これから論文を読もうと思っているアナタへ。
論文を読むうえでどこになにが書いてあるのか?
これを理解していると、自分が求める情報がどこを確認すれば記載されているのか分かるようになります。
論文の型、つまり基本構成を知っておきましょう。
論文の内容を把握するスピードが速くなりますよ。
- Abstract/Summary(要旨)
- Background/Introduction(背景)
- Purpose/Aim(目的)
- Methods(方法)
- Results(結果)
- Discussion(考察)
- Conclusions(結論)
- References(参考文献)
これが論文の基本構成です。
そして、論文を確認する上で批判的吟味が重要です。
というより、批判的吟味を行うために論文の中身を確認していきます。
批判的吟味とは、簡単に言うと、「論文の結果を鵜呑みにせず、その内容を実臨床に適応できるか際に活用できるか、確認しよう」ということです。
では、論文の構成要素について1つ1つ確認していきましょう。
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薬剤師の“みや”です。
『薬の特徴や比較』、『循環器領域の薬物療法の考え方』、『論文の読み方のポイント』、『男性の育休取得時のポイント』などのテーマで記事を執筆しています。医療現場や日常生活で役立つ視点から、読者にわかりやすく、実用的な情報をお届けすることを心がけています。
Contents
Abstract/Summary(要旨)
- 著者らが抜粋した概要
- あくまで批判的吟味の動機づけ
- Abstractに基づく判断は危険
論文の要旨は著者らが抜粋した概要です。
その論文を読むか読まないかを判断するためのあくまで論文を読んで批判的吟味を行うための動機付けという立場であり、Abstractの記載に基づいて論文を評価することは論文の内容を誤って判断して捉えてしまう可能性があるため危険です。
Background/Introduction(背景)
- 今回の研究を実施するに至った直接的な背景
- 自ら論文を検索した場合、すでに知っている内容がほとんど
背景には今回の研究を実施するに至った直接的な背景が記載されています。
つまりある分野においてどこまで分かっていて、何が分かっていないのかが記載されています。
そのためあなたの専門分野など自分で論文を検索した場合、すでに知っている内容がほとんどとなります。
Purpose/Aim(目的)
- 本研究で明らかにしたいこと
- Introduction/Backgroundの最後に記載される場合が多い
- PICO(Patient, Intervention, Comparison, Outcome)が明確になっているのが望ましい
・「誰を対象者とするのか(Patients)」
・「どんな介入をするのか(Intervention)」
・「何と比較するのか(Comparison)」
・「何をアウトカムにするのか(Outcomes)」 - Conclusionと対応している(はず)
目的には本研究で明らかにしたいことが記載されています。
背景の何が分かっていないのかという前振りがあって、分かっていないことを研究するという目的が記載されます。
Introduction/Backgroundの最後に記載される場合が多いです。
「誰を対象者とするのか(Patients)」、「どんな介入をするのか(Intervention)」、「何と比較するのか(Comparison)」、「何をアウトカムにするのか(Outcomes)」の頭文字を取ったPICOが明確になっているのが望ましいです。
PICOについての詳細は以下の記事を参照してください。
目的はConclusion(結論)と対応しているはずです。というより、対応していなければおかしいですよね。
Methods(方法)
- 研究の質に関する情報が多く記載
- 批判的吟味において最も重要な部分
- 試験プロトコールを別論文または付録とするスタイルも多い
方法には研究デザイン、患者の選択・除外基準、アウトカムの定義、解析方法など研究の質に関する情報が多く記載されています。
方法は論文の批判的吟味において最も重要な部分です。
方法の評価について詳細は以下の記事を参照してください。
方法を細かく示すために試験プロトコールを別論文または付録(appendix)とするスタイルも増えてきています。
Results(結果)
- 設定した方法論に基づいて試験を実施した結果(事実)
・患者背景
・主要評価項目に関する結果
・副次評価項目に関する結果
・有害事象 - とくに重要な結果は図表で示される
- 事実ではあるが、慎重な解釈が必要
結果には患者背景、主要・副次評価項目に関する結果、有害事象などの結果が記載されています。
設定した方法論に基づいて試験を実施した結果(事実)です。
特に重要な結果は図表で示されます。
事実ではありますが、結果は慎重な解釈が必要です。
そのまま鵜呑みにしないようにしましょう。
結果の評価について詳細は以下の記事を参照してください。
Discussion(考察)
- 試験の結果に基づく著者らの考察
・自分とは視点が異なることも多々ある
・著者らの考えに流されない - 試験結果に基づかない議論は幻想
- 通常は試験の限界(limitation)についても言及される
- 批判的吟味においては著者らの考える限界は参考になることもある
考察には試験の結果に基づく著者らの考察が記載されています。
自分とは視点が異なることも多々ありますが、著者らの考えには流されないことが大事です。
試験結果に基づかない議論は幻想です。想像だけで考察されても根拠がありません。
通常は試験の限界(limitation)についても言及されます。
論文の結果に影響を与える可能性のある研究デザインなどが限界として記載されます。
限界とは研究の弱点で簡単に言うと著者の言い訳で、その内容に対する今後の課題となります。
批判的吟味においては著者らの考える限界は参考になることもあります。
Conclusions(結論)
- 試験の目的に対する結論
- 通常は端的に記載される
- 結論だけを読んで満足するのはNG
- 批判的吟味を行い「自分なりの結論」を持つことが重要
結論には試験の目的に対する結論が記載されています。
通常は端的に記載されます。
結論だけを読んで満足するのはNGです。その結論を導くに至った研究の方法、結果あってこその結論です。
批判的吟味を行うと試験の弱点(限界)が気になりますが、弱点を踏まえてもたどり着ける「自分なりの結論」を持つことが重要です。
References(参考文献)
- 本文中で外部情報を引用した場合には引用元の書誌情報をリストアップ
- 本文中で参照された順に番号が振られ、番号順にリストアップされるのが一般的
- 論文を読んでいて気になった外部情報はここから探し出す
参考文献とは論文の本文中で引用した外部情報です。
参考文献には著者、論文のタイトル、雑誌名、発表年など引用元の書誌情報をリストアップしたものが記載されています。
本文中で参照された順に番号が振られ、番号順にリストアップされるのが一般的です。
論文を読んでいて気になった外部情報は参考文献から引用元を探します。
まとめ
論文を把握するためにどこになにが記載されているか、論文の基本構成を理解しましょう。
- Abstract/Summary(要旨)
- Background/Introduction(背景)
- Purpose/Aim(目的)
- Methods(方法)
- Results(結果)
- Discussion(考察)
- Conclusions(結論)
- References(参考文献)