ブリリンタ®(チカグレロル)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
P2Y12受容体阻害薬であるチカグレロルは、血小板凝集を抑制する薬剤です。
直接的、可逆的な作用を示す点、プロドラッグではない点がチエノピリジン系抗血小板薬と異なる点です。
では確認していきましょう。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『ブリリンタ®IF, 2020年6月(第6版)』のことです。
Contents
ブリリンタ®(チカグレロル)薬物動態情報
用法用量
〈急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)〉
初回のみブリリンタ® 1回180mg
ブリリンタ® 1回90mg 1日2回経口投与
〈陳旧性心筋梗塞〉
ブリリンタ® 1回60mg 1日2回経口投与
バイオアベイラビリティ
- 36%
絶対バイオアベイラビリティは平均で36%(95%Cl 30~42)
(IF:P.61より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- B/P=2.34
ヒト血液に本薬の3H-標識体10、200及び4000ng/mL(最終濃度)を添加したとき、本薬の血球移行率は14.6、19.7及び14.6%であった。
(ブリリンタ®審査報告書, 2016年5月18日、審査報告(1)P.30より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度=1/(1-0.146)=1.17
B/P=全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度×(1-Ht)
Ht=0.5より
B/P=2.34
分布容積(Vd)
- 87.5L(単回静脈内投与)
(IF:P.61より)
Vd(b)=87.5/2.34=37.4
Vd(b)=20~50より分布中間型の薬剤といえます。
全身クリアランス
- 全身クリアランス14.2L/h(単回静脈内投与)
(IF:P.61より)
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 0.02%
(IF:P.63より)
Ae≦30より肝代謝型の薬剤といえます。
ほとんど尿中に未変化体が排出されないことから、
CL≒CLHと考えることができます。
抽出比
肝抽出比
EH=CLH/(B/P)/QH=14.2/2.34/1600=0.0038
EH<0.3より消失能依存型の薬剤といえます。
タンパク結合率
- 99.4%
(IF:P.61より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.994=0.006
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 8.7時間
(IF:P.57より)
その他
- 血小板のアデノシン二リン酸(ADP)受容体(P2Y12受容体)に対して、選択的、直接かつ可逆的な拮抗作用を有し、ADPによる血小板凝集を抑制
- CYP3A分子種の基質かつ弱い阻害剤でもある
- P-糖蛋白質の基質であり、阻害剤でもある
- 他のP2Y12受容体阻害薬と異なりプロドラッグではない
- チカグレロル50mgでも約80%、100mg以上では90%超の血小板凝集阻害作用を示す(IF:P.49より)
- 血小板凝集抑制率:82~95%(PMID: 32092903)
- 作用発現時間:ローディング後 2~4時間(PMID: 32092903)
- 作用消失時間:3~5日(PMID: 32092903)
ブリリンタ®(チカグレロル)薬物動態情報まとめ
- Ae=0.02→肝代謝型(Ae≦30)
- EH=0.0038→消失能依存型(EH<0.3)
- Vd(b)=37.4→分布中間型(20≦Vd(b)≦50)
- fuP=0.006→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- バイオアベイラビリティ:36%
- 半減期:8.7時間
- CYP3A4阻害作用を持つ薬剤との併用に注意
- P-糖蛋白阻害作用を持つ薬剤との併用に注意
- 直接的、可逆的な作用(他のP2Y12受容体阻害薬と異なる部分)
- プロドラッグではない(他のP2Y12受容体阻害薬と異なる部分)
- 血小板凝集抑制率:82~95%
- 作用発現時間:ローディング後 2~4時間
- 作用消失時間:3~5日