、家族への説明も重要です。
料理をするのが本人とは限りませんから。
今後、ワーファリンが初めて開始になる場合など、食事面での指導をするときがあれば参考にしてみてくださいね。
昔、ワーファリンしかなかったころ、INR過延長で入院した人が入院中に納豆食べることができてとっても喜んでいたことありました。(好きなものを抑制されるのはストレスたまりますよね。)
ワーファリンと食事の注意事項まとめ
- 納豆、青汁、クロレラの摂取NG(納豆は納豆菌が腸内でビタミンKを産生するため)
- 緑黄色野菜や海藻類は好きなだけ食べてOK、ただし日々の摂取量が変動し過ぎないこと
日常生活で得られたINRをもとにワーファリンの投与量を調節します。
バランスの良い食事を心がけること、患者さんが無理なく続けられることが重要です!