この記事では尿酸排泄促進薬の薬物動態的特徴と薬剤の使い分けについて記載しています。
尿酸排泄促進薬は主に高尿酸血症・痛風にたいして使用される薬剤です。
では、尿酸排泄促進薬各薬剤にはどのような違いがあるのでしょうか?
一緒に確認していきましょう。
Contents
【尿酸排泄促進薬】薬物動態情報まとめ&使い分け
作用機序
尿酸排泄促進薬とは、トランスポーター阻害作用により尿酸の再吸収を抑制し尿中尿酸排泄量を増加させ、血清尿酸値を低下させる薬剤です。
尿酸トランスポーター1(URAT1)阻害薬
- ユリノーム®(ベンズブロマロン)
- ユリス®(ドチヌラド)
ドチヌラドはURAT1に選択的に作用します。ドヌラチドはURAT1選択的阻害作用により、効率的に尿酸の排泄を促進し血中尿酸値を低下させ、さらに肝障害の原因と考えられるミトコンドリア毒性や CYP2C9 阻害による薬物相互作用の少ない薬剤を目指して開発された薬剤です。
ベンズブロマロンでは劇症肝炎のリスクがあり警告にその旨記載されておりますが、ドヌラチドには警告欄がありません。
有機酸トランスポーター阻害薬
- ベネシッド®(プロベネシド)
以前、抗生剤ペニシリンの排泄を抑制し、ペニシリンの血中濃度を上昇させる目的でプロベネシドを併用しているケースはありましたが、尿酸低下目的で使用されているケースはほとんどみたことないです。
その他
明確な作用機序は不明ですが、パラミジン®(ブコローム)という薬剤もあります。最近は使用されているのを見たことはありませんね。尿酸低下目的ではなく、ワルファリンと併用することで効きの悪い人に対してPt-INRを延長させて治療域にコントロールする目的で併用されるケースは見たことがあります。今は直接作用型抗凝固薬(DOAC)もありますから使われるケースはほとんどないと思います。
他にも、高尿酸血症の適応はありませんが、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)のニューロタン®(ロサルタン)はURAT1阻害作用が認められています。例えば高血圧で尿酸値が高い場合には選択肢となり得ます。
薬物動態情報
特徴づけ
薬物動態情報から分かることは、ベネシッド®(プロベネシド)は腎排泄型、ユリノーム®(ベンズブロマロン)とユリス®(ドヌラチド)は肝代謝型の薬剤ということです。
同等量換算
-
ドチヌラド2mg:45.9%
-
ベンズブロマロン50mg:43.8%
ドチヌラド2 mgはベンズブロマロン50 mgと比較して非劣性の血清尿酸値低下作用でした。1)
つまり同等量は
ベンズブロマロン50mg≒ドチヌラド2mg
となります。
尿酸排泄促進薬の使い分け
ベンズブロマロンは劇症肝炎のリスクがあり少なくとも開始後6カ月間は定期的な肝機能検査を行うよう警告されています。(ドヌラチドはURAT1選択的になったことで副作用リスクは低くなっています。)
ベンズブロマロンもすでに長期で内服しているケースは見ますが、新規で開始するケースはほとんどないと考えられるので、尿酸生成抑制薬を選択するか、尿酸排泄促進薬であればドチヌラドを選択するかって感じなのかなと思っています。
価格で考えるのであればドヌラチド(ユリス®)は2020年5月に発売された薬剤でまだ後発品がないため、金銭的負担が少ないのはベンズブロマロンになります。(下に記載した薬価は2023年4月1日薬価です。後発品は最安値で記載しています。)
- ベンズブロマロン
(先発)25mg:9.80、50mg:13.10
(後発)25mg:5.9、50mg:5.9 - ドチヌラド(先発)
・0.5mg:28.40
・1mg:51.90
・2mg:94.80
同等量で計算すると、ユリス®(ドチヌラド)2mgの94.80円はベンズブロマロン50mg(後発)5.9円の約16倍の薬価となります。
プロベネシドは(ブコロームも)ほとんど使用されているのを見たことがないため、今回の使い分けから除外しました。
また尿酸排泄促進薬を使用する場合は、とくに酸性尿では尿路結石しやすいため、尿路結石の発現に注意し、必要に応じ尿アルカリ化薬を併用する必要があります。
『【尿酸排泄促進薬】薬物動態情報まとめ&使い分け』まとめ
- 尿酸排泄促進薬とは、トランスポーター阻害作用により尿酸の再吸収を抑制し尿中尿酸排泄量を増加させ、血清尿酸値を低下させる薬剤である。
- 尿酸排泄促進薬を使用する場合は尿路結石の発現に注意し、必要に応じ尿アルカリ化薬を併用する。
薬品名 | 作用機序 | 消失経路 | 警告 | 禁忌 |
プロベネシド | 有機酸トランスポーター阻害 | 腎排泄型 | ― | 腎臓結石 慢性腎不全 |
ベンズブロマロン | 尿酸トランスポーター1 (URAT1)阻害 |
肝代謝型 | 劇症肝炎 | 肝障害、腎結石 高度腎機能障害 |
ドチヌラド | URAT1選択的阻害 | 肝代謝型 | ― | 肝障害・腎障害 による禁忌なし |
- ベンズブロマロン50mg≒ドチヌラド2mg