SGLT2阻害薬は尿に糖を出すことで血糖を下げる薬です。
SGLT2阻害薬は現在6薬剤発売されています。
今回はその中の1つであり、2型糖尿病以外にも慢性心不全(HFrEF、HFpEF)にも適応のあるジャディアンス®(エンパグリフロジン)の薬物動態情報を見ていきたいと思います。
各動態情報の項目について詳細は下記記事をご参照ください。
本記事中のIFは『ジャディアンス®IF, 2021年11月(第11版)』のことです。
Contents
ジャディアンス®(エンパグリフロジン)薬物動態情報
効能効果
- 2型糖尿病(ジャディアンス錠10mg・25mg)
- 慢性心不全(ジャディアンス錠10mg)
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る
用法用量
- 2 型糖尿病
エンパグリフロジン 1日1回10mg朝食前or朝食後 経口投与
効果不十分な場合1日1回25mgに増量可 - 慢性心不全
エンパグリフロジン 1日1回10mg朝食前or朝食後 経口投与
バイオアベイラビリティ
- 該当資料なし
〈参考〉エンパグリフロジンの絶対バイオアベイラビリティの検討は行っていないが,日本人健康成人男性(各6 例)に,エンパグリフロジン10mg 及び25mg を空腹時単回投与したときの投与後72 時間までの尿中未変化体排泄率はそれぞれ投与量の21.3%及び22.9%であり2),絶対バイオアベイラビリティはそれ以上であると推察される。(IF:P.71より)
全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度(B/P)
- 外国人健康成人男性(8 例)に14C-エンパグリフロジン50mg 溶液を経口投与したときの血球/血漿の放射能濃度の分布比は28.6~36.8%(IF:P.72より)
血球/血漿から全血/血漿に変換します。
計算しやすく血球/血漿を30%とすると、
血球/血漿=30/100
全血=血球+血症=30+100=130
B/P=全血液中薬物濃度/血漿中薬物濃度・(1-Ht)とHt=0.5より
B/P=130/100・(1-0.5)=0.65
分布容積(Vd)
- 76.5L(母集団PK 解析による見かけの定常状態の分布容積の推定値)
(IF:P.70より)
見かけの分布容積であり、特徴づけに用いることはできませんでした。
全身クリアランス
- 11.0L/h(母集団PK 解析による見かけの経口クリアランス代表値)
日本人健康成人男性(各6 例)にエンパグリフロジン10mg 及び25mg を単回経口投与したときの腎クリアランスはそれぞれ29.9mL/min 及び34.8mL/min であった(IF:P.70より)
見かけの経口クリアランスであり、特徴づけに用いることはできませんでした。
尿中未変化体排泄率(Ae)
- 21.3~22.9%
日本人健康成人男性(各6 例)にエンパグリフロジン10mg 及び25mg を単回経口投与したときの投与後72 時間までの尿中未変化体排泄率はそれぞれ投与量の21.3%及び22.9%であった。(IF:P.74より)
半減期11.7時間×5<72時間であり、上記記載の尿中未変化体排泄率は特徴づけに用いることが可能でした。
Ae≦30より肝代謝型の薬剤といえます。
抽出比
見かけの経口クリアランスであり抽出比の計算ができず、特徴づけを行うことはできませんでした。
タンパク結合率
- 血漿蛋白結合率:84.7%
(IF:P.73より)
タンパク結合率より結合していない(遊離形)割合が分かります。
血漿中遊離形率(fuP)=1-0.847=0.153
fuP<0.2よりタンパク結合依存型の薬剤といえます。
半減期
- 9.88~11.7時間(IF:P.66より)
その他
HFrEF:左室駆出率が低下した心不全
HFpEF:左室駆出率が保持された心不全
- 心不全に対する推奨療法を受けているHFrEF患者において、2型糖尿病の有無にかかわらず、エンパグリフロジン群はプラセボ群にくらべ,心血管死+心不全による入院のリスクを有意に抑制したという結果が得られました1)。
- 心不全に対する推奨療法を受けているHFpEF患者において、2型糖尿病の有無にかかわらず、エンパグリフロジン群はプラセボ群にくらべ,心血管死+心不全による入院のリスクを有意に抑制したという結果が得られました2)。
- 2022年3月慢性腎臓病にたいしてエンパグリフロジンを投与した試験の中間報告結果で有効性が得られ、試験の早期終了が発表されました3)。試験の詳細は2022年中に発表されるとのことなのでもう少し待ちましょう。
ジャディアンス®(エンパグリフロジン)薬物動態情報まとめ
- 適応:2型糖尿病、慢性心不全
- Ae:21.3~22.9%→肝代謝型(Ae≦30)
- ER、EH、Vd(b):特徴づけ不可
- fuP:0.153→タンパク結合依存型(fuP≦0.2)
- バイオアベイラビリティ:該当資料なし
- 半減期:9.88~11.7時間