心不全に適応をもつβ1受容体遮断薬は本邦ではカルベジロールとビソプロロールの2種類です。
この記事ではそのうちのひとつであるメインテート®(ビソプロロール)の薬物動態情報についてみていきます。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『メインテート®IF, 2013年9月(第12版)』のことです。
Contents
メインテート®(ビソプロロール)薬物動態情報
用法用量
(1)本態性高血圧症(軽症~中等症),狭心症,心室性期外収縮
ビソプロロール 1日1回5mg経口投与 適宜増減
(2)虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
開始量:ビソプロロール 1日1回0.625mg経口投与
維持量:ビソプロロール 1日1回1.25~5mg経口投与
最大量:ビソプロロール 1日1回5mg経口投与
1日1回0.625mg 2週間以上経口投与し,忍容性がある場合には,1日1回1.25 mg に増量。その後4週間以上の間隔で忍容性をみながら段階的に増量し,忍容性がない場合は減量する。用量の増減は 1 回投与量を0.625,1.25,2.5,3.75又は 5 mg として必ず段階的に行う。
バイオアベイラビリティ
<参考>外国人のデータ
88%(IF:P.36より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
データなし
B/Pが得られていないためB/P=0.5を代用します。
分布容積(Vd)
- 2.5±0.1L/kg
(IF:P.37より)
体重60kgの場合、Vd=150L
Vd(b)≦Vd/(B/P)=150/0.5
Vd(b)≦300
Vd(b)≧50(細胞内分布型)、Vd(b)=20~50(分布中間型)、Vd(b)≦20(細胞外分布型)すべての可能性があるため特徴付けできませんでした。
全身クリアランス(CL)
- 12.8±0.5L/hr
(IF:P.37より)
ml/minに単位変換すると、CL=213.3ml/min
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 47.8%
<参考>外国人のデータ
ビソプロロールフマル酸塩20mgを単回経口投与したとき,投与 72 時間までに尿中への投与量の 90.0±6.0%が排泄された。未変化体は 47.8±10.5%で,残りは代謝産物(アルキル側鎖の開裂体及びその酸化体)であった。(IF:P.40より)
Ae=30~70%より腎・肝混合型(中間型)の薬剤といえます。
全身クリアランス(CL)=213.3ml/min
腎クリアランス(CLR)=213.3×0.478≒102ml/min
肝クリアランス(CLH)=CL-CLR=213.3-102=111.3ml/min
抽出比
- 腎抽出比
ER<CLR/(B/P)/QR=102/0.5/1200
ER<0.17
ER<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
- 肝抽出比
EH<CLH/(B/P)/QH=111.3/0.5/1600
EH<0.14
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 26~33%
<参考>外国人のデータ
26~33%(限外ろ過法)(ヒト血清,in vitro)
(IF:P.37より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.33=0.67
fuP>0.2よりタンパク結合非依存型の薬剤といえます。
半減期
- 8.59±0.32時間
(IF:P.33より)
その他
- β1選択性が高い
- 頻脈性心房細動に対する心拍数減少効果(IF:P.25より)
・2.5mg:-11.4拍/分
・5mg:-17.3拍/分 - CYP2D6 とCYP3A4 に代謝される
- 有効血中濃度:該当資料なし(高血圧:約10ng/mL)
- 透析除去率:該当資料なし
メインテート®(ビソプロロール)薬物動態情報まとめ
- Ae=47.8→腎・肝中間型(30<Ae<70)
- ER<0.17→消失能依存型(ER<0.3)
- EH<0.14→消失能依存型(EH<0.3)
- Vd(b)≦300→特徴づけ不可
- fuP=0.67→タンパク結合非依存型(fuP>0.2)
- バイオアベイラビリティ:88%
- 半減期:8.59時間
- β1選択性が高い
- CYP2D6 とCYP3A4 に代謝される