ニコランジルは、太い冠動脈拡張作用(硝酸薬様作用)に加えて細い冠動脈拡張作用も持つ薬剤で、硝酸薬より冠動脈に選択的に作用する薬剤です。
また、冠動脈に選択的に作用するため、ニコランジルは硝酸薬と比較し血圧を下げにくいと言われています。
では、ニコランジルの薬物動態情報を見ていきましょう。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中の錠IFは『シグマート®錠IF, 2022年1月(第12版)』、注IFは『シグマート®注IF, 2022年1月(第10版)』のことです。
Contents
ニコランジル薬物動態情報
用法用量
○ニコランジル錠
- 1回5mg 1日3回適宜増減
○ニコランジル注
- 不安定狭心症2~6mg/hr
- 急性心不全0.05~0.2mg/hr
バイオアベイラビリティ
- 75.0±23.6%(錠IF:P.13より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- データなし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 48L(錠IF:P.13より)
- 19.6L(注IF:P.21より)
Vd(b)<Vd/(B/P)=48/0.5
Vd(b)<96
Vd(b)≧50、Vd(b)≦20、Vd(b)=20~50すべての可能性があり特徴づけできませんでした。
全身クリアランス
- 該当資料なし(錠IF:P.13より)
- 126L/hr(注IF:P.21より)
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 0.7~1.2%
投与量に対する24時間後の累積尿中排泄率は、ニコランジル0.7~1.2%、代謝物N-(2-ヒドロキシエチル)ニコチンアミド6.8~17.3%であった。(錠IF:P.15より)
投与量に対する24時間後の累積尿中排泄率は、ニコランジル0.2~0.4%、代謝物N-(2-ヒドロキシエチル)ニコチンアミド2~5%であった。(注IF:P.24より)
Ae≦30より肝代謝型の薬剤といえます。
全身クリアランス(CL):2100ml/min
腎クリアランス(CLR):2100×0.01=21
肝クリアランス(CLH):2100-21=2079
抽出比
- 腎抽出比
ER<CLR/(B/P)/QR=21/0.5/1200=0.035
ER<0.035
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。 - 肝抽出比
EH<CLH/(B/P)/QH=2079/0.5/1600=2.6
EH<2.6
EH<0.3、EH>0.7、EH=0.3~0.7すべての可能性があるため分類は出来ませんでした。
タンパク結合率
- 34.2~41.5%(錠IF:P.14、注IF:P.23より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.415=0.585
fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。
半減期
- 0.75時間(錠IF:P.21より)
その他
- 血圧降下度
硝酸薬>ニコランジル
ニコランジル薬物動態情報まとめ
- Ae=1.2%→肝代謝型(Ae≦30)
- ER<0.035→消失能依存型(ER<0.3)
- EH<2.6→分類不可
- Vd(b)<96→分類不可
- fuP=0.585→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
- バイオアベイラビリティ:75%
- 半減期:0.75時間