【心不全】β1受容体遮断薬の薬物動態情報&使い分け
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日本で心不全に適応のあるβ1受容体遮断薬は2種類あります。

それは、カルベジロールとビソプロロールです。

この2種類にはどのような違いがあるのでしょうか?

では、一緒に確認していきましょう。

 

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【心不全】β1受容体遮断薬の薬物動態情報&使い分け

β1受容体遮断薬の薬物動態情報

特徴づけ

薬物動態情報より薬剤の特徴づけを行うと下記になります。

特徴づけの経緯は各薬剤の記事をご覧ください。

慢性心不全の用法用量

  • カルベジロール
  • 開始量:カルベジロール1回1.25mg 1日2回食後経口投与
  • 維持量:カルベジロール1回2.5~10mg 1日2回食後経口投与

忍容性をみながら段階的に増量し、忍容性がない場合は減量する。用量の増減は必ず段階的に行い、1回投与量は1.25mg、2.5mg、5mg又は10mgのいずれか。開始用量はさらに低用量としてもよい。

  • ビソプロロール
  • 開始量:ビソプロロール 1日1回0.625mg経口投与
  • 維持量:ビソプロロール 1日1回1.25~5mg経口投与
  • 最大量:ビソプロロール 1日1回5mg経口投与

1日1回0.625mg 2週間以上経口投与し,忍容性がある場合には,1日1回1.25 mg に増量。その後4週間以上の間隔で忍容性をみながら段階的に増量し,忍容性がない場合は減量する。用量の増減は 1 回投与量を0.625,1.25,2.5,3.75又は 5 mg として必ず段階的に行う。

忍容性とは?

さて『忍容性』とはなんでしょうか。何を確認すれば良いのでしょうか。

忍容性とは、“薬の副作用にどれだけ耐えることができるか”の程度のことです。

血圧低下、脈拍低下、体重増加・うっ血・呼吸苦など心不全症状の悪化を確認します。

忍容性については過去記事に詳しく記載していますので是非ご覧ください。

薬剤消失経路

カルベジロールは尿中へ未変化体がほとんど排泄されない、つまり肝代謝型の薬剤です。肝代謝型(主に肝臓で薬剤が消失する)薬剤とは、肝機能低下時は特に薬物血中濃度が上昇する可能性があるため投与に注意が必要な薬剤です。

ビソプロロールは尿中未変化体排泄率47.8%より、腎排泄と肝代謝により消失する薬剤です。腎と肝両方の影響を受けます。

腎機能障害時はビソプロロールは影響を受けて血中濃度が上昇する可能性があり、投与量の調整が必要となる場合があります。それに対し、カルベジロールでは影響を受けにくいため腎機能によって投与量を調整しなくて良いということです。

血漿中遊離形率

カルベジロールの血漿中遊離形率、つまりタンパク結合していない薬剤は5%です。ほとんどがタンパク結合している薬剤ということになります。タンパク結合依存型の薬剤になります。

それに対し、ビソプロロールの血漿中遊離形率は67%とタンパク結合非依存型の薬剤です。

タンパク結合依存型(タンパク結合率の影響を受けやすい)薬剤とは、アルブミンが低下した状態(感染などの炎症、腎機能低下時、低栄養状態)やタンパク結合の競合など、薬物相互作用により薬物血中濃度が上昇する可能性があるため注意が必要な薬剤です。

β遮断作用

  • カルベジロール
  • α:β=1:8
  • ビソプロロール
  • β1選択性

血圧変化率(%)1)

  • カルベジロール
  • 収縮期血圧:–5.6±21.3
  • 拡張期血圧:–5.1±26.1
  • ビソプロロール
  • 収縮期血圧:–5.5±16.2
  • 拡張期血圧:–5.8±21.2

カルベジロールとビソプロロールの血圧低下率は同程度でした。

心拍数変化率(%)1)

  • カルベジロール:–17.4±21.5
  • ビソプロロール:–27.9±19.8

カルベジロールよりビソプロロールのほうが心拍数を低下させました。

その他

ビソプロロールの経口剤と貼付剤の比較

ビソプロロールには経口剤のほかにも貼付剤があります。

  • 同等量換算

ビソプロロール経口剤5mg≒ビソプロロール貼付剤8mg

さて、経口剤と貼付剤の違いはどこにあるのでしょうか?

Cmax:最高血中濃度、Tmax:最高血中濃度到達時間、T1/2:半減期、AUC:血中濃度-時間曲線下面積

分かりやすいように血中濃度の違いをイメージ図にしてみました。

貼付剤は消化管による吸収過程を経ないため、経口剤とくらべて吸収のばらつきが出にくいと考えられます。また、最大血中濃度到達時間も遅く、半減期も長いため、作用もより安定していると考えられます。つまり、経口剤に比べて、貼付剤の方が血中濃度の変動が小さくなります。そのため、増量していくときに血圧や心拍数が低下するようであれば、経口剤から貼付剤へ変更しても良いのかなと思います。

他にも心不全の腸管浮腫があってβ1受容体遮断薬を開始する場合なんかは経口剤よりも貼付剤のほうが良いと思います。もちろん体内に水が溜まっている状態なので、β1受容体遮断薬開始により忍容性が保たれない可能性もあるため、注意が必要です。

COPD患者への影響

β2作用は気管支拡張性であるので、その遮断薬は気管支喘息を悪化させます。

そのため、理論的にはβ1選択性のビソプロロールは気管支にあるβ2を抑制しないためCOPD患者に推奨されます。

それに対し、非選択性のカルベジロールはβ1、β2、α1遮断作用があります。α1遮断作用が気管支を拡張するため、β2の作用を打ち消すとも言われます。

COPD患者に新規にβ遮断薬を開始する場合はビソプロロールが推奨されます。もしCOPDが発覚した段階でカルベジロールが処方されていたとしても、カルベジロールでコントロール良好であれば、あえてビソプロロールへ変更する必要はないと考えます。

β1受容体遮断薬の使い分け

  • 徐脈傾向の場合

新規で開始する場合はカルベジロールを選択します。すでに投与している場合、β1受容体遮断薬の減量を検討します。また、服用しているβ1受容体遮断薬がビソプロロールの場合はカルベジロールへの変更を検討します。

  • 頻脈傾向の場合

徐脈のとき逆で脈拍を下げたいので、新規で開始する場合はビソプロロールを選択します。

  • 高度腎機能障害の場合

カルベジロールは肝代謝のため、最大投与量は腎機能によらず同等です。それに対し、ビソプロロールは肝代謝・腎排泄の影響を受けるため、高度腎機能障害では用量調節が必要になります

  • COPDの場合

COPD患者に新規にβ遮断薬を開始する場合はビソプロロールが選択します。もしCOPDが発覚した段階でカルベジロールが処方されていたとしても、カルベジロールでコントロール良好であれば、あえてビソプロロールへ変更する必要はないと思います。

  • 注意点

ひとつの病態だけでなく複数に該当するケースも多いと思います。そのため〇〇だからカルベジロール、△△だからビソプロロールとなるのではなく、患者背景の把握、病態や忍容性の確認などが重要です。

どちらを選択するにしろβ1受容体遮断薬が必要な病態の方にしっかりと処方されていて、経過をしっかりフォローすることが重要です。

【心不全】β1受容体遮断薬の薬物動態情報&使い分けまとめ

 

  • 血圧変化率
  • カルベジロール≒ビソプロロール
  • 心拍数変化率
  • カルベジロール<ビソプロロール
  • ビソプロロール経口剤・貼付剤
  • ビソプロロール経口剤5mg≒ビソプロロール貼付剤8mg
  • 使い分け(新規で開始する場合)
  • 徐脈時:カルベジロール
  • 頻脈時:ビソプロロール
  • 高度腎機能障害時:カルベジロール
  • COPD時:ビソプロロール
  • ビソプロロール経口剤が吸収されにくい場合、より血中濃度を一定に安定化させたい場合はビソプロロール貼付剤を検討。

複合的な場合もありますし患者背景の把握、病態や忍容性の確認などが大切ですね。

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